現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について(2021年9月30日)

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  1. 以下、厚生労働省発表資料からの引用
  2. 現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について
  3. 1.基本的考え方
  4. 2.タスク・シフト/シェアを効果的に進めるために留意すべき事項
    1. 1) 意識改革・啓発
    2. 2) 知識・技能の習得
    3. 3) 余力の確保
  5. 3.現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例
    1. 1) 看護師
      1. ① 特定行為(38 行為 21 区分)の実施
      2. ② 事前に取り決めたプロトコール(※)に基づく薬剤の投与、採血・検査の実施
      3. ③ 救急外来における医師の事前の指示や事前に取り決めたプロトコールに基づく採血・検査の実施
      4. ④ 血管造影・画像下治療(IVR)の介助
      5. ⑤ 注射、採血、静脈路の確保等
      6. ⑥ カテーテルの留置、抜去等の各種処置行為
      7. ⑦ 診察前の情報収集
    2. 2) 助産師
      1. ① 院内助産
    3. ② 助産師外来
    4. 3) 薬剤師
      1. ① 周術期における薬学的管理等
      2. ② 病棟等における薬学的管理等
      3. ③ 事前に取り決めたプロトコールに沿って行う処方された薬剤の投与量の変更等
      4. ④ 薬物療法に関する説明等
      5. ⑤ 医師への処方提案等の処方支援
      6. ⑥ 糖尿病患者等における自己注射や自己血糖測定等の実技指導
    5. 4) 診療放射線技師
      1. ① 撮影部位の確認・検査オーダーの代行入力等
      2. ② 画像誘導放射線治療(IGRT)における画像の一次照合等
      3. ③ 放射線造影検査時の造影剤の投与、投与後の抜針・止血等
      4. ④ 血管造影・画像下治療(IVR)における補助行為
      5. ⑤ 病院又は診療所以外の場所での医師が診察した患者に対するエックス線の照射
      6. ⑥ 放射線検査等に関する説明、同意書の受領
      7. ⑦ 放射線管理区域内での患者誘導
      8. ⑧ 医療放射線安全管理責任者
    6. 5) 臨床検査技師
      1. ① 心臓・血管カテーテル検査、治療における直接侵襲を伴わない検査装置の操作
      2. ② 負荷心電図検査等における生体情報モニターの血圧や酸素飽和度などの確認
      3. ③ 持続陽圧呼吸療法導入の際の陽圧の適正域の測定
      4. ④ 生理学的検査を実施する際の口腔内からの喀痰等の吸引
      5. ⑤ 検査にかかる薬剤を準備して、患者に服用してもらう行為
      6. ⑥ 病棟・外来における採血業務
      7. ⑦ 血液製剤の洗浄・分割、血液細胞(幹細胞等)・胚細胞に関する操作
      8. ⑧ 輸血に関する定型的な事項や補足的な説明と同意書の受領
      9. ⑨ 救急救命処置の場における補助行為の実施
      10. ⑩ 細胞診や超音波検査等の検査所見の記載
      11. ⑪ 生検材料標本、特殊染色標本、免疫染色標本等の所見の報告書の作成
      12. ⑫ 病理診断における手術検体等の切り出し
      13. ⑬ 画像解析システムの操作等
      14. ⑭ 病理解剖
    7. 6) 臨床工学技士
      1. ① 心臓・血管カテーテル検査・治療時に使用する生命維持管理装置の操作
      2. ② 人工呼吸器の設定変更
    8. ③ 人工呼吸器装着中の患者に対する動脈留置カテーテルからの採血
      1. ④ 人工呼吸器装着中の患者に対する喀痰等の吸引
      2. ⑤ 人工心肺を施行中の患者の血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更
      3. ⑥ 血液浄化装置を操作して行う血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更
      4. ⑦ 血液浄化装置のバスキュラーアクセスへの接続を安全かつ適切に実施する上で必要となる超音波診断装置によるバスキュラーアクセスの血管径や流量等の確認
      5. ⑧ 全身麻酔装置の操作
      6. ⑨ 麻酔中にモニターに表示されるバイタルサインの確認、麻酔記録の記入
      7. ⑩ 全身麻酔装置の使用前準備、気管挿管や術中麻酔に使用する薬剤の準備
      8. ⑪ 手術室や病棟等における医療機器の管理
      9. ⑫ 各種手術等において術者に器材や医療材料を手渡す行為
      10. ⑬ 生命維持管理装置を装着中の患者の移送
    9. 7) 理学療法士
      1. リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付
    10. 8) 作業療法士
      1. ① リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付
      2. ② 作業療法を実施するに当たっての運動、感覚、高次脳機能(認知機能を含む)、ADL 等の評価等
    11. 9) 言語聴覚士
      1. ① リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付
      2. ② 侵襲性を伴わない嚥下検査
      3. ③ 嚥下訓練・摂食機能療法における患者の嚥下状態等に応じた食物形態等の選択
      4. ④ 高次脳機能障害、失語症、言語発達障害、発達障害等の評価に必要な臨床心理・神経心理学検査種目の実施等
    12. 10) 視能訓練士
      1. ① 白内障及び屈折矯正手術に使用する手術装置への検査データ等の入力
      2. ② 視機能検査に関する検査結果の報告書の記載
    13. 11) 義肢装具士
      1. ① 義肢装具の採型・身体へ適合のために行う糖尿病患者等の足趾の爪切等
      2. ② 装具を用いた足部潰瘍の免荷
      3. ③ 切断者への断端管理に関する指導
    14. 12) 救急救命士
      1. ① 病院救急車による患者搬送の際の患者観察
      2. ② 救急外来等での診療経過の記録
      3. ③ 救急外来での救急患者受け入れ要請の電話対応
    15. 13) その他職種にかかわらずタスク・シフト/シェアを進めることが可能な業務

以下、厚生労働省発表資料からの引用

医政発 0930 第 16 号
令 和 3 年 9 月 30 日

各都道府県知事 殿

厚生労働省医政局 長
(公印省略 )

現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について

 

医師の業務については、医療技術の高度化への対応や、患者へのきめ細やかな対応に対するニーズの高まり等を背景として、書類作成等の事務的な業務も含め、増加の一途を辿っていると指摘されている。こうした状況の中で、医師の時間外労働の上限規制が適用される令和6年4月に向けて、医師の労働時間の短縮を進めるためには、多くの医療関係職種それぞれが自らの能力を生かし、より能動的に対応できるようにする観点から、まずは、現行制度の下で実施可能な範囲において、医師の業務のうち、医師以外の医療関係職種が実施可能な業務について、医療機関において医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアを早急に進める必要がある。このため、「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」における議論を踏まえ、現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例やタスク・シフト/シェアを推進するに当たっての留意点等について、下記のとおり整理したので、貴職におかれては、その内容について御了知の上、各医療機関において、その実情に応じたタスク・シフト/シェアの取組が進むよう、貴管内の市町村(特別区を含む。)、医療機関、関係団体等に周知方願いたい。
なお、診療報酬等の算定については、従前どおり関係法令をご確認いただきたい。

1.基本的考え方

医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアを進めるに当たっては、医療安全の確保及び各医療関係職種の資格法における職種毎の専門性を前提として、各個人の能力や各医療機関の体制、医師との信頼関係等も踏まえつつ、多くの医療関係職種それぞれが自らの能力を生かし、より能動的に対応できるよう、必要な取組を進めることが重要である。

その上で、まずは、現行制度の下で実施可能な範囲において、医師以外の医療関係職種が実施可能な業務についてのタスク・シフト/シェアを最大限に推進することが求められる。このため、厚生労働省において令和元年6月から7月にかけて実施したヒアリングの中で各種職能団体及び各種学会から提案のあった項目を基に、現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例について、3.のとおり整理した。各医療機関においては、3.において記載した業務の具体例も参考にしつつ、各医療機関の実情に応じて、タスク・シフト/シェアの取組を進められたい。
また、タスク・シフト/シェアを効果的に進めるために留意すべき事項について、「意識」「知識・技能」「余力」の3つの観点から、2.のとおり整理したので、2.において記載した留意点も踏まえつつ、タスク・シフト/シェアの取組を進められたい。
なお、今後、厚生労働省において、医療機関におけるタスク・シフト/シェアの推進の好事例について、2.において記載した留意点も踏まえた推進のプロセスや、費用対効果も含めて、収集・分析を行い、周知を行うことを予定している。

2.タスク・シフト/シェアを効果的に進めるために留意すべき事項

1) 意識改革・啓発

タスク・シフト/シェアを効果的に進めるためには、個々のモチベーションや危機感等が重要であり、医療機関全体でタスク・シフト/シェアの取組の機運が向上するよう、病院長等の管理者の意識改革・啓発に加え、医療従事者全体の意識改革・啓発に取り組むことが求められる。具体的には、病院長等の管理者向けのマネジメント研修や医師全体に対する説明会の開催、各部門責任者に対する研修、全職員の意識改革に関する研修等に取り組む必要がある。特に、一部の職種のみ又は管理者のみの意識改革では、タスク・シフト/シェアが容易に進まないことに留意する必要がある。

2) 知識・技能の習得

タスク・シフト/シェアを進める上で、医療安全を確保しつつ、タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の不安を解消するためには、タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の知識・技能を担保することが重要である。具体的には、各医療関係職種が新たに担当する業務に必要な知識・技能を習得するための教育・研修の実施等に取り組む必要がある。教育・研修の実施に当たっては、座学のみではなくシミュレーター等による実技の研修も行うほか、指導方法や研修のあり方の統一・マニュアルの作成を行うことなどにより、医療安全を十分に確保できるよう取り組む必要がある。

3) 余力の確保

タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の余力の確保も重要である。具体的には、ICT機器の導入等による業務全体の縮減を行うほか、医師からのタスク・シフト/シェアだけでなく、看護師その他の医療関係職種から別の職種へのタスク・シフト/シェア(現行の担当職種の見直し)にもあわせて取り組むことなど、一連の業務の効率化を図るとともに、タスク・シフト/シェアを受ける側についても必要な人員を確保することなどにより、特定の職種に負担が集中することのないよう取り組む必要がある。

3.現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例

1) 看護師

① 特定行為(38 行為 21 区分)の実施

特定行為研修を修了した看護師は、保健師助産師看護師法(昭和 23 年法律第 203号)第 37 条の2に基づき、手順書により、特定行為を行うことができる。
具体的には、例えば、特定行為研修を修了した看護師は、人工呼吸管理や持続点滴中の降圧剤や利尿剤等の薬剤の投与量の調整、中心静脈カテーテルの抜去や末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入等の特定行為について、その都度医師の指示を求めることなく、医師が予め作成した手順書(医師による包括的指示の形態の一つ)により行うことが可能である。

② 事前に取り決めたプロトコール(※)に基づく薬剤の投与、採血・検査の実施

看護師は、診療の補助として医行為を行う場合、医師の指示の下に行う必要があるが、実施するに当たって高度かつ専門的な知識及び技能までは要しない薬剤の投与、採血・検査については、特定行為研修を修了した看護師に限らず、医師が包括的指示(看護師が患者の状態に応じて柔軟に対応できるよう、医師が、患者の病態の変化を予測し、その範囲内で看護師が実施すべき行為について一括して出す指示)を用いることで看護師はその指示の範囲内で患者の状態に応じて柔軟な対応を行うことも可能である。
具体的には、①対応可能な病態の変化の範囲、②実施する薬剤の投与、採血・検査の内容及びその判断の基準、③対応可能な範囲を逸脱した場合の医師への連絡等について、医師と看護師との間で事前にプロトコールを取り決めておき、医師が、診察を行った患者について、病態の変化を予測し、当該プロトコールを適用する(患者の状態に応じてプロトコールの一部を変更して適用する場合を含む。)ことを指示することにより、看護師は、患者の状態を適切に把握した上で、患者の状態を踏まえた薬剤の投与や投与量の調整、採血や検査の実施について、必ずしも実施前に再度医師の確認を求めることなく、当該プロトコールに基づいて行うことが可能である。
(※)「プロトコール」とは、事前に予測可能な範囲で対応の手順をまとめたもの。
(診療の補助においては、医師の指示となるものをいう。)以下同じ。

③ 救急外来における医師の事前の指示や事前に取り決めたプロトコールに基づく採血・検査の実施

救急外来においては、看護師が医師の事前の指示の下で採血・検査を実施し、医師が診察する際には、検査結果等の重要な情報を揃えておくことにより、医師が救急外来の患者に対しより迅速に対応することが可能になると考えられる。この場合の医学的検査のための採血は、医師法(昭和 23 年法律第 203 号)第 20 条に規定する「治療」には当たらず、医師による診察前であっても、医師の採血・検査の実施について事前の指示に基づき、看護師が採血・検査を実施することは可能である。
具体的には、救急外来において、①対応可能な患者の範囲、②対応可能な病態の変化の範囲、③実施する採血・検査の内容及びその判断の基準、④対応可能な範囲を逸脱した場合の医師への連絡等について、医師が看護師に事前に指示を出しておく、又は医師と看護師との間で事前にプロトコールを取り決めておくことにより、救急外来の患者について、医師が診察を行う前であっても、看護師が、医師の事前の指示やプロトコールに基づいて採血・検査を行うことが可能である。

④ 血管造影・画像下治療(IVR)の介助

血管造影・画像下治療において、看護師は、医師の指示の下、診療の補助として、造影剤の投与や、治療終了後の圧迫止血等の行為を行うことが可能である。ただし、エックス線撮影等の放射線を照射する行為については、医師又は医師の指示の下に診療放射線技師が行う必要がある。

⑤ 注射、採血、静脈路の確保等

静脈注射・皮下注射・筋肉注射(ワクチン接種のためのものを含む。)、静脈採血(静脈路からの採血を含む)、動脈路からの採血、静脈路確保、静脈ライン・動脈ラインの抜去及び止血については、診療の補助として、医師の指示の下に看護師が行うことが可能である。(小児・新生児に対して行う場合も含む。)

⑥ カテーテルの留置、抜去等の各種処置行為

尿道カテーテル留置、末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの抜去、皮下埋め込み式CVポートの穿刺、胃管・EDチューブの挿入及び抜去、手術部位(創部)の消毒、鶏眼処置、創傷処置、ドレッシング抜去、抜糸、軟膏処置、光線療法の開始・中止については、診療の補助として、医師の指示の下に看護師が行うことが可能である。(小児・新生児に対して行う場合も含む。)

⑦ 診察前の情報収集

病歴聴取、バイタルサイン測定、服薬状況の確認、リスク因子のチェック(必要に応じてチェックシート等を活用)、検査結果の確認等の診察前の情報収集については、必ずしも医師が行う必要はなく、知識及び技能を有する看護師が、医師との適切な連携の下で、医師による診察前に、こうした情報収集を行い、診察を行う医師にその結果を報告することは、医師の診察に係る負担軽減にも資すると考えられる。(看護師が報告した結果に基づく病状等の診断については、医師が行う必要がある。)
また、患者が休日や夜間に診療を求めて救急に来院した場合、事前に医師との連携の下で診療の優先順位の決定(トリアージ)に係る具体的な対応方針を整備しておくことにより、看護師が、当該対応方針に基づき、病歴聴取、バイタルサイン測定等の結果を踏まえて、診療の優先順位の判断を行うことも可能である。

2) 助産師

① 院内助産

院内助産とは、緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥1か月頃まで、助産ケアを提供する体制をいう。「院内助産・助産師外来ガイドライン 2018」(※)を参考に、院内助産の開設・運営に取り組むことにより、助産師の専門性の積極的な活用を図ることは、産科医師の業務負担軽減にも資すると考えられる。

② 助産師外来

助産師外来とは、緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が産科医師と役割分担をし、妊産婦とその家族の意向を尊重しながら、健康診査や保健指導を行う体制をいう。「院内助産・助産師外来ガイドライン 2018」(※)を参考に、助産師外来の開設・運営に取り組むことにより、助産師の専門性の積極的な活用を図ることは、産科医師の業務負担軽減にも資すると考えられる。
(※)平成 29 年度厚生労働省看護職員確保対策特別事業「院内助産・助産師外来ガイドライン 2018」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187231.html)

3) 薬剤師

① 周術期における薬学的管理等

周術期における薬剤管理等の薬剤に関連する業務として、以下に掲げる業務については、薬剤師を積極的に活用することが考えられる。

ア 手術前における、患者の服用中の薬剤、アレルギー歴及び副作用歴等の確認、術前中止薬の患者への説明、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づく術中使用薬剤の処方オーダーの代行入力(※)、医師による処方後の払出し

イ 手術中における、麻酔薬等の投与量のダブルチェック、鎮痛薬等の調製

ウ 手術後における、患者の状態を踏まえた鎮痛薬等の投与量・投与期間の提案、術前中止薬の再開の確認等の周術期の薬学的管理
(※)「代行入力」とは、医師が確認・署名等を行うことを前提に、医師以外の者が電子カルテに処方や検査の指示等を入力することを指す。薬剤師においては、必要に応じて、疑義照会や処方提案を行う。以下同じ。

② 病棟等における薬学的管理等

病棟等における薬剤管理等の薬剤に関連する業務として、以下に掲げる業務については、薬剤師を積極的に活用することが考えられる。

ア 病棟配置薬や調剤後の薬剤の管理状況の確認

イ 高カロリー輸液等の調製、患者に投与する薬剤が適切に準備されているかの確認、配合禁忌の確認や推奨される投与速度の提案

③ 事前に取り決めたプロトコールに沿って行う処方された薬剤の投与量の変更等

薬剤師が、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づき、薬物治療モニタリング(TDM)や検査のオーダーを医師等と協働して実施し、医師の指示により実施された検査の結果等を確認することで、治療効果等の確認を行い、必要に応じて、医師に対する薬剤の提案、医師による処方の範囲内での薬剤の投与量・投与期間(投与間隔)の変更を行うことは可能である。投与量・投与期間(投与間隔)の変更を行った場合は、医師、看護師等と十分な情報共有を行う必要がある。
また、薬剤師が、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づき、薬物療法を受けている患者に対する薬学的管理(相互作用や重複投薬、配合変化、配合禁忌等に関する確認、薬剤の効果・副作用等に関する状態把握、服薬指導等)を行い、その結果を踏まえ、必要に応じて、服薬方法の変更(粉砕、一包化、一包化対象からの除外等)や薬剤の規格等の変更(内服薬の剤形変更、内服薬の規格変更及び外用薬の規格変更等)を行うことは可能である。こうした変更を行った場合、医師、看護師等と十分な情報共有を行う必要がある。
なお、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医師と協働して実施する必要がある。
このほか、薬剤師が、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づき、入院患者の持参薬について、院内採用の同種同効薬への変更処方オーダーの代行入力を行い、医師による処方後、払出すことは可能である。

④ 薬物療法に関する説明等

医師による治療方針等の説明後の薬物療法に係る治療スケジュール、有効性及び副作用等の患者への説明や、副作用軽減のための対応方法と記録の実施等についての患者への説明については、薬剤師を積極的に活用することが考えられる。
また、患者の苦痛や不安を軽減するため、薬物療法に関して、必要に応じて患者の相談に応じ必要な薬学的知見に基づく指導を行うなどの対応についても、薬剤師を積極的に活用することが考えられる。

⑤ 医師への処方提案等の処方支援

入院患者について、薬剤師が、医師に対して処方提案等の処方支援を行うに当たっては、必要に応じて、以下のような取組を行うことが可能であり、また、効果的な処方支援に資すると考えられる。
患者の入院時に持参薬を確認するとともに、複数の内服薬が処方されている患者であって、薬物有害事象の存在や服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等のおそれのある患者に対しては、処方の内容を総合的に評価する。
アレルギー歴及び副作用歴等を確認するとともに、医師と綿密に連携し、診療録等による服薬内容、バイタルサイン(血圧、脈拍、体温等)及び腎機能、肝機能に関する検査結果の確認、回診・カンファレンスの参加等により患者の状態を把握した上で処方提案等の処方支援を実施する。
さらに、外来診療の場面においても、医師の診察の前に、残薬を含めた服薬状況や副作用の発現状況等について、薬学的な観点から確認を行い、必要に応じて医師へ情報提供を行うことで、医師の負担軽減に繋がることが期待される。

⑥ 糖尿病患者等における自己注射や自己血糖測定等の実技指導

薬剤師が、服薬指導の一環として、糖尿病患者等の自己注射や自己血糖測定等について、練習用注射器等を用いて、注射手技等の実技指導を行い、患者が正しい手順で注射できているか否かなどの確認等を行うことは可能である。ただし、薬剤師が患者に対して注射等の直接侵襲を伴う行為を行うことはできない。

4) 診療放射線技師

① 撮影部位の確認・検査オーダーの代行入力等

放射線検査について、診療放射線技師が、医師の事前の具体的指示に基づき、撮影部位を確認して検査オーダーを代行入力すること及び追加撮影が必要となった場合に追加撮影のための検査オーダーを代行入力することは可能である。
また、診療放射線技師が実施した検査画像に異常所見が認められた場合に、診療放射線技師が、その客観的な情報について医師に報告することは可能である。ただし、当該所見に基づく病状等の判断は医師が行う必要がある。

② 画像誘導放射線治療(IGRT)における画像の一次照合等

画像誘導放射線治療において、診療放射線技師が、医師の具体的指示の下、画像の一次照合を行い、照合画像から照射位置精度を確認した上で、放射線の照射を行うことは可能である。ただし、照射位置の許容(値)範囲を超えた場合は、診療放射線技師は速やかに医師に報告し、照射の継続又は中断についての判断は医師が行う必要がある。診療放射線技師は、照合結果を記録し管理する必要がある。

③ 放射線造影検査時の造影剤の投与、投与後の抜針・止血等

放射線造影検査において、診療放射線技師は、医師の具体的指示の下、診療の補助として、造影剤注入装置の静脈路への接続、造影剤の投与のための造影剤注入装置の操作、投与終了後の抜針及び止血を行うことが可能である。

④ 血管造影・画像下治療(IVR)における補助行為

血管造影・画像下治療において、術者である医師がカテーテルやガイドワイヤー等の位置を正確に調整できるよう、診療放射線技師が、当該医師の具体的指示の下、血管造影装置やCT等の画像診断装置の操作を行い、当該医師に必要な画像を提示することは可能である。
このほか、血管造影・画像下治療における医師の補助としては、カテーテルやガイドワイヤー等を使用できる状態に準備する行為や、医師に手渡しする行為、カテーテル及びガイドワイヤー等を保持する行為、医師が体内から抜去したカテーテル及びガイドワイヤー等を清潔トレイ内に安全に格納する行為等の医行為に該当しない補助行為についても、清潔区域への立入り方法等について医師・看護師の十分な指導を受けた後は、診療放射線技師が行うことが可能である。
また、術前の血管造影の定型的手技や放射線被曝についての患者への説明、医療機関の定めるチェックリストに沿って行う採血結果、服薬状況、リスクファクター等の確認と医師への報告についても、放射線の検査等に関する専門的な知識を有する診療放射線技師を活用することが考えられる。

⑤ 病院又は診療所以外の場所での医師が診察した患者に対するエックス線の照射

医師が診察した患者について、診療放射線技師が、その医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張してエックス線(百万電子ボルト未満のエネルギー)の照射を行うことは可能である。

⑥ 放射線検査等に関する説明、同意書の受領

放射線検査等(一般撮影検査、CT検査、MRI検査、核医学検査、超音波検査)の実施に当たっては、放射線検査等の目的や必要性、具体的な手法、放射線被曝、造影剤の副作用、安全性について、患者に適切に説明した上で、必要に応じて同意書を受領する必要があるが、こうした説明や同意書の受領については、必ずしも医師が行う必要はなく、放射線検査等に関する専門的な知識や技能を有する診療放射線技師を積極的に活用することが考えられる。

⑦ 放射線管理区域内での患者誘導

放射線管理区域内への患者の誘導や、放射性医薬品投与後の安静待機室への誘導など、放射線管理区域内での患者の誘導については、適切に放射線を管理し、安全が確保されるよう留意しながら行う必要があるが、必ずしも医師が行う必要はなく、放射線管理に関する専門的な知識や技能を有する診療放射線技師を積極的に活用することが考えられる。

⑧ 医療放射線安全管理責任者

医療放射線安全管理責任者は、診療用放射線の安全管理に関する十分な知識を有する常勤職員であって、原則として医師及び歯科医師のいずれかの資格を有している者である必要があるが、病院等における常勤の医師又は歯科医師が放射線診療における正当化を、また、常勤の診療放射線技師と協力し放射線診療における最適化を担保し、当該医師又は歯科医師が当該診療放射線技師に対して適切な指示を行う体制を確保している場合に限り、当該病院等については診療放射線技師を責任者とすることも可能である。

5) 臨床検査技師

① 心臓・血管カテーテル検査、治療における直接侵襲を伴わない検査装置の操作

心臓・血管カテーテル検査・治療において、臨床検査技師が、医師の指示の下、超音波検査(血管内超音波検査を含む。)や心電図検査、心腔内・血管内の血圧等の観察・測定等における直接侵襲を伴わない検査装置の操作を行うことは可能である。

② 負荷心電図検査等における生体情報モニターの血圧や酸素飽和度などの確認

負荷心電図検査等の実施に当たって、臨床検査技師が、医師の指示の下、検査実施前に、患者に装着されている生体情報モニターの血圧や酸素飽和度などのバイタルサインを確認し、医師等と事前に取り決められた範囲の値になっているかを確認し、範囲内の場合に検査を実施することは可能である。検査実施中に異常等が認められた場合には、速やかに医師に報告する必要がある。

③ 持続陽圧呼吸療法導入の際の陽圧の適正域の測定

睡眠時無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸療法導入の際に、臨床検査技師が、医師の指示の下、陽圧の適正域を測定し、調整する行為(脳波、心電図、呼吸の気流を検知するフローセンサー、いびき音を拾うマイクロフォン、胸壁・腹壁の拡張を検知する圧センサーの装着・脱着を含む。)を行うことは可能である。

④ 生理学的検査を実施する際の口腔内からの喀痰等の吸引

生理学的検査を安全かつ適切に実施する上で必要となる喀痰等の吸引については、臨床検査技師等に関する法律(昭和 33 年法律第 76 号)第 2 条の「生理学的検査」に含まれるものと解され、医師の指示の下に臨床検査技師が行うことは可能である。
臨床検査技師が、生理学的検査を実施する上で必要な喀痰等の吸引を行うに当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた臨床検査技師が実施することとするとともに、医師の指示の下、他職種との適切な連携を図るなど、臨床検査技師が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

⑤ 検査にかかる薬剤を準備して、患者に服用してもらう行為

検査の実施に当たって、医師が処方・指示した調剤済みの薬剤を患者に渡し、服用してもらう行為は、医行為に該当せず、臨床検査技師が当該行為を行うことは可能である。具体的には、糖負荷試験にかかるブドウ糖液や脳波検査にかかる睡眠導入剤、尿素呼気試験にかかる尿素錠を患者に渡し服用してもらう行為や、気道可逆性検査(呼吸機能検査)にかかる気管支拡張剤を患者に吸入してもらう行為を臨床検査技師が行うことが考えられる。ただし、異常な所見等が見られた場合には医師が適切に対応できる体制の下で行う必要がある。

⑥ 病棟・外来における採血業務

「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(平成 19 年 12 月 28 日付け医政発 1228001 厚生労働省医政局長通知)においても示しているが、臨床検査技師は、病棟・外来において、医師の具体的指示の下に、診療の補助として採血(血液培養を含む検体採取)を行うことが可能であり、外来のみならず、病棟における採血の業務についても、臨床検査技師を積極的に活用することが考えられる。

⑦ 血液製剤の洗浄・分割、血液細胞(幹細胞等)・胚細胞に関する操作

アレルギー反応を呈する患者や小児・新生児において有効に血液製剤を使用するための血液製剤の洗浄・分割、血液細胞(幹細胞等)・胚細胞に関する操作については、適切な衛生管理及び精度管理を確保する観点から、必要な知識・技術を有する者が行うことが求められるが、必ずしも医師が行う必要はなく、血液製剤や細胞治療の管理等に関する専門的な知識・技術を有する臨床検査技師を積極的に活用することが考えられる。

⑧ 輸血に関する定型的な事項や補足的な説明と同意書の受領

輸血の実施に当たっては、輸血の必要性や輸血を行わない場合の危険性、輸血後の副作用等のリスク等について、患者に適切に説明した上で、同意書を受領する必要があるが、こうした輸血に関する説明と同意書の受領については、必ずしも医師がすべて行う必要はなく、輸血関連業務等に関する専門的な知識を有する臨床検査技師を積極的に活用することが考えられる。具体的には、臨床検査技師が、医師の説明等の前後において、医療機関が定めた輸血に関する定型的な説明事項(輸血療法や輸血関連検査の意義、輸血後の副作用等のリスク等)や補足的な事項についての説明を行い、医師と患者、家族等が十分な意思疎通をとれるよう調整するとともに、輸血の同意書を受領することが考えられる。

⑨ 救急救命処置の場における補助行為の実施

救急救命処置の場において、臨床検査技師は、臨床検査技師等に関する法律により診療の補助として実施することができるとされている生理学的検査や採血等に加え、患者の移送や血圧測定等の医行為に含まれない補助行為についても実施することが可能である。

⑩ 細胞診や超音波検査等の検査所見の記載

臨床検査技師が、細胞診や超音波検査等の検査所見を報告書に記載し、医師に報告することは可能である。ただし、当該所見に基づく病状等の判断は医師が行う必要がある。

⑪ 生検材料標本、特殊染色標本、免疫染色標本等の所見の報告書の作成

病理組織検査において、臨床検査技師が、病理医の指示の下、生検材料標本の組織所見、特殊染色標本の染色態度の評価、免疫染色標本等の染色態度の評価又は陽性細胞の計数・定量判定等についての報告書を作成することは可能である。臨床検査技師により作成された報告書については、病理医の確認と承認を受けた上で、臨床医へ報告される必要がある。

⑫ 病理診断における手術検体等の切り出し

病理診断における手術検体等の切り出し(検体の写真撮影、組織片切り出し、カセット詰など)については、適切な衛生管理及び精度管理を確保する観点から、必要な知識・技術を有する者が行うことが求められるが、必ずしも医師が行う必要はなく、病理医との適切な連携の下で、検体採取や検体の管理等に関する専門的な知識・技術を有する臨床検査技師を積極的に活用することが考えられる。

⑬ 画像解析システムの操作等

病理組織標本のうち、生検検体の標本や病理医が指定した手術検体の標本をスキャナーで取り込む作業、当該画像データの保管・管理、適切に画像を記録するために必要な装置の調整と管理については、検体の管理等に関する専門的な知識・技術を有する臨床検査技師を積極的に活用することが考えられる。

⑭ 病理解剖

病理解剖に関して必要な知識及び技能を有する臨床検査技師が、死体解剖保存法(昭和 24 年法律第 204 号)に基づき、解剖をしようとする地の保健所長の許可を受けて、病理解剖を行うことは可能である。また、臨床検査技師が同法に基づく厚生労働大臣より死体解剖資格の認定を受けている場合は、保健所長の許可を受けることなく、病理解剖を行うことが可能である。なお、臨床検査技師が病理解剖を行う場合において、臨床検査技師が標本の所見を客観的に記述することは可能であるが、当該所見に基づく死亡の原因についての判断については、医師が行う必要がある。

6) 臨床工学技士

① 心臓・血管カテーテル検査・治療時に使用する生命維持管理装置の操作

心臓・血管カテーテル検査・治療において、臨床工学技士が、医師の具体的な指示の下、診療の補助として、生命維持管理装置を操作し、運転条件と監視条件の設定及び変更を行うことは可能である。

② 人工呼吸器の設定変更

臨床工学技士が、医師の具体的な指示の下、診療の補助として、人工呼吸器を操作し、運転条件と監視条件の設定及び変更を行うことは可能である。

③ 人工呼吸器装着中の患者に対する動脈留置カテーテルからの採血

人工呼吸器を操作して呼吸療法を行う場合、血液中のガス濃度のモニターを行うため、動脈の留置カテーテルからの採血(以下「カテーテル採血」という。)を行う必要がある。「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成 22 年4月 30 日付け医政発 0430 第1号厚生労働省医政局長通知)においても示しているが、人工呼吸器の操作を安全かつ適切に実施する上で必要となるカテーテル採血については、臨床工学技士法(昭和 62 年法律第 60 号)第2条第2項の「生命維持管理装置の操作」に含まれるものと解され、医師の具体的指示の下に臨床工学技士が行うことが可能である。
臨床工学技士によるカテーテル採血の実施に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた臨床工学技士が実施することとするとともに、医師の具体的指示の下、他職種との適切な連携を図るなど、臨床工学技士が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

④ 人工呼吸器装着中の患者に対する喀痰等の吸引

人工呼吸器を装着した患者については、気道の粘膜分泌量が多くなるなど、適正な換気状態を維持するために喀痰等の吸引が必要となる場合がある。「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成 22 年4月 30 日付け医政発 0430 第1号厚生労働省医政局長通知)においても示しているが、人工呼吸器の操作を安全かつ適切に実施する上で必要となる喀痰等の吸引については、臨床工学技士法(昭和 62 年法律第 60 号)第2条第2項の「生命維持管理装置の操作」に含まれるものと解され、医師の指示の下に臨床工学技士が行うことが可能である。
臨床工学技士による喀痰等の吸引の実施に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた臨床工学技士が実施することとするとともに、医師の指示の下、他職種との適切な連携を図るなど、臨床工学技士が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

⑤ 人工心肺を施行中の患者の血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更

人工心肺を施行中の患者に対し、臨床工学技士が、医師の具体的な指示の下、診療の補助として、人工心肺装置を操作し、血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更を行うことは可能である。

⑥ 血液浄化装置を操作して行う血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更

血液浄化装置を施行中の患者に対し、臨床工学技士が、医師の具体的な指示の下、診療の補助として、血液浄化装置を操作し、血液、補液及び薬剤の投与量の設定及び変更を行うことは可能である。

⑦ 血液浄化装置のバスキュラーアクセスへの接続を安全かつ適切に実施する上で必要となる超音波診断装置によるバスキュラーアクセスの血管径や流量等の確認

血液浄化装置の先端部のバスキュラーアクセス(令和3年 10 月1日前においては、シャントに限る。以下同じ。)への接続を安全かつ適切に実施するためには、血液浄化装置の先端部のバスキュラーアクセスへの接続を行う際に、バスキュラーアクセスの血管径や流量等について、超音波診断装置を用いた確認が必要となる場合がある。血液浄化装置のバスキュラーアクセスへの接続を安全かつ適切に実施する上で必要となる超音波診断装置を用いたバスキュラーアクセスの血管径や流量等の確認については、臨床工学技士法第2条第2項の「生命維持管理装置の先端部の身体への接続」に含まれるものと解され、医師の具体的指示の下に臨床工学技士が行うことが可能である。
臨床工学技士による超音波診断装置を用いたバスキュラーアクセスの血管径や流量等の確認に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた臨床工学技士が実施することとするとともに、医師の具体的指示の下、他職種との適切な連携を図るなど、臨床工学技士が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

⑧ 全身麻酔装置の操作

全身麻酔装置については、臨床工学技士法第2条第1項の「生命維持管理装置」に該当すると解され、臨床工学技士が、医師の具体的な指示の下、診療の補助として、全身麻酔装置を操作し、人工呼吸に係る運転条件と監視条件の設定及び変更を行うことは可能である。

⑨ 麻酔中にモニターに表示されるバイタルサインの確認、麻酔記録の記入

麻酔記録は麻酔を担当する医師が作成する書類であり、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認し署名(又は電子署名)することを条件に、臨床工学技士がモニター等に表示されるバイタルサインを確認し、麻酔記録に記入(代行入力)することは可能である。ただし、異常な所見等が見られた場合には医師が適切に対応できる体制の下で行う必要がある。

⑩ 全身麻酔装置の使用前準備、気管挿管や術中麻酔に使用する薬剤の準備

全身麻酔装置の準備(使用前点検を含む)、気管挿管等の準備、術中麻酔等に使用予定の薬剤のピッキング、溶解・希釈及びシリンジへの充填等については、全身麻酔装置を含む生命維持管理装置の操作や保守点検を担っている臨床工学技士を積極的に活用することが考えられる。

⑪ 手術室や病棟等における医療機器の管理

臨床工学技士が、臨床工学技士法第2条第2項において、生命維持管理装置の保守点検を行うことを業とするとされているが、手術室や病棟等で使用する医療機器について、輸液ポンプやシリンジポンプ、心電図モニター等の生命維持管理装置に該当しない医療機器であっても、臨床工学技士が保守点検、トラブルシューティング及び管理(中央管理方式では貸出・返却、使用歴の確認、不足時の補充等)を行うことは可能である。

⑫ 各種手術等において術者に器材や医療材料を手渡す行為

各種手術(例:整形外科、心臓血管外科)、各種検査・処置(例:心・血管カテーテル検査・治療、内視鏡検査・治療、中心静脈カテーテル留置、胃管挿入)において、必要な器材や医療材料を準備し、術者である医師等に手渡す行為については、清潔区域への立入り方法等について医師・看護師の十分な指導を受けた臨床工学技士を積極的に活用することが考えられる。

⑬ 生命維持管理装置を装着中の患者の移送

生命維持管理装置を装着中の患者の院内での移送については、生命維持管理装置のアクセスルート(例:人工呼吸の気管チューブや ECMO 装置の脱血・送血カニューラ)の抜去等がないよう特に配慮する必要があり、生命維持管理装置の操作や保守点検を担っている臨床工学技士を積極的に活用することが考えられる。

7) 理学療法士

リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付

リハビリテーションに関する各種書類については、作成責任は医師が負うこととされているものについても、医師が最終的に確認又は署名(電子署名を含む。)することを条件に、理学療法士が書類を記載することや、当該書類について患者等への説明や交付を行うことは可能である。

8) 作業療法士

① リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付

リハビリテーションに関する各種書類については、作成責任は医師が負うこととされているものについても、医師が最終的に確認又は署名(電子署名を含む。)することを条件に、作業療法士が書類を記載することや、当該書類について患者等への説明や交付を行うことは可能である。

② 作業療法を実施するに当たっての運動、感覚、高次脳機能(認知機能を含む)、ADL 等の評価等

作業療法士が、作業療法(ADL・IADL 訓練、職業関連活動の訓練、福祉用具の使用等に関する訓練、退院後の住環境への適応訓練、発達障害や高次能障害等に対するリハビリテーション、等)を実施するに当たって、医師との適切な連携の下で、生活状況(ADL、IADL、本人の趣味・興味・関心領域等)や生活上の課題を聴き取り等で把握するとともに、運動、感覚、高次脳機能、ADL、IADL 等に関する評価を病院または診療所および医療機関以外の患者の生活の場で行うことも可能である。作業療法士は、その結果を医師に報告する必要があり、その報告の結果に基づく患者の状態の診断については、医師が行う必要がある。

9) 言語聴覚士

① リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付

リハビリテーションに関する各種書類については、作成責任は医師が負うこととされているものについても、医師が最終的に確認又は署名(電子署名を含む。)することを条件に、言語聴覚士が書類を記載することや、当該書類について患者等への説明や交付を行うことは可能である。

② 侵襲性を伴わない嚥下検査

侵襲性を伴わない嚥下検査については、言語聴覚士も実施可能であり、医師との適切な連携の下で、言語聴覚士が、医療機関内であらかじめ定めたプロトコールに基づき、患者の症状に合わせた適切な嚥下検査を選択・実施し、その結果について、客観的な所見を医師に報告することは可能である。検査結果や当該所見に基づく診断については、医師が行う必要がある。

③ 嚥下訓練・摂食機能療法における患者の嚥下状態等に応じた食物形態等の選択

嚥下訓練・摂食機能療法においては、患者の摂食嚥下機能の改善・悪化に伴い、適時に食物形態を変える必要があるが、医師や関係職種との適切な連携の下で、言語聴覚士が、医療機関内であらかじめ定めたプロトコールに基づき、摂食嚥下機能の改善・悪化等の患者の状態にあわせて、訓練場面における食物形態を適宜選択することは可能である。言語聴覚士は、食物形態を変更した場合は、その結果について医師に報告する必要がある。

④ 高次脳機能障害、失語症、言語発達障害、発達障害等の評価に必要な臨床心理・神経心理学検査種目の実施等

高次脳機能障害(認知症含む)、失語症、言語発達障害、発達障害等の評価に必要な臨床心理・神経心理学検査の種目の選択・実施について、医師との適切な連携の下で、言語聴覚士が、患者の症状を踏まえて、適切な検査を主体的に選択・実施し、その結果について、客観的な所見を医師に報告することは可能である。検査結果や当該所見に基づく診断については、医師が行う必要がある。

10) 視能訓練士

① 白内障及び屈折矯正手術に使用する手術装置への検査データ等の入力

手術室における白内障及び屈折矯正手術に使用する手術装置の設定・準備や、患者情報および術前の視機能検査で得たデータの手術装置の入力については、必ずしも医師が行う必要はなく、眼科検査等に関する専門的知識を有する視能訓練士を積極的に活用することが考えられる。ただし、手術前に医師が入力データの最終確認を行う必要がある。

② 視機能検査に関する検査結果の報告書の記載

検査結果の報告書については、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認または署名(電子署名を含む。)することを条件に、視能訓練士が書類を作成することは可能である。

11) 義肢装具士

① 義肢装具の採型・身体へ適合のために行う糖尿病患者等の足趾の爪切等

義肢装具の採型及び身体への適合を安全かつ適切に実施する上で必要となる足趾の爪切り、胼胝等の研磨及び切断術後のドレッシング等の断端形成については、義肢装具士法第 37 条第1項の「義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合」に含まれるものと解され、医師の指示の下に義肢装具士が行うことは可能である。
義肢装具士による爪切り、胼胝等の研磨及びドレッシング等の断端形成の実施に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた義肢装具士が実施することとするとともに、医師の指示の下、他職種との適切な連携を図るなど義肢装具士が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

※ 手術直後の患部又はギブスで固定されている患部への実施に当たっては医師の具体的な指示の下に行うことが必要である。

② 装具を用いた足部潰瘍の免荷

足部潰瘍のある患者に対する免荷目的の装具の採型・適合については、義肢装具士法第 37 条第1項の「義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合」に含まれるものと解され、医師の指示の下に義肢装具士が行うことは可能である。
義肢装具士による足部潰瘍のある患者に対する免荷目的の装具の採型・適合の実施に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を受けた義肢装具士が実施することとするとともに、医師の指示の下、他職種との適切な連携を図るなど義肢装具士が当該行為を安全に実施できるよう留意しなければならない。

③ 切断者への断端管理に関する指導

義肢装具士が、断端管理に関して、患者に対して拘縮予防、断端の浮腫抑制方法等について指導を行うことは可能である。

12) 救急救命士

① 病院救急車による患者搬送の際の患者観察

搬送患者が重度傷病者である場合に、病院救急車による患者搬送の際に同乗し、当該患者の血圧、脈拍、酸素飽和度、体温を適時測定し、状態の変化を観察する業務については、救急自動車等による重度傷病者の搬送に関して必要な知識や技能を有する救急救命士を積極的に活用することが考えられる。

② 救急外来等での診療経過の記録

救急外来等での診療録について、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認し署名(電子署名を含む。)することを条件に、救急救命士が記載を代行することは可能である。

③ 救急外来での救急患者受け入れ要請の電話対応

消防機関からの救急患者受け入れ要請に対して、患者の状態等の情報について電話で聴取等を行う業務については、救急自動車等による重度傷病者の搬送に関して必要な知識や技能を有する救急救命士を積極的に活用することが考えられる。

13) その他職種にかかわらずタスク・シフト/シェアを進めることが可能な業務

以下に掲げる業務については、必ずしも医師が行う必要はなく、看護師その他の医療関係職種のほか、医師事務作業補助者(「医師の指示で事務作業の補助を行う事務に従事する者」をいう。)等の事務職員が行うことも可能である。業務を行う上で求められる専門性の程度や医療機関内の体制等に応じて、適切に役割分担を行う必要がある。なお、医師事務作業補助者等の事務職員が行う場合、院内の研修等により、必要な知識を備えることが望ましい。

① 診療録等の代行入力(電子カルテへの医療記録の代行入力、臨床写真など画像の取り込み、カンファレンス記録や回診記録の記載、手術記録の記載、各種サマリーの修正、各種検査オーダーの代行入力)

② 各種書類の記載(医師が最終的に確認または署名(電子署名を含む。)することを条件に、損保会社等に提出する診断書、介護保険主治医意見書等の書類、紹介状の返書、診療報酬等の算定に係る書類等を記載する業務)

③ 医師が診察をする前に、医療機関の定めた定型の問診票等を用いて、診察する医師以外の者が患者の病歴や症状などを聴取する業務

④ 日常的に行われる検査に関する定型的な説明、同意書の受領(日常的に行われる検査について、医療機関の定めた定型的な説明を行う、又は説明の動画を閲覧してもらった上で、患者又はその家族から検査への同意書を受領)

⑤ 入院時のオリエンテーション(医師等から入院に関する医学的な説明を受けた後の患者又はその家族等に対し、療養上の規則等の入院時の案内を行い、入院誓約書等の同意書を受領)

⑥ 院内での患者移送・誘導

⑦ 症例実績や各種臨床データの整理、研究申請書の準備、カンファレンスの準備、医師の当直表の作成等の業務

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