平成30年(2018年)の法改正に伴う薬歴記載の5つの注意・変更点

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平成30年(2018年)の法改正に伴って、薬歴記載についても新たに注意しなければならない変更点があります。

結論から言うと、2018年からは新たに薬歴に以下の5つについても記載することが求められるようになりました。

・生活像
・加療中の疾患
・お薬手帳『活用』の有無
・今後の継続的な計画
・抗菌薬適正使用の普及活動

以下、それぞれについて根拠となる条文とともに確認してゆきます。



1:生活像

※調点数表に関する事項-区分 10( 薬剤服用歴管理指導料)-(3) からの引用
ウ 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向

この『生活像』が今回から薬歴記載事項に追加されました。
これは調剤前の『先確認事項』でもあります。

 

どんな『生活像』を記載すればよいか?

薬学的管理に必要な患者の生活像なので、具体的には

・職業は長距離トラックドライバー。眠気の副作用がある薬剤に注意。
・独居である。しかし近居の娘さんからの訪問がほぼ毎日ある。
・要支援1。週1回ヘルパーさんに掃除に入ってもらっている。
・1日2回の食生活である。カップ麺などが多い。自分で料理は全く行わない。

 

どこに『生活像』を記載すればよいか?

通常、薬歴簿の表紙(電子薬歴なら表紙にあたる部分)の特記事項の欄に記載します。

 

2:加療中の疾患

※調剤報酬点数表に関する事項-区分 10( 薬剤服用歴管理指導料)-(3) からの引用
エ 疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。)

疾患に関する情報の部分に『加療中の疾患』が追記されました。
その疾患が治療中か治癒しているか、また他院・他科受診の情報や、いつから治療を開始したかの情報を記載すると良いでしょう。

 

どんな『加療中の疾患』を記載すればよいか?

・1型糖尿病 2010年~○○医院へ通院中
・躁うつ病(治癒)(2015年頃まで)

 

どこに『加療中の疾患』を記載すればよいか?

通常、薬歴簿の表紙(電子薬歴なら表紙にあたる部分)の病歴の欄に記載します。

 

3:お薬手帳「活用」の有無

※調剤報酬点数表に関する事項-区分 10( 薬剤服用歴管理指導料)-(3) からの引用
ケ  手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無

これまでのように手帳有無の確認だけではなく、手帳の『活用』の有無を確認することになりました。
手帳不要の患者さんに対して ⇒ 『手帳不要』と記載するだけでは不十分で
手帳不要の患者さんには ⇒ 手帳を活用することにより安全性・利便性が向上することを説明。それでも不要という患者さんにはその理由を確認して記録を残す。
手帳忘れの患者様には手帳にシールを貼付するよう説明するだけではなく、次回手帳持参時に貼付されているかの確認をすることも必要です。

 

どのように『手帳活用の有無』を記載すればよいか?
・手帳あり。他院,他薬局調剤の記録もされており活用できている。
・手帳不要。手帳を活用することによる安全性・利便性向上を説明したが「とにかく不要」と拒否。

 

4:今後の継続的な計画

※調剤報酬点数表に関する事項-区分 10( 薬剤服用歴管理指導料)-(3) からの引用
コ  今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点

「継続性のある指導」は個別指導でもよく指摘されるという話をよく聞きます。
実際、当薬局も新規開設薬局の個別指導の際に「継続性のある指導」について指導を受けたのをよく覚えています。

はい。服薬指導計画に沿った連続性のある薬歴というのが重視されています。
より具達的な内容を記載することが、継続的で患者さんにとって役に立つ服薬指導に繋がりますので、「副作用確認」だけで終わってはいけません。
そして、書くことは手段であり目的ではないので、次回以降、薬歴に書いてある計画や注意点を生かした連続性のある服薬指導を行うことが大切です。

 

どんな『継続性のある薬歴』を記載すればよいか?

・次回、降圧薬の変更の効果が出ているか確認。血圧数値を聞き取る。
・次回、頓服薬の使用状況を確認。効果不良で使用数が増えているのなら処方変更を医師に提案。
・次回、血糖値を確認して薬の効果が出ている旨を説明。服薬継続意欲を持たせる。
・次回、軟膏2種類の使い分け状況を確認。使い分けができていないようなら再度説明する。

 

どこに『次回以降の計画や注意点』を記載すればよいか?

通常、処方箋ごとの指導内容等を記載する部分です。

 

5:抗菌薬適正使用の普及活動

※調剤報酬点数表に関する事項-区分 10( 薬剤服用歴管理指導料)-(10) からの引用
 服薬指導に当たっては、「抗微生物薬適正使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考とすること。また、服薬指導を円滑に実施するため、抗菌薬の適正使用が重要であることの普及啓発に資する取組を行っていることが望ましい。
(※抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版

抗菌薬の適正使用が重要であることの普及啓発に努めること
「抗微生物薬適正使用の手引き」を参考とすること
となりました。

 

具体例は「抗微生物薬適正使用の手引き」に載っています。

「抗微生物薬適正使用の手引き」より引用します。

【薬剤師から患者への説明例:抗菌薬が出ていない場合の対応例】
あなたの「風邪」には、医師による診察の結果、今のところ抗生物質(抗菌薬)は必要ないようです。むしろ、抗生物質の服用により、下痢等の副作用を生じることがあり、現時点では抗生物質の服用はお勧めできません。代わりに、症状を和らげるようなお薬が医師より処方されているのでお渡しします。
ただし、色々な病気の最初の症状が「風邪」のように見えることがあります。3 日以上たっても症状が良くなってこない、あるいはだんだん悪くなってくるような場合や、食事や水分がとれなくなった場合は、もう一度医療機関を受診するようにしてください。

【薬剤師から患者への説明例:急性下痢症の場合】
医師による診察の結果、今のところ、胃腸炎による下痢の可能性が高いとのことです。これらの急性の下痢に対しては、抗生物質(抗菌薬)はほとんど効果がありません。むしろ、抗生物質の服用により、下痢を長引かせる可能性もあり、現時点では抗生物質の服用はお勧めできません。
脱水にならないように水分をしっかりとることが一番大事です。少量、こまめな水分摂取を心がけてください。単なる水やお茶よりも糖分と塩分が入っているもののほうがよいです。
便に血が混じったり、お腹がとても痛くなったり、高熱が出たり、水分も取れない状況が続く際は再度医師を受診して下さい。

このような指導を行い、
・「風邪」に対しては抗生物質は必要ない旨を説明。症状が改善しないようなら再受診するよう指導。
・胃腸炎に対しては抗生物質は必要ない旨を説明。水分摂取をこまめに行うよう指導。
等の薬歴に書き残します。


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最後に

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