2018年6月11日 アジレクト錠(【般】ラサギリンメシル酸塩)が発売されました。
2019年6月1日には長期処方が可能となります。
~ 同種同効薬はエフピー ~
このアジレクト錠の同種同効薬は同じMAO-B阻害剤のエフピーOD錠(【般】セレギリン)です。エフピーOD錠といえば、覚せい剤原料としての規制を受けるので管理や廃棄に手間がかかっていたのですが、このアジレクト錠は覚せい剤原料としての規制は受けません。
(セレギリン(エフピーOD錠)と同じMAO-B阻害剤でありながら、アンフェタミン骨格を有さない為に覚せい剤原料の規制を受けない。)
~ 覚せい剤原料の規制を受けない ~
これ、薬局薬剤師としてはめちゃくちゃありがたいです。
覚せい剤原料の規制を受けると、1錠でも紛失した際は「覚せい剤原料事故届」の提出など管理が大変です。期限が切れた際も薬局が勝手に廃棄は出来ないので、覚せい剤監視員さんに立ち会ってもらって廃棄など、これまた大変です。
(当薬局だと廃棄の際は大阪府庁まで行って、府庁の職員さんに立ち会ってもらって廃棄。など大変でした。)
~ 効果の面でも期待されている ~
日本神経学会作成の『パーキンソン病治療ガイドライン2018』にも、
・ラサギリン(アジレクト錠)は早期の症状改善から、進行期のwearing off改善まで有効と考えられる。
・セレギリン(エフピー錠)との比較ではoff時間の短縮効果についてはラサギリン(アジレクト錠)のほうに高いエビデンスがある。
とあり、その効果を期待されている薬剤です。
日本では、2018年3月23日に承認,2018年6月11日に販売となりました。
日本の他に、世界50ヵ国以上で既に承認されています。
作用機序
大雑把に言うとセレギリン(エフピーOD錠)と同じです。
MAO-B(モノアミン酸化酵素B)と非可逆的に結合し、脳内のドパミンの分解を抑制することで、シナプス間隙のドパミン濃度を上昇させ、パーキンソン病の症状を改善させます。
患者さんにはこう伝えたい
効能・効果について
・この薬は、脳内でドパミンという神経伝達物質が分解されることを抑えることで脳内のドパミンを増やし、パーキンソン病症状を改善します。
・この薬は、体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり、量を自分で調整したりすると病気が悪化することがあります。医師の指示どおりに飲み続けることが重要です。
注意点(相互作用)について
・チーズ、ビール、赤ワイン等、※チラミンを多く含む飲食物を飲んだり食べたりすることで血圧が上昇することがあります。チーズ、ビール、赤ワイン等は控えてください。
・飲み合わせに注意すべき薬が多い薬剤です。この薬を飲んでいることは、医師または薬剤師に必ず伝えてください。
・ セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)を含有する食品は、脳内セロトニン濃度が上昇させてしまい、この薬に影響することがあるので、控えてください。
※チラミンとは
動物や植物の生体内の酵素により産生されるモノアミンです。
チラミンはその構造が『モノアミン神経伝達物質(ドパミン,アドレナリン,アセチルコリン等)』に似ており、高血圧を誘発するとされている。
ドパミンと同じくモノアミン酸化酵素で代謝を受けるので、MAO-B阻害薬によってチラミンの血中濃度も上昇してしまう。
副作用について
・起立性低血圧または低血圧があらわれることがあります。めまい、立ちくらみ、ふらつきなどの症状があらわれたら相談してください。
・この薬を飲むと、傾眠(眠気でぼんやりする)、突発的睡眠または睡眠発作(前兆のない急な眠り込み)があらわれることがあります。この薬を使用中は自動車の運転や機械の操作、高いところでの作業など危険を伴う作業はしないでください。
・社会的に不利な結果を招くにもかかわらずギャンブルや過剰で無計画な買い物を繰り返したり、性欲や食欲が病的に亢進するなど、衝動が抑えられない症状があらわれることがあります。患者さんや家族の方は、医師からこれらについて理解ができるまで説明を受けてください。また、これらの症状があらわれた場合には医師に相談してください。
・レボドパ含有製剤との併用で、ジスキネジア(意志に反して舌を動かしたり、出し入れしたり、絶えず噛むような口の動き、意志に反して体が動く)などのレボドパの副作用が強まることがあります。レボドパとこの薬を併用したことによる副作用がおこった場合は医師に相談してください。
添付文書より一部抜粋
【効能・効果】
パーキンソン病
【用法・用量】
通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与する。
エフピーは5㎎/日になると1日2回になりますが、アジレクト錠(【般】ラサギリン)は1日1回です。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1.軽度の肝機能障害(Child-Pugh分類A)のある患者では、本剤の血中濃度が上昇する可能性があるため、低用量での投与も考慮すること。2.低体重の患者では、本剤の血中濃度が上昇する可能性があり、副作用の発現が多く認められているため、患者の状態を観察し、低用量での投与も考慮すること。
3.高齢者では、副作用の発現が多く認められているため、患者の状態を観察し、低用量での投与も考慮すること。
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最後に
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