褥瘡治療薬(塗り薬)使い分け・特徴一覧

薬・治療・病態 各論
自分の知識の整理のために、書きまとめています。
より正しい情報・新しい情報を知りたい方は『日本褥瘡学会』等のページを参照されることをおすすめします。 ※当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。

除圧とバランスのとれた栄養補給は大事

褥瘡治療薬(塗り薬)の話の前に 私は薬剤師ですが、褥瘡治療の主役は薬ですか? と聞かれると『違います』と答えます。
褥瘡治療では『除圧(患部の圧迫をやわらげること)』が主役です。『バランスの良い栄養』と『薬物治療(塗り薬)』は準主役です。 もし当記事を治療の参考にされる患者様や患者さんのご家族様、介護者様がおられましたら、そこを踏まえてから読み進めて下さい。

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※当記事は、日本薬剤師会作成の「褥瘡の知識(pdfファイルが開きます)」という冊子の情報を主に引用・抜粋・編集等して作成しています。※当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬...

褥瘡治療薬(塗り薬)を大別

『褥瘡治療薬って、とにかく薬を患部に塗って清潔なガーゼを当ててたら良いんでしょ?』
全然違います。患部の状態によって、使用すべき薬が変わります。 褥瘡治療は、専門医と専門の薬剤師が介入して創面の状態に応じた薬剤選択を行い、壊死組織を取り除く等の処置を行っても、何週間もかかるものです。

「褥瘡治療薬」と,ひとくくりにせず考える

褥瘡治療薬とひとくくりにせずに考えましょう. ・創の感染を抑えるのが目的である塗り薬
・創の壊死組織除去が目的である塗り薬
・創の滲出液除去が目的である塗り薬
・創の保護(保湿)が目的である塗り薬 褥瘡治療薬と言っても、さまざまな種類があります。

外用薬の選び方の基本

創面の状態に合わせた薬剤(基剤)選択をする

滲出液が多いウエット(Wet)な創面に対しては、創面の水分を吸収する「吸水性基剤」を選択するのが基本です。

逆も同じで 滲出液が少ないドライ(Dry)な創面に対しては、創面に水分を与える「補水性基剤」を選択して用いるのが基本です。

創面の状態に合わせた基剤選択(薬剤選択)が行えていないと、添付文書上の薬効と一致していても十分な効果は得られません。

基本的に
・水溶性基剤には、吸水性 があり
・O/W乳剤性基剤には、補水性 があり
・油脂性基剤,W/O乳剤性基剤には、創面保護・保湿性 がある
という事を覚えておきましょう。

創の湿潤具合によって調整するための、外用薬の一覧のようなものはないの?

エキスパート・F・ブレンドという、創面の湿潤状態に合わせて調整可能で、薬剤の安定性に問題の無い組み合わせの例が一覧になったものがありますので、そちらを紹介します。

滲出液の少ない Dryな創面 に対して

創面がDryな程 水分含有率の高いものを選択します。
軟膏の組み合わせ例水分含有率
生理食塩液100%
オルセノン軟膏70%
オルセノン軟膏
+ゲーベンクリーム
(1:1)
65%
ゲーベンクリーム60%
オルセノン軟膏
+リフラップ軟膏
(2:1)
55%
オルセノン軟膏
+リフラップ軟膏
(1:1)
45%
オルセノン軟膏
+リフラップ軟膏
(1:3)
40%
ソルコセリル軟膏25%
リフラップ軟膏23%
オルセノン軟膏
+テラジアパスタ
(3:7)
21%
リフラップ軟膏
+テラジアパスタ
(3:7)
6.90%
アクトシン軟膏-

滲出液の多い Wetな創面 に対して

創面がWetな程 水分吸収率の高いものを選択します。
軟膏の組み合わせ例水分吸収率
ブロメライン軟膏
ヨードコート軟膏
オルセノン軟膏
+デブリサンペースト
(2:3)
24%
ユーパスタ76%
ユーパスタ
+デブリサンペースト
(2:3)
138%
デブリサンペースト200%
カデックス軟膏370%
※上表の水分吸収率は各メーカーが異なる試験法により算出しているもので、実際の吸水性の強さとは一致しません。 実際の吸水性の強さは、 ユーパスタ > デブリサンペースト > ヨードコート軟膏 > カデックス軟膏 と されています。

主な褥瘡治療薬

主な褥瘡治療薬について,それぞれの特徴や使い分けをみてゆきます.
プロスタンディン軟膏0.003%
使用目的肉芽形成促進,表皮形成促進
基材プラスチベース(油脂性)
特徴プロスタグランジンE1製剤なので,血流改善効果は強い.
使い分け血流改善による,上皮形成促進.
注意点血流改善効果が強いので,出血傾向が強い創には適さない.
ゲーベンクリーム1%
使用目的抗菌効果.湿潤効果
基材水中油型の乳剤性基材
特徴銀による抗菌効果.褥瘡の主な感染菌となる緑膿菌,ブドウ球菌に特に優れた抗菌効果があり,耐性菌も生じさせにくい.
使い分け湿潤効果で壊死組織を軟化させ除去しやすくもする.
注意点滲出液が多い創には向かない.
ブロメライン軟膏5万単位/g
使用目的壊死組織の除去
基材水溶性軟膏
特徴蛋白分解酵素による壊死組織除去
使い分け感染の無い創向け
注意点壊死組織の除去効果の強さ故に,周辺組織に付着すると皮膚炎を生じさせてしまう.この注意点を理解した医療従事者の下使用したい薬剤.
アクトシン軟膏3%
使用目的肉芽形成促進,表皮形成促進
基材水溶性軟膏
特徴吸湿性が強い.血流改善効果あり.上皮形成促進
使い分け滲出液が比較的多い創向き
注意点創の収縮作用が強いので注意
ユーパスタコーワ軟膏・イソジンシュガーパスタ軟膏
使用目的肉芽形成促進,表皮形成促進
基材精製白糖
特徴白糖が強力な吸湿作用を発揮する.吸湿速度は速い.
使い分け感染している創や,滲出液の多い創向け.
注意点乾燥した創面には向かない.
カデックス軟膏
使用目的殺菌効果.創面の浄化
基材水溶性軟膏
特徴ヨウ素による殺菌効果と,基材による創面浄化効果
使い分け感染している創や,滲出液の多い創向き.
注意点乾燥した創面には向かない
フィブラストスプレー
使用目的肉芽形成促進
基材(スプレータイプ)
特徴繊維芽細胞増殖因子(FGF)による肉芽形成促進作用.
使い分け感染のある創には向かない.滲出液の多い創にも不適.
注意点感染の無い創でも使用前に創面を洗浄してから使用する.

残存する壊死組織を除去する

硬い壊死組織に対してはデブリドマン(という外科的処置)を専門医にしてもらうのですが、柔らかい壊死組織に対しては薬剤(塗り薬)で除去を行います。 壊死組織除去には、ゲーベンクリーム や ブロメライン軟膏 がよく使用されます。 ・ゲーベンクリーム
滲出液が少ない創に ※基材は補水性のある乳剤性基材) ・ブロメライン軟膏
滲出液が多い創に ※基材は吸水性がある) ・カデックス軟膏
(滲出液が多い創に ※基材の特徴として、吸水能は高くないが、水分保持性は高い) 【関連記事】
※壊死組織除去についてはこのページにも書きました。

~余談~ デブリードマンとは

医師と連携を取って、患者さんの褥瘡治療をしていると『○○DR(専門医)に今度デブリードマン頼むわ』等のワードが出てくる事がありますので、デブリードマンが何なのかくらいは知っておきましょう。
nursepressより引用
デブリードマン(debridement)とは「壊死した組織を除去する」ことです。つまり、創の中に、死滅した組織、成長因子など創傷治癒促進因子の刺激に応答しなくなった老化した細胞、異物、さらにこれらにしばしば伴う細菌感染巣があった場合、それらを除去して創を清浄化する治療行為をいいます。

省略して「デブリ」と言う医療関係者(医師)も多いです。 『デブリ=デブリードマン=壊死した組織を除去する処置のこと』医師以外はこれだけわかっていれば大丈夫です。 関連記事

まとめ

薬剤師も訪問に出向く機会が増えて来ました。つまり、患者さんの褥瘡の創面を直接目にする機会も増えてくるという事です。 例えば,
患者さんの褥瘡の創面の感染もなくなり,
滲出液も無く乾いてきているのに,
患者宅にユーパスタ軟膏しか無いとしたら治療に良くありませんよね。
そういった場合に、DRへ連絡し創面の状態を伝え
『今の褥瘡面の症状に合わせて何か処方いただけませんか?』
『例えば、○○等が合っていると思うのですが? いかがですか?』
などと提案できる能力は最低限必要です。

参考書籍

日本褥瘡学会(ホームページ)
褥瘡治療薬つかいこないガイド(じほう 古田勝経)

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最後に

当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。当サイトの情報は「参考程度」に留めておいてください。当サイトでは、取り上げた情報により生じた健康被害等の責任は一切負いません。

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