ベオーバ錠50㎎は口渇等の副作用の少ない過活動膀胱治療薬

薬・治療・病態 各論

ベオーバ錠50㎎は、過活動膀胱(OAB)に対する1日1回投与の新規経口治療薬です。

大雑把に言うと、新しい頻尿治療薬です。

過活動膀胱とは (※ 過活動膀胱診療ガイドライン より引用)
過活動膀胱(Overactive Bladder: OAB)は、加齢や神経疾患などの原因により「尿意切迫感 (急に起こる、抑えられないような強い尿意)」や「頻尿(排尿回数が通常より多い状態)」、「夜間頻尿」などの症状を示す疾患です。

OAB(過活動膀胱)の有症状率は加齢とともに上昇する傾向があり、本邦の2012年の人口構成から1,040万人のOAB(過活動膀胱)患者が存在すると推定されています。また、高齢化に伴いOAB(過活動膀胱)患者の更なる増加も想定され、QOLを含めた健康改善に対するOAB(過活動膀胱)治療薬の寄与は大きいものと考えられます。

ベオーバ錠は、その効果とともに、(抗コリン薬ではないので)口渇等の副作用が少ない という点も期待されています。



効能・効果は?

上で確認したとおり、『過活動膀胱(OAB)』に使われる薬剤です。

具体的には、下記のような症状に使われます。
尿意切迫感・・・すぐにトイレに行きたくなる
頻尿・・・・トイレ(おしっこ)の回数が多い
切迫性尿失禁・・・我慢できずに失禁してしまう事がある

効能・効果(※添付文書より引用)
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁

重要なので『効能・効果に関連する使用上の注意』も引用しておきます。

効能・効果に関連する使用上の注意(※添付文書より引用)
本剤を適用する際、十分な問診により臨床症状を確認するとともに、類似の症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌などの下部尿路における新生物等)があることに留意し、尿検査等により除外診断を実施すること。なお、必要に応じて専門的な検査も考慮すること。

 

飲み方は?

ベオーバ錠50㎎(ビベグロン)の飲み方は1日1回食後です。

朝食後でも、
昼食後でも、
夕食後でも 大丈夫です。

用法・用量 (※添付文書より引用)
通常、成人にはビベグロンとして50mgを1日1回食後に経口投与する。

 

飲んではいけない人は?

現時点(発売時)では、禁忌は過敏症の既往歴のある患者さんのみとなっております。

※過敏症の既往歴・・・【簡易説明】1回飲んで副作用の出た患者さんの事です。

禁忌 (※添付文書より引用)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

 

どうやって効くの?

膀胱にあるβ3アドレナリン受容体に選択的に作用し、膀胱を弛緩させることで、尿を蓄めておけるようにし、『尿意切迫感』『頻尿』及び『切迫性尿失禁』の症状を改善します。

β3アドレナリン受容体に選択的に作用せずに、β1アドレナリン受容体にも作用してしまうと、副作用として脈拍数が増加する、血圧が上昇する等の症状が起こってしまいます。
ちなみに、β2アドレナリン受容体に作用すると『気管支が拡張される』等の症状が起こります。

薬効薬理 (※添付文書より引用)
1. 薬理作用
(1) βアドレナリン受容体に対する作用(in vitro)
ヒトβ3アドレナリン受容体を安定発現させた細胞において、濃度依存的な細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。一方、ヒトβ1及びβ2アドレナリン受容体発現細胞においては、細胞内cAMP濃度上昇作用をほとんど示さなかった

 




β3アドレナリン受容体作動薬というのは『ベタニス錠』も同じ

β3アドレナリン受容体に作用するというのは、ベタニス錠も同じです。

薬効薬理(※ベタニス錠の添付文書より引用)

1. β3アドレナリン受容体に対する刺激作用
ヒトβ3アドレナリン受容体を発現させた細胞において、濃度依存的な細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。ヒトβ1及びβ2アドレナリン受容体を発現させた細胞においては、細胞内cAMP濃度上昇作用をほとんど示さなかった

ベオーバ錠のメーカーのMRさんによると、「ベタニス錠には併用禁忌薬がありますが、ベオーバ錠には併用禁忌薬がございませんので、その点では、より安心してお使い頂けると考えております」との事でした。

ベタニス錠との併用禁忌薬
フレカイニド酢酸塩(タンボコール)
プロパフェノン塩酸塩(プロノン)

しかし、ベオーバ錠にも併用注意薬はあって、多くの薬剤の代謝酵素である『CYP3A4』又は『P-糖タンパク』が関与する可能性があるという事なので、相互作用や併用薬に注意を払う必要があることに変わりはありません。

相互作用の概略(※ベオーバ錠の添付文書より引用)
ビベグロンはCYP3A4又はP-糖タンパク(P-gp)の基質であることが示唆されている。

具体的には、

・イトラコナゾール(イトリゾール)
・リトナビル(ノービア)
等との併用で、
ビベグロン(ベオーバ錠)の作用が強くなる可能性があるので注意が必要です。

・リファンピシン(リファジン)
・フェニトイン(アレビアチン・ヒダントイン)
・カルバマゼピン(テグレトール)
等との併用で、
ビベグロン(ベオーバ錠)の作用が弱くなる可能性があるので注意が必要です。

併用注意(併用に注意すること)(※ベオーバ錠の添付文書より引用)

薬剤名等
アゾール系抗真菌剤
イトラコナゾール等
HIVプロテアーゼ阻害剤
リトナビル等
臨床症状・措置方法
ケトコナゾールと併用したとき、ビベグロンの血中濃度が上昇したとの報告がある。(「薬物動態」の項8.(2)参照)
機序・危険因子
CYP3A4及びP-gpを阻害する薬物と併用することにより、ビベグロンの血中濃度が上昇する可能性がある。

薬剤名等
リファンピシン
フェニトイン
カルバマゼピン
臨床症状・措置方法
ビベグロンの作用が減弱する可能性がある。
機序・危険因子
CYP3A4及びP-gpを誘導する薬物と併用することにより、ビベグロンの血中濃度が低下する可能性がある。

 

ベオーバ錠は、2019年12月1日から長期処方が可能

2019年11月末日までは1回に14日分しか処方できません。
しかし、2019年12月1日以降は30日分でも56日分でも90日分でも処方できます。

(※添付文書より引用)
2019年11月末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている



余談

ベオーバ錠の主成分であるビベグロンは米国Merck社により創られたのですが、日本の販売はMSDではないです。(※Merck社は、米国とカナダ以外ではMSDという社名)

この薬剤は日本では、
・キッセイ薬品工業株式会社
・キョーリン製薬ホールディングス株式会社
の2社併売です。

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