薬剤師国家試験の過去問をみていると、薬局薬剤師としても面白いなとか,実際にありそうだな,と思える例が問題として出ている事があります。
今回はそのうちの1つを、2018年2月25日に行われた第103回の薬剤師国家試験問題から引用しました。
第103回薬剤師国家試験 問211(実務)
問 211 6歳男児。体重20kg。身長120cm。扁桃炎と診断され、この男児の処方箋を、母親が薬局に持参した(処方1)。
(処方1)
セフジニル細粒10% 1回0.5g(1日1.5g) 1日3回 朝昼夕食後 5日分
セフジニル細粒10%の添付文書には、「通常、小児に対してセフジニルとして1日量9~18mg(力価)/kg を3回に分割して経口投与する」と記載されている。
お薬手帳を確認したところ、男児は鉄欠乏性貧血で溶性ピロリン酸第二鉄を服用していることが判明した(処方2)。
(処方 2)
溶性ピロリン酸第二鉄シロップ 5% 1回4mL(1日12mL) 1日3回 朝昼夕食後 14日分
本症例に対し、薬剤師が行う対応の中で適切なのはどれか。2つ選べ。
1 セフジニル細粒10%の投与量について医師に疑義照会する。
2 セフジニル細粒10%からレボフロキサシン水和物製剤への処方変更を医師に提案する。
3 セフジニル細粒10%は鉄剤と一緒に服用するように指導する。
4 症状が途中で改善したら服用を終了するように指導する。
5 尿や便が赤色調を呈することがあると説明する。
第103回 問211の正答は・・
正答は 1,5 ですね。
〇1 セフジニル細粒10%の投与量について医師に疑義照会する。
×2 セフジニル細粒10%からレボフロキサシン水和物製剤への処方変更を医師に提案する。
→レボフロキサシンも鉄剤との相互作用があるので「適切な提案ではない。」
×3 セフジニル細粒10%は鉄剤と一緒に服用するように指導する。
→セフジニルの効果がほとんど出なくなってしまうので「こんな指導はダメ。」
×4 症状が途中で改善したら服用を終了するように指導する。
→抗生物質なのでこの指導は「適切ではない。」
〇5 尿や便が赤色調を呈することがあると説明する。
はい。
現役の薬剤師なら、難なく答えられる問題かと思います。
「ほっ。正解できて良かった。」
ではなく、これめちゃくちゃ興味深い問題だとおもいませんか
この問題の興味深い所
「疑義照会」や「服薬指導の内容」といった、ほんとに実戦で使える能力が身についているかを確かめている点
あと、添付文書情報。これを提供してくれているのが、リアルじゃないですか
「通常、小児に対してセフジニルとして1日量9~18mg(力価)/kg を3回に分割して経口投与する」
実際、この問題のようなケースに遭遇したら、セフジニル細粒を普段よく調剤している薬局に勤務しているなら「1日量9~18mg(力価)/kg」っていうのは覚えているのですが、普段よく調剤している訳でなければ、「1日量9~18mg(力価)/kg」を覚えていたとしても疑義照会前には添付文書開いて念のため確認しますよね。
というか、覚えていても添付文書は確認するべきですよね。
この行動が反映されているのが、リアルで面白い。薬剤師国家試験でこうゆう問題を出してくれていると知って、なんか嬉しい気持ちになりました。
当薬局には、この問題の出た第103回の国家試験を受けた薬剤師はおりませんが、その1年前である第102回の国家試験を合格した薬剤師が何人かおります。彼らを見ていると、薬剤師として非常に優秀で、こっちが勉強になる事も多いので、薬剤師国家試験の質の向上をとても感じています。
それだから故に、かかりつけ薬剤師の3年縛りとか、管理薬剤師の5年縛りとか、とっぱらってしまえよ!と思ってしまうのですが・・
おっとすみません、蛇足でしたw
最後に
薬剤師国家試験を現役の薬剤師が見てみて、解いてみるのもおもしろいものです。
(※学生時代は「おもしろい」などという感想を言っている余裕はなかったのですが)
また、実務実習指導認定薬剤師をとっている方は当記事で引用したような「実務」の問題だけでも見ておくと、よりよい実務実習指導ができるかと思います。
厚生労働省のページにて閲覧もできますので、最新の薬剤師国家試験 過去問の「実務」くらいは見ておくことをお勧めします。
というか実務実習指導認定薬剤師の皆さんはそれくらい当然のようにされてますね。またまた蛇足、失礼しましたw
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