薬剤師で、ケアマネジャー(合格)の私が、
薬剤師が知っておくべき「ヘルパーが行える服薬介助(医療行為ではない)の範囲」
についてご説明いたします。
医師や看護師でなくても行える医療行為の範囲
結論から入りますが、
厚生労働省が「医療行為ではない」と通知した範囲 (医師や看護師以外でも行える医療行為の範囲) は現時点では下記のとおりです。
①体温を測る
水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
②血圧を測る
自動血圧測定器により血圧を測定すること
③SpO2(酸素飽和度)を測る
新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
④軽微な傷,やけどの処置
軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
⑤軟膏を塗る
皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)
⑥湿布を貼る
皮膚への湿布の貼付
⑦目薬を点す
点眼薬の点眼
⑧一包化薬を飲んでもらう
一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)
⑨坐薬を入れる
肛門からの坐薬挿入
⑩点鼻薬の噴霧を手伝う
鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。
ヘルパーが行える服薬介助の範囲
上で確認したように、ヘルパーが行える医療行為の範囲は、この10項目です。
①体温を測る
②血圧を測る
③SpO2(酸素飽和度)を測る
④軽微な傷,やけどの処置
⑤軟膏を塗る
⑥湿布を貼る
⑦目薬を点す
⑧一包化薬を飲んでもらう
⑨坐薬を入れる
⑩点鼻薬の噴霧を手伝う
そして、私たち薬局に勤務する薬剤師が特に知っておくべきなのは、⑤~⑩の「服薬介助」に関する行為です。
これを知っているか否かで、在宅の現場や、薬局へ薬を代理で受け取りに来たヘルパーさんとの会話やその理解度が大きく変わります。
若手薬剤師さんには是非知っておいて欲しいです。
具体例- 知っているだけでこれだけ変わる
薬剤師が、”ヘルパーさんが行える服薬介助” と “ヘルパーさんが行えない服薬介助” を知っていたら、
例)ヘルパーさんが生活介助で入っている患者さんの薬が一包化されていなかった場合
薬剤師「一包化されていない薬ですが、患者さんは飲めていますか?」
「一包化されてなかったらヘルパーさんも服薬介助できないので、やりにくくないですか?」
「もし、飲めていなかったらヘルパーさんも服薬介助ができるように一包化をDRに提案しましょうか?」
といったように、確認や提案がより具体的にできるようになります。
例)背中に湿布がうまく貼れないとお困りの独居の患者さんの場合
薬剤師「ヘルパーさんの介助は受けていますか?」
患者「ヘルパーさんは、週3回だけど来てくれてるよ」
薬剤師「ヘルパーさんが来た時に背中にシップを貼ってもらうように、ケアマネジャーさんを通して頼んでおきましょうか?」
このような提案もできるかもしれません。
最後に、上記情報の根拠を引用して、終わりにします。
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知) を引用
原本のPDFファイルを確認したい方は上のリンクをクリックしてください。
※以下引用です。
各都道府県知事 殿
厚生労働省医政局長(公印省略)
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)
医師、歯科医師、看護師等の免許を有さない者による医業(歯科医業を含む。以下同じ。)は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条その他の関係法規によって禁止されている。ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
ある行為が医行為であるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がある。しかし、近年の疾病構造の変化、国民の間の医療に関する知識の向上、医学・医療機器の進歩、医療・介護サービスの提供の在り方の変化などを背景に、高齢者介護や障害者介護の現場等において、医師、看護師等の免許を有さない者が業として行うことを禁止されている「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されているとの声も聞かれるところである。
このため、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等において判断に疑義が生じることの多い行為であって原則として医行為ではないと考えられるものを別紙の通り列挙したので、医師、看護師等の医療に関する免許を有しない者が行うことが適切か否か判断する際の参考とされたい。
なお、当然のこととして、これらの行為についても、高齢者介護や障害者介護の現場等において安全に行われるべきものであることを申し添える。
(別紙)
1 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
2 自動血圧測定器により血圧を測定すること
3 新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
4 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
5 患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。
具体的には、
皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、
皮膚への湿布の貼付、
点眼薬の点眼、
一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、
肛門からの坐薬挿入又は
鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。
① 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
② 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
③ 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
注1
以下に掲げる行為も、原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものであると考えられる。
① 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること
② 重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること
③ 耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)
④ ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く。)
⑤ 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
⑥ 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いて浣腸すること
※ 挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの
注2
上記1から5まで及び注1に掲げる行為は、原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものでないと考えられるものであるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。
このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。
また、上記1から3までに掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。
注3
上記1から5まで及び注1に掲げる行為は原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものではないと考えられるものであるが、業として行う場合には実施者に対して一定の研修や訓練が行われることが望ましいことは当然であり、介護サービス等の場で就労する者の研修の必要性を否定するものではない。
また、介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。
注4
今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきものである。
注5
上記1から5まで及び注1に掲げる行為について、看護職員による実施計画が立てられている場合は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、相談することにより密接な連携を図るべきである。
上記5に掲げる医薬品の使用の介助が福祉施設等において行われる場合には、看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がある場合には、その指導の下で実施されるべきである。
注6
上記4は、切り傷、擦り傷、やけど等に対する応急手当を行うことを否定するものではない。
引用終わり
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