血液検査結果-薬局薬剤師がおさえておくべき検査値・基準値

薬・治療・病態 各論

腎機能

検査項目基準値備考欄
BUN(尿素窒素)8~22mg/dL血液中の尿素の窒素成分
腎機能不全でBUNは上昇
Cr(クレアチニン)男性:0.65-1.07mg/dL
女性:0.46-0.79mg/dL
筋肉のエネルギー源(クレアチン)の最終代謝産物
腎機能低下でCr値は上がる
eGFR(推定糸球体濾過量)90-110mL/分/1.73㎥糸球体濾過量(GFR)の推定値
腎機能低下で低値となる
Cys-C(シスタチンC)0.5~0.9mg/L全身で産生される血清タンパク質
腎機能低下で高値になる

肝機能

検査項目基準値備考欄
AST(GOT)(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)10~40U/L肝細胞の障害の有無をみる逸脱酵素
肝機能障害で上昇
ALT(GPT)(アラニンアミノトランスフェラーゼ)5~40U/L肝細胞の障害の有無をみる逸脱酵素
肝機能障害で上昇
TB(T-Bil)(総ビリルビン)0.3~1.2mg/dL赤血球を分解し体外に排出する時に産生
肝機能障害時に高値になる
ALP(アルカリフォスファターゼ)115-359U/L生体の細胞膜に存在する酵素
肝障害
γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)男性:13~64U/L
女性:9~32U/L
薬物代謝に関与する酵素
肝障害時に上昇します

細胞障害

検査項目基準値備考欄
LD(LDH)(乳酸脱水素酵素)115~245U/L細胞が損傷を受けると血中に出る酵素
細胞障害で上昇します
CK(CPK)(クレアチンキナーゼ)男性:62~287U/L
女性:45~163U/L
筋肉等が損傷を受けると血中に出る酵素
筋肉の損傷で上昇します

炎症・感染症

検査項目基準値備考欄
CRP(C反応性タンパク)0.3mg/dL以下代表的な炎症マーカー
WBC(白血球数)男性:3,900~9,800/μL
女性:3,500~9,100/μL
好中球、リンパ球、好酸球、単球、好塩基球の総称
NEUT(好中球)1,500~7,500/μL細菌などの異物から体を守る
LYM(リンパ球)1,500~4,000/μL免疫反応の中心的な役割を担う
EOS(好酸球)30~450/μLアレルギー関係に反応
MON(単球)220~500/μLリンパ球に異物の情報を伝達する

貧血

検査項目基準値備考欄
RBC(赤血球)男性:427~570万/μL
女性:376~500万/μL
酸素を運ぶ細胞
Hb(ヘモグロビン)男性:13.5~17.6g/dL
女性:11.3~15.2g/dL
血色素
ヘモグロビンの不足=貧血

出血・凝固系

検査項目基準値備考欄
Plt(血小板数)男性:13.1~36.2万/μL
女性:13.0~36.9万/μL
この数値が小さい=出血しやすい
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)24.3~36.0secこの時間が長い=血が固まりにくい
PT(プロトロンビン時間)10.5~13.5secこの時間が長い=血が固まりにくい
PT-INR(プロトロンビン時間 国際標準化比)0.85~1.15この数値が大きい=血が固まりにくい

糖代謝(糖尿病)

検査項目基準値備考欄
GLU(血糖値)73~109mg/dL血液中のブドウ糖の濃度
HbA1c(グリコヘモグロビン)4.9~6.0%過去1~3ヶ月の平均血糖レベルを反映

電解質

検査項目基準値備考欄
Na(ナトリウム)136~147mEq/Lからだの水分を調節する
K(カリウム)3.6~5.0mEq/L筋肉や神経に関係する
Cl(クロール)98~109mEq/L体内に酸素を供給する
Ca(カルシウム)8.5~10.2mEq/L骨や歯を作る,神経刺激の伝達,血液の凝固に関係する

腎機能

BUN(尿素窒素)

・BUNは、血液中の尿素の窒素成分です。
・タンパク質が分解されるとアンモニアが発生し、肝臓で代謝され窒素が作られます。
・主に腎機能の指標として用いられますが、腎機能以外での要因でも変化します。
・BUNの数値だけをもって腎機能を評価できるものではない。
・糸球体濾過量が低下し腎機能不全となるとBUNは上昇します。
・BUN高値の原因は、腎臓濾過機能低下または脱水であることが多い。
・女性は男性より10~20%ほど低い値になる。

[BUN 高値 から推測される疾患や要因]
・腎不全
・尿路閉塞・利尿薬・脱水
・高タンパク食・アミノ酸輸液
・発熱・火傷・甲状腺機能亢進・ステロイドホルモン・絶食・悪性腫瘍・重症感染症
・糖尿病
・消化管出血

[BUN 低値 から推測される疾患や要因]
・肝不全
・低タンパク食・タンパク同化ホルモン
・妊娠末期



Cr(クレアチニン)

・クレアチニンは、筋肉のエネルギー源(クレアチン)の最終代謝産物です。
・筋肉量に比例するので、男性では女性より高値になります。
(筋肉量が少ないと、腎機能が低下しているのに血清Cr値が正常値を示すこともあり、数値だけで判断してしまい腎機能低下を見過ごさないよう注意が必要)
・腎機能が低下すると血清クレアチニン値(血中のクレアチニン量)は上がります。

[血清Cr 高値 に影響を与える疾患・要因]
・腎機能低下
・脱水・腎血流量低下
・尿管結石・前立腺肥大
・シメチジン,ファモチジン,ベンズブロマロン,スピロノラクトン,ST合剤等の服用

[血清Cr 低値 に影響を与える疾患・要因]
・筋ジストロフィー,筋萎縮性側索硬化症 (筋肉量が減る疾患)
・糖尿病性腎症の初期
・妊娠
・長期寝たきり
・大量輸血・尿崩症

eGFR(推定糸球体濾過量)

・GFR(糸球体濾過量)を測定するのは大変煩雑なので、血清Cr値,年齢,性別から推算式で求めた推定値がeGFRです。
※個人的には日本腎臓病薬物療法学会のサイトにある自動計算ページを活用させていただいています。
・eGFR算出式で求めた値は標準体型(170cm,63kg,体表面積1.73㎡)のものなので、個人の体格によっては体表面積で補正して求めなおす必要があります。

慢性腎臓病(CKD)のステージ分類(日本腎臓学会-CKD診療ガイド2012)によると
GFRの値によって下記のとおり区分されています。
90以上:正常または高値
89~60:正常または軽度低下
59~45:軽度~中等度低下
44~30:中等度~高度低下
29~15:高度低下
15未満:末期腎不全

Cys-C(シスタチンC)

・全身で産生される血清タンパク質です。
・男女差はみられません。
・腎機能低下で高値となります。
・血清Cr値と同様、Cys-C値をGFRの推算に用いることができます。
・血清Cr値よりも、より早期から腎機能障害が数値に反映されます。

[Cys-C 高値 に影響を与える疾患・要因]
・腎機能低下
・甲状腺機能亢進
・副腎皮質ステロイドの服用

[Cys-C 低値 に影響を与える疾患・要因]
・甲状腺機能低下
・シクロスポリンの服用

肝機能

AST(GOT)(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

・ASTは、肝細胞の障害の有無をみる逸脱酵素の1つです。
(逸脱酵素:臓器が障害を受けた際に細胞内の酵素が血液中に逸脱したもの。)
・肝臓に多く含まれるため肝疾患の診断に主に用いられる。
・肝臓以外では 骨格筋や心筋にも含まれるので、激しい筋トレや心筋疾患でも高値を示すことがある。

ALT(GPT)(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

・ALTも、肝細胞の障害の有無をみる逸脱酵素の1つです。
・ASTよりも、肝臓に特異的に含まれる。
・肝炎や インターフェロンの治療効果の指標としてよく用いられています。

 

[AST・ALT 高値を起こす可能性のある薬剤]
・イソニアジド ・リファンピシン (抗結核薬)
・アセトアミノフェン (解熱鎮痛薬)
・メトトレキサート (免疫抑制薬)
・エリスロマイシン (抗生物質)

[AST・ALT 低値を起こす可能性のある薬剤]
・ペニシラミン (抗リウマチ薬)

 

TB(T-Bil)(総ビリルビン)

・赤血球を分解し、体外に排出する過程で産生される成分です。
・肝機能障害時に高値になります。
・胆道閉塞や、赤血球が多量に壊れている場合にも高値となります。
・黄疸の程度の鑑別にも用いられます。
20mg/dL以上:高度黄疸
20~10mg/dL:中等度黄疸
10~2mg/dL:軽度黄疸
2~1mg/dL:潜在性黄疸

[TB 高値を起こす可能性のある薬剤]
・フェノバルビタール (抗痙攣薬)

ALP(アルカリフォスファターゼ)

・生体の細胞膜に幅広く存在する酵素です。
・肝障害で上昇します。
・胆汁うっ滞,骨疾患,妊娠などによっても上昇します。

γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)

・薬物代謝に関与する酵素です。
・あらゆる肝障害で高値を示しますが、特にアルコール性肝障害や、薬物性肝障害で上昇することが多い。
・胆汁うっ滞や、閉塞性黄疸でも上昇します。
・個人差が出やすい数値でもあります。

[γ-GTP 高値を起こす可能性のある薬剤]
・クロルプロマジン (抗精神病薬)

細胞障害

LD(LDH)(乳酸脱水素酵素)

・細胞が損傷を受けると血中に出る酵素です。
・体内の広くに分布しています。肝臓,腎臓,心筋,骨格筋,赤血球,がん細胞 に多く含まれます。
・病気以外では、運動によっても上昇することがわかっています。
・LD(LDH)だけでは、何が原因で上がっているかまではわかりません。

CK(CPK)(クレアチンキナーゼ)

・筋肉等が損傷を受けると血中に出る酵素です。
・筋肉の病気である 急性心筋梗塞,筋ジストロフィーなどで大きく上昇します。
・甲状腺機能低下症や悪性腫瘍でも上昇します。
・病気以外では、運動,筋トレ,肉体労働,こむら返り,筋肉注射,点滴漏れ,外科手術後,小児では採血時の大騒ぎなどでも上昇します。

炎症・感染症

CRP(C反応性タンパク)

・肝硬変などのCRP産生能低下や、ウイルス感染症でCRPは低値を示す。
・免疫機能抑制薬や、IL-6阻害薬の投与でもCRPは低値を示すことがある。
・重症細菌感染症、痛風、心筋梗塞、悪性腫瘍、関節リウマチなどで、CRPは高値を示す。

WBC(白血球)

・抗がん剤や、免疫抑制薬の投与で減少することがある。
・白血球造血低下(再生不良性貧血など)、破壊の更新(脾機能亢進など)、腫瘍性疾患で減少。
・ステロイドなどで増加することがある。
・細菌感染祥、非細菌感染症(大腸炎、膵炎)、細胞崩壊(火傷など)、サイトカイン産生腫瘍、造血器腫瘍性疾患などで増加。

 

最後に

当ページは筆者自身の知識の整理のために作成しました。
実際の治療はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
掲載する情報は、私が薬剤師として自信を持って「正しい」と言える情報だけに限定しています。しかし、日進月歩の医療の世界において、今正しいとされている情報が、未来もずっと正しいとは限りません。そういった理由から、このサイトでも間違った情報を伝えてしまう可能性があります。
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