2020年9月から始まる「服薬中フォロー」を前に 日本薬剤師会が「薬剤服用期間中の患者フォローアップの手引き」を公開。

法律・ルール

服薬中フォローなどを義務付ける2020年9月の法改正に先立って、日本薬剤師会が「薬剤服用期間中の患者フォローアップの手引き」を作成してくれました。

読んでみて、「こういう事をやって下さい」という模範例を例示してくれているとともに、「こういう事はしないで下さい」とNG例を数多く書いてくれているのが印象的でした。

「こういう事をやって下さい」という模範例はこのようなものが書かれていました。
模範例

【患者等への確認事項の例】
・薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)
・使用中の薬剤の効果
・薬剤使用中の体調の変化
・患者基本情報の変化
・併用薬や食品・嗜好品との相互作用による影響
・生活機能への影響
・生活の特性の変化
・使用中の薬剤に対する意識(先入観、不安感等) 等

確認は単に「調子は如何ですか?」といったものではなく、的確かつ曖昧さのない形で行うこと。

チェックリストのように、この部分を参照しながら行うと要点も絞れて、聞き忘れ等も減らせるので役に立ちます。

 

逆に「こういう事はしないで下さい」というNG例はこのようなものが書かれていました。
NG例

あくまで、個々の患者に対して個別に内容を判断するものであり、例えば、使用薬剤のみに基づいて機械的に判断・実施するものではない

なお、「法律で決まった」「実施するよう指導された」等の非本質的な説明は薬剤師としての責務を放棄し、信頼を失墜させる行為であるので厳に慎むこと。

患者さんに電話をして「法律で聞き取るように決まったので、電話で確認させていただくことになりました。」などという地雷薬剤師が現れない事を願います。

フォローアップは患者ごとに個別に判断するものであり、例えば、「ハイリスク薬に該当する」といった情報のみに基づいて機械的・一律に判断するものではない

(※ICTの活用の項目での一文)

「新規患者には〇週間目に自動で定型文を送信」「ハイリスク薬を使用中の患者は×週間毎にアラート」といった一律の運用は、有益でないばかりか患者等の信頼を損ねることにもなりかねないので、実施にあたっては慎重に検討すること

薬学的知見に基づく個別の判断を加えないまま利用すると、フォローアップが形骸化する恐れがある。「機械的に一律実施」「送信するだけで回答がないのを放置」といったことのないよう、利用にあたっては特に留意すること。

特に、情報提供や処方提案にあたっては薬剤師からの一方的なものとならないよう、医師と十分な意思疎通を図り、医師が必要とする情報や内容を踏まえた上で実施するよう常に意識する。

2020年9月以降SNSなんかで
「薬局からの連絡がうっとうしい」
「薬局から連絡来たから質問したのに返事ないし、急に何なんあれ?」
のような投稿を見かけないことを切に願います・・・

 

また全文読んだ感想として、ICTに対しても柔軟な考え方を示していたのも印象的でした。

これまで使用したことのない薬剤を開始する場合で、使用状況をはじめ生活機能への影響など広範な内容を確認したい場合には、対面や電話等が選択肢になるであろうし、
⻑期的なアドヒアランス維持が中心である場合には、ICTの活用(「忘れずに服用できていますか?」「使用する上で問題等はありませんか?」といったメッセージを患者等の端末に発信し、患者等から回答を得る等)も選択肢として考えられる

ICTとはInformation and Communication Technology の略で、通信技術を使って人とインターネット,人と人が繋がる技術の事です。
人と人が繋がる技術の事です。
患者さんと薬剤師が繋がる技術の事です。
「患者さん」と「薬局の自動システム」が繋がる技術の事ではありません。






「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」を引用

日本薬剤師会のページからPDFファイルがダウンロードできます。

以下、日本薬剤師会作成「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」2020年7月17日 第1.0版 からの引用です。一部WEBページで表示するのに適した構成に変更した部分がありますが、内容の編集は行っていません。

1. はじめに

2018 年 12 月、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会より、「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」が公表され、それに基づき、2019 年 12 月に薬剤師法並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)等が改正・公布された。

今般の法改正では、薬剤師法第 25 条の 2 第 2 項に「薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」と規定された。また、薬機法第 9 条の 3 第 5 項では、薬局における開設者の義務として同様の趣旨の規定が設けられるとともに、薬機法第 1 条の 5第 2 項では、それらの情報に関する医療提供施設間相互連携の更なる推進が求められている。

薬剤使用期間中の患者フォローアップについては、本会として従前より薬剤師の基本業務と認識しており、本会制作の調剤の規範書である「調剤指針」でも既にその考え方を示している。また、2015 年 10 月に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」でも言及されているところであり、決して新たな概念ではない。

しかしながら、薬剤師法・薬機法に規定されたのは、患者が安全・安心に薬を使用する上で薬剤師による当該業務が極めて重要である一方、現在の取り組みにおけるある種の曖昧さや個々の薬剤師の資質による差についての指摘があったことは否めない。このような背景より、本会では薬剤使用期間中の患者フォローアップについて、現場の参考とすべく本手引きを作成した。

また、薬局は、薬局製造販売医薬品や要指導医薬品、一般用医薬品の供給機能も担っており、本手引きではこれらの販売後のフォローアップに関する考え方についても併せて示した。

全ての薬剤師が、本手引きを参考として患者フォローアップにより一層取り組むとともに、地域医療の中で薬剤師が果たすべき役割を常に意識して日々の業務に取り組むことを望む。

最後に、本手引きの作成作業にご協力頂いた日本薬剤師会調剤業務委員会委員諸氏に厚く御礼申し上げる。

2. 本手引きについて

<目的>
本手引きは、薬剤使用期間中の患者フォローアップについての考え方や考慮すべき事項、実践内容を示すことで、全ての薬剤師が共通した基本認識に立って業務を行うことを目的としている。

<利用にあたって>
・本手引きではまず、処方箋に基づく調剤により薬剤の交付を受けた患者に対して、次回来局時までのフォローアップに関する考え方を中心に解説した。

・また、薬局で処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品(以下、一般用医薬品等)を販売する場合の販売後フォローアップの考え方については第 6 章で示した。

・手引きの具体例は、解説の上での一つの考え方として示したものであり、必ずしも例示通りの対応を求めるものではない。

・ 調剤報酬算定に係る内容や要件等については、関連する通知等を別途参照されたい。

<本手引きでの用語>
フォローアップ・・・広く薬剤・医薬品の適正な使用を目的に薬剤師が実施する行動を指す言葉として用いる。
なお、法改正に関連した各種報道等では「フォロー」という用語が使用されることもあるが、新英和大辞典(研究社、第 6 版 1 刷:2003年 3 月)によれば、
follow(自動詞):あとに付いていく、引き続いておこる
follow up:(すぐ後から)追跡する、【医学】(診断・治療後に)〈患者〉の健康管理を続ける、継続管理する
と解説されていることから、本手引きでは「フォローアップ」を用いることとする。

※ その他、特段の説明がない場合、本手引きの用語は第十四改訂調剤指針に準ずる。

3. 薬剤使用期間中の患者フォローアップとそれを行う上での基本的考え方

薬剤使用期間中の患者フォローアップとは、患者の来局時だけではなく、調剤した薬剤の使用期間中に適切な形で薬剤の使用状況、併用薬(一般用医薬品等を含む)、患者の状態や生活環境等を把握するとともに、薬学的知見に基づく分析・評価から必要な対応を実施することにより、薬剤の使用期間中を通じて、患者が安心できる最適な薬物療法を提供する薬剤師の行動を指す。

法改正においては、患者フォローアップをどのようなケースで行うのか、またどのように行うのかについては、患者フォローアップを行う薬剤師の専門性に委ねられている。そのため、今回の法改正条文では「調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には」と記載されている。ただ、これは逆に言えば、個々の薬剤師が責任をもって対応しなければならないことを示している。

調剤業務委員会では以下に記載したとおり、標準的な患者フォローアップの方法を示しているが、それを貫く基本的考え方は、
① 個々の患者の特性
② 罹患している疾病の特性
③ 当該使用薬剤の特性
に合わせて、適切に患者フォローアップを行うことである。
実際の現場ではこの 3 つの特性も類型化できない場合も多く、本手引きではあくまで標準的なものしか示すことはできないが、それについては、今後、版を重ね充実させていきたいと考える。

4. 薬剤使用期間中の患者フォローアップの流れ

薬剤使用期間中の患者フォローアップを考える上では、
(1)初回来局時
(2)薬剤交付から次回来局まで
(3)次回来局時(以降(2)(3)の繰り返し)
を一連のサイクルと捉え、継続的な薬学管理を通じて得られた情報の確認、分析・評価の結果を、今後の薬物療法や薬学的管理指導に適切に反映していくことを意識する。

(1) 初回来局時
初回の来局時にあっては、まず、患者情報等を適切・的確に取得することが最も重要となる。来局時対応については、あらためて、調剤の実践の概念図(図 2)を確認・実施すること。(実際の調剤の流れに関しては、最新の調剤指針を参照。)
薬剤交付から次回来局までのフォローアップは、患者情報、薬剤服用歴やお薬手帳の情報、服薬指導を通じて得られた情報等を、薬学的知見に基づき総合的に分析・評価して判断する必要がある。あくまで、個々の患者に対して個別に内容を判断するものであり、例えば、使用薬剤のみに基づいて機械的に判断・実施するものではないことに留意する。

(2) 薬剤交付から次回来局までのフォローアップ
患者等から得られた情報を薬学的知見に基づき分析・評価の上、必要な対応(患者への情報提供・薬学的管理指導・受診勧奨や、医師・医療機関への情報提供・処方提案・残薬調整等)を行う。また、それらの内容は記録し、必要に応じて適宜、フォローアップの見直しを行う。

(3) 次回来局時
(1)の流れの中で、(2)において実施したフォローアップの結果の確認・分析・評価を行い、それらに基づき、今回来局から次回来局までのフォローアップについて再検討を行う。

次章では、今般の法改正で特に焦点となっている、薬剤交付から次回来局までのフォローアップの実践について説明する。

5. 薬剤交付から次回来局までのフォローアップの実践

・次回来局までのフォローアップは、薬剤師が薬学的知見に基づいて判断するものであり、必ずしも患者等の同意を前提としない。一方、薬剤師が必要な確認を行おうにも、患者等の協力がなければ事実上実施は困難である。薬剤師は、患者等にあらかじめその意義・内容を丁寧に説明し、理解を得るよう努めること。なお、「法律で決まった」「実施するよう指導された」等の非本質的な説明は薬剤師としての責務を放棄し、信頼を失墜させる行為であるので厳に慎むこと。

(1)次回来局までのフォローアップの検討
薬剤交付から次回来局までのフォローアップは、この間の状況の経過(変化)に注目するものであることから、使用中の薬剤や併用薬(一般用医薬品等を含む)の確認のみならず、必要に応じて、疾患(原疾患、既往歴、合併症等)、また家族や就学・就業等を含めた生活環境等、使用期間中に状況変化を及ぼすと思われる点について確認し、薬学的知見に基づき分析・評価した上で総合的に判断する。
すなわち、フォローアップは患者ごとに個別に判断するものであり、例えば、「ハイリスク薬に該当する」といった情報のみに基づいて機械的・一律に判断するものではないことにあらためて留意する。

【検討する上での要素】
・使用薬(ハイリスク薬 他)
・併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品を含む)
・積極的に摂取している食品や嗜好品(健康食品、酒・タバコ 他)
・アレルギー歴(医薬品、食品 他)、副作用歴
・疾患(原疾患、既往歴、合併症及び他科受診で加療中の疾患を含む)
・臨床検査値(腎機能、肝機能 他)
・薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)
・薬剤使用中の体調の変化
・年齢・性別
・⾝⻑・体重
・妊娠・授乳状況(女性)
・職業
・生活の特性
・患者特性(薬識・認識力、生活機能 他) 等

【注意を要すると考えられる患者例】
・薬剤が適切に使用されていることを、次回来局時まで継続して確認しておく必要があると考えられる場合。(例:治療有効域が狭い(あるいは有効域と中毒域が接近している)薬剤で、患者の生活環境から飲み忘れ等の懸念がある。治療において⻑期的なアドヒアランス維持が重要となる薬剤で、認知機能の低下から飲み忘れ等が頻繁に発生する懸念がある、身体機能の低下からデバイスが正しく扱えることに継続して注意する必要がある。等)

・患者の身体状態から、副作用の発現等に継続的に注意する必要があると考えられる場合。(例:腎機能の影響を受ける薬剤で、原疾患・合併症等から副作用の発現に特に注意を要する。特定の要素において副作用の発現頻度が増すことが知られている薬剤であり、今後の状態の変化に注意を要する。抗悪性腫瘍剤など、初回投薬時においては特に注意を要し、またその後も患者の身体状態等から継続的に副作用の発現に注意を要する。等)

・患者の生活習慣、生活像に係る情報等を踏まえ、定期的な状況の確認が必要な場合。(看護人・介護人や患者の生活環境の変化により、薬物療法の継続に問題が生じないか確認する必要がある。等)

これらを踏まえて検討した上で、薬学的知見に基づき実施する患者フォローアップ内容について患者等に説明し、理解を得るとともに連絡先を確認する。
なお、検討の結果、次回来局時に必要な確認を行うと判断した場合においても、当然ながら、薬剤についての疑問や体調の変化、併用薬の追加等があれば薬剤師に連絡するよう患者に指導する他、かかりつけ薬剤師・薬局として適切に対応する。

(2)患者等への確認のタイミング
患者等への確認をどのようなタイミングで実施するかは、患者像、使用薬剤等により様々である。また、初回の確認以降も定期的(周期的)な確認が必要かの判断も必要となる。薬剤師は、患者の病識・薬識や生活環境も含めた患者像及び薬剤の持つリスク(有害事象等)の発現頻度・好発時期等に関する安全性情報を踏まえて、これらを的確に判断する必要がある。
なお、「新規患者には〇週間目に自動で定型文を送信」「ハイリスク薬を使用中の患者は×週間毎にアラート」といった一律の運用は、有益でないばかりか患者等の信頼を損ねることにもなりかねないので、実施にあたっては慎重に検討すること

(3)患者等への確認方法
一般的に、患者等に確認を行う手段としては、対面(来局・訪問)のほか、電話やファックス等が挙げられる。また、最近では、電子お薬手帳や SNS など ICTの活用も進んでいる。

確認方法を選択する上では、「目的に照らして適当か」「双方向性が維持されているか」が重要になると考えられ、薬剤師はそれらを適切に判断する。

例えば、これまで使用したことのない薬剤を開始する場合で、使用状況をはじめ生活機能への影響など広範な内容を確認したい場合には、対面や電話等が選択肢になるであろうし、⻑期的なアドヒアランス維持が中心である場合には、ICTの活用(「忘れずに服用できていますか?」「使用する上で問題等はありませんか?」といったメッセージを患者等の端末に発信し、患者等から回答を得る等)も選択肢として考えられる。また、いずれの方法にせよ、薬剤師と患者との双方向性が維持されている必要がある。

なお、生活環境や ICT リテラシーなどにより、患者側から希望が寄せられるケースもある。そのような場合も、その方法が目的に照らして適当かを考慮しつつ、患者と十分にコミュニケーションを取りながら選択する。

※参考:ICT を活用した確認について
昨今、患者フォローアップに関連して様々な ICT を活用したシステム・サービスがリリースされている。これらは、適切に活用することで、薬剤師・患者等双方の負担を軽減し、的確で効率的なフォローアップに繋がるものと期待される。
一方、薬学的知見に基づく個別の判断を加えないまま利用すると、フォローアップが形骸化する恐れがある。「機械的に一律実施」「送信するだけで回答がないのを放置」といったことのないよう、利用にあたっては特に留意すること。

(4)患者等への確認事項
必要に応じて患者等に確認する事項のうち、特に意識すべきと考えられるのは、前回の薬学的知見に基づく介入後の結果と、前回から今回の間の状況の変化である。必要に応じて薬剤師が取捨選択するものであるが、具体的には下記のようなものが挙げられる。

【患者等への確認事項の例】
・薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)
・使用中の薬剤の効果
・薬剤使用中の体調の変化
・患者基本情報の変化
・併用薬や食品・嗜好品との相互作用による影響
・生活機能への影響
・生活の特性の変化
・使用中の薬剤に対する意識(先入観、不安感等) 等

確認は単に「調子は如何ですか?」といったものではなく、的確かつ曖昧さのない形で行うこと。
なお、患者等から得た情報によっては、これら以外も当然ながら確認が必要となる。

(5)分析と評価
患者等から得た情報(患者インタビュー等)は、薬学的知見に基づき慎重に分析・評価し、患者の現在の状況を的確に把握する。
特段の注意を要しないと思われる情報でも、他の情報と照らし合わせて総合的に分析・評価することで、有害事象(あるいはその予兆)や薬学的介入を要する事項が明らかになる場合があるので注意する。また、薬物療法の観点からは、使用中の薬剤で問題が発生していないことも重要な評価となる。

(6)結果と対応
(5)分析と評価で得られた結果を、今後の継続的な薬学的管理に反映することが最も重要となる。

薬学的介入が必要と考えられる場合には、問題解決のために患者等に対して必要な情報提供又は薬学的管理指導を行う。情報提供又は薬学的管理指導にあたり、患者がお薬手帳を所有している場合は必要に応じてそれを活用するとともに、実施した薬剤師の氏名を患者等に伝える。

また、副作用の発生が疑われる等、薬物療法の継続に支障が生じる(あるいは生じた)場合は、速やかに処方医等に情報提供を行い、連携して対応する。処方提案や残薬調整についても、緊急性等を勘案しながら電話、服薬情報提供文書等を用いて処方医等に連絡する。なお、情報提供や処方提案等にあたっては、患者から得た情報、薬学的知見に基づき分析・評価した結果を、簡潔・的確に伝えること。これら以外の場合においても、必要に応じ、医師等に文書や電話等により
薬剤の使用状況等に関する情報提供を行う。特に、情報提供や処方提案にあたっては薬剤師からの一方的なものとならないよう、医師と十分な意思疎通を図り、医師が必要とする情報や内容を踏まえた上で実施するよう常に意識する。

(7)記録
患者に確認した事項、薬剤師が分析・評価した結果と対応(患者への情報提供・指導)等については、調剤録に記載する。(薬剤師法第 28 条第 2 項)。
記載にあたっては、的確かつ経時的に整然と記録することは必須である。SOAP形式でまとめた内容を記載することも考えられるが、SOAP 形式だと記載内容が全体として⻑くなったり、SOAP にこだわるあまり、記録に残しておくべき要点がかえってわかりにくくなったりすることがあるので、必ずしも SOAP 形式にこだわることなく、記録しておくべき要点が何かを意識すること。また、1 人の患者には 1 人のかかりつけ薬剤師が一貫して対応することが理想であるものの、複数の薬剤師が携わる場合があることや医師等への情報提供も考慮して「簡潔に要点を記録する」「記録する内容にメリハリをつけて重要な事項を浮き彫りにする」
という工夫をした記録にすべきである。

(8)その他
・これらは、薬剤師から患者等に適宜必要な情報を確認する流れを記載しているが、当然ながら、患者等からの連絡・訴えにより確認を行う場合もある。
特に注意を要すると考えられる内容や症状について説明しておき、「〇〇のような場合は直ちに連絡するように」と指導しておくことも重要である。
・必要に応じて、普段から連携を行っている他職種に患者情報を確認することも有用である。その際は、患者等の許諾を得るほか、個人情報の取り扱いに留意すること。

6. 処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品を販売する場合の販売後フォローアップの考え方

薬局で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品を販売する場合、販売後フォローアップについての基本的な考え方は、処方箋に基づく調剤の場合と同様と考えられる。すなわち、使用者の背景情報や医薬品・併用薬等から、薬学的知見に基づき総合的に販売後フォローアップを判断することになる。
以下、販売後フォローアップにあたって医薬品ごとに留意すべき事項を示す。

[処方箋医薬品以外の医療用医薬品]
薬局医薬品の販売後フォローアップについては、薬機法第 36 条の 4 第 5 項に新たに規定されているので、参照されたい。
なお、そもそも処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、「薬局医薬品の取扱いについて(平成 26 年 3 月 18 日薬食発 0318 第 4 号厚⽣労働省医薬⾷品局⻑通知)」でも示されている通り、医師等の処方箋に基づく調剤が原則であり、通常、その販売は極めて例外的である。
また、医療用医薬品は一般用医薬品とは目的を異にするものであることから、やむを得ず販売せざるを得ない場合にあっては、法令・通知の遵守は当然として、特に販売後においても「体調の変化や有害事象の確認」「他の医薬品の使用の勧奨」「医療機関への受診状況の確認と受診勧奨」は多くのケースにおいて考慮しなければならない。
販売後フォローアップの実施内容等は、適切に販売記録に反映すること。また、必要に応じて薬剤服用歴管理記録にも反映する。

[薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品]
薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品についても当然ながら、確認した内容の分析・評価結果によって、販売後の継続的な確認や利用者への受診勧奨等が必要になるケースが想定される。販売にあたっての流れや留意すべき点、販売後の相談対応や販売後モニタリング等の考え方については、「要指導医薬品、一般用医薬品販売の手引き(日本薬剤師会)」で詳しく示しているので、参照されたい。
(薬局製造販売医薬品は「要指導医薬品、一般用医薬品販売の手引き」の対象範囲外であるが、基本的な考え方は参考になるものと考える。)
なお、薬剤師は必要と認めた場合、販売時の情報提供に加え、購入者の連絡先等を確認し、適切に販売記録や薬剤服用歴管理記録を作成しておくこと。

7. 薬剤使用期間中の患者フォローアップに関連する法律

※ 法律に関して下線を引いている部分は、今回改正が行われた点。

<薬剤師法(抄)>
第二十五条の二(情報の提供及び指導)
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつているものに対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
2 薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

第二十八条(調剤録)
薬局開設者は、薬局に調剤録を備えなければならない。
2 薬剤師は、薬局で調剤したときは、厚生労働省令で定めるところにより、調剤録に厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
3 薬局開設者は、第一項の調剤録を、最終の記入の日から三年間、保存しなければならない。

<薬機法(抄)>

第一条の五(医薬関係者の責務)
1 略
2 薬局において調剤又は調剤された薬剤若しくは医薬品の販売若しくは授与の業務に従事する薬剤師は、薬剤又は医薬品の適切かつ効率的な提供に資するため、医療を受ける者の薬剤又は医薬品の使用に関する情報を他の医療提供施設(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の二第二項に規定する医療提供施設をいう。以下同じ。)において診療⼜は調剤に従事する医師若しくは⻭科医師⼜は薬剤師に提供することにより、医療提供施設相互間の業務の連携の推進に努めなければならない。
3 薬局開設者は、医療を受ける者に必要な薬剤及び医薬品の安定的な供給を図るとともに、当該薬局において薬剤師による前項の情報の提供が円滑になされるよう配慮しなければならない。

第九条の三(調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等)
薬局開設者は、医師⼜は⻭科医師から交付された処⽅箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な仕様を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含む。)により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下第三十六条の十までにおいて同じ。)に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
2 薬局開設者は、前項の規定による情報の提供及び指導を行わせるに当たつては、当該薬剤師に、あらかじめ、当該薬剤を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況その他の厚生労働省令で定める事項を確認させなければならない。
3 薬局開設者は、第一項に規定する場合において、同項の規定による情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない。
4 薬局開設者は、医師⼜は⻭科医師から交付された処⽅箋により調剤された薬剤の適正な使用のため、当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けようとする者又は当該薬局開設者から当該薬剤を購入し、若しくは譲り受けた者から相談があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
5 第一項⼜は前項に定める場合のほか、薬局開設者は、医師⼜は⻭科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握させるとともに、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者に対して必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。
6 薬局開設者は、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に第一項又は前二項に規定する情報の提供及び指導を行わせたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該薬剤師にその内容を記録させなければならない。

第三十六条の四(薬局医薬品に関する情報提供及び指導等)
1〜4 略
5 第一項又は前項に定める場合のほか、薬局開設者は、薬局医薬品の適正な使用のため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、その販売し、又は授与した薬局医薬品を購入し、又は譲り受けた者の当該薬局医薬品の使用の状況を継続的かつ的確に把握させるとともに、その薬局医薬品を購入し、又は譲り受けた者に対して必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

8. 改版履歴

2020 年 7 月 17 日 第 1.0 版。

<引用終わり>

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日本薬剤師会が このような手引きを発行するという事はそれだけこの「服用期間中フォロー」を重視しているという事です。
「全国の薬剤師のみんな!薬剤使用期間中のフォローアップしっかりやってくれよ!頼むよ!」と言われたと私は感じました。

なぜならこの「服薬期間中フォロー」は厚生労働省が重視している「調剤後薬剤管理指導加算」や「服薬情報等提供料」に繋がるからです。

新設の加算や、他の加算に絡めて算定を促されている点数は厚生労働省が重視している点数です。

 

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調剤後薬剤管理指導加算【2020新設】
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