「先発医薬品」「後発医薬品」とはまた考え方の異なる「基礎的医薬品」という分類が出来たため変更調剤※についても様々な混乱が生じています。
しかし、大雑把にまとめると現時点(2018年11月時点)では下記のようになります。
考えられる全9パターンの変更調剤※可否(〇,×,△)です。
・先発品から先発品 ✕・・変更調剤できない
・先発品から後発品 ○・・変更調剤できる
・先発品から基礎的 △・・変更調剤できるものは無い(おそらく)
・後発品から先発品 ✕・・変更調剤できない
・後発品から後発品 ○・・変更調剤できる
・後発品から基礎的 ✕・・変更調剤できない
・基礎的から先発品 ✕・・変更調剤できない
・基礎的から後発品 △・・変更調剤できるものもある
・基礎的から基礎的 △・・変更調剤できるものもある
※ 変更調剤・・保険薬局において処方医に事前に確認することなく含量違い又は類似する別剤形の後発医薬品に変更して調剤すること
※「基礎的医薬品ってそもそも何?」という方は、こちらのページを先に読まれることをおすすめします。
以下、上記について具体例を挙げながら、厚生労働省発表資料を引用して情報をまとめてゆきます。
(具体例で出している薬価等あくまでも、2018年11月時点の情報であるという点にご注意下さい。)
先発医薬品からの変更調剤
先発品から先発品へは「✕」変更調剤できない
具体例
シングレア錠10㎎(先発品)から、キプレス錠10㎎(先発品)への変更調剤はできません。
先発品から後発品へ「○」は変更調剤できる
具体例
ニューロタン錠50㎎(先発品)から、ロサルタンカリウム錠50mg「NP」(後発品)への変更調剤はできます。
先発品から基礎的へは「△」変更調剤できるものは無い(おそらく)
具体例は見つけられていません。(というか、恐らく「無い」です。)
既に先発品と後発品が発売されている成分で、後発品の方のみが新たに基礎的医薬品になった場合はこれに該当すると考えられます。
・・が、こんなケースあるのでしょうか。
・・限りなく「✕」に近い「△」というずるい表現を採用します。
変更調剤するためには、薬価が「先発品≧基礎的」となる必要もありますし、おそらくこのようなケースは今後も発生しないと考えられます。
後発医薬品からの変更調剤
後発品から先発品へは「✕」変更できない
具体例
クロピドグレル錠75㎎「SANIK」(後発品)から、プラビックス錠75㎎(先発品)への変更調剤はできません。
後発品から後発品へは「○」変更できる
具体例
アトルバスタチン錠10㎎「杏林」(後発品)から、アトルバスタチン錠10㎎「日医工」(後発品)へは変更調剤できます。
※後発品同志であっても、薬価の安いものから高いものへの変更はできません。
後発品から基礎的へは「✕」変更できない
これを「✕」としたのは、薬価が「後発品<基礎的」になるからです。薬価が高いものへの変更調剤は出来ないからです。
実際、
タリビッド点眼液0.3%の元後発品であるオフロキサシン点眼液0.3%「日医工」はタリビッドとともに基礎的医薬品とされ、薬価はタリビッドは105.40円→105.40円のままだったのですが、オフロキサシン「日医工」は49.10円→105.40円になりました。
タリビッド点眼液0.3%の後発医薬品は「日医工」以外にも、「サワイ」や「テバ」等からも販売されていたのですが、これらは基礎的医薬品にならなかったので、49.10円→45.60円になりました。
45.60円のものを、105.40円のものに『変更調剤』は出来ません。
このように、今現在は同薬価で「後発品A⇔後発品B」と変更できていたとしても、後発品Bが基礎的医薬品になると(元後発品B)基礎的Bの薬価は後発品Aの薬価より高くなりますので、今後は変更調剤は不可となります。
基礎的医薬品からの変更調剤
基礎的から先発品へは「✕」変更できない
これも具体例はありません。
しかし
「先発品への」変更調剤は処方箋に書いてある医薬品が何であれ「できない」です。
(先発を出せるのは、先発名処方or一般名処方の場合のみ)
基礎的から後発品へは「△」変更できるものもある
具体例
ベンザリン錠5㎎(基礎的)から、ニトラゼパム錠5㎎「ツルハラ」(後発品)への変更調剤はできる。
【理由】ベンザリン錠5㎎が基礎的医薬品に指定される以前から、ベンザリン錠5㎎⇒ニトラゼパム錠5㎎「ツルハラ」への変更調剤は認められていたから。
※根拠となる条文は下記
平成30年度 疑義解釈資料の送付について(その4)(平成30年5月25日)より引用
【後発医薬品への変更調剤】
問1 処方箋において変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。(答)基礎的医薬品であって、それらが基礎的医薬品に指定される以前に変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。なお、その際にも「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日付保医発 0305第12号)に引き続き留意すること。
基礎的から基礎的へは「△」変更できるものもある
具体例
セフゾンカプセル100㎎(基礎的)から、セフジニルカプセル100㎎「トーワ」(基礎的)への変更調剤はできる。
【理由】
2016年3月31日まではセフゾンカプセル100㎎(先発品)から、セフジニルカプセル100㎎「トーワ」(後発品)への変更調剤であり、これが認められていたため。
同様の理由で、
リンデロンVG軟膏(基礎的)から、デルモゾールG軟膏(基礎的)への変更調剤もできますね。
※根拠となる条文は下記。
●平成28年度 疑義解釈資料の送付について(その7)(平成28年9月15日)より引用
【後発医薬品への変更調剤】
(問1)処方せんにおいて変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。(答)基礎的医薬品であって、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。なお、その際にも「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日付け保医発0305第12号)に引き続き留意すること。
基礎的外れ医薬品について
既に先発品と後発品が複数販売されている薬剤のうち、先発品と後発品の一部が「基礎的医薬品」に分類変更となった場合、「基礎的医薬品」にならなかった後発医薬品は「基礎的外れ医薬品」となり後発医薬品ではなくなります。
再度「オフロキサシン点眼液0.3%」を例にあげると、下表のうち
『タリビッド点眼液0.3%』『オフロキサシン点眼液0.3%「日医工」』この2つが基礎的医薬品で、『その他』が基礎的外れ医薬品です。
商品名 | H30.4新薬価 | 旧薬価 |
---|---|---|
タリビッド点眼液0.3% | 105.40 | 105.40 |
オフロキサシン点眼液0.3%「日医工」 | 105.40 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「サワイ」 | 45.60 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「SN」 | 45.60 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「杏林」 | 45.60 | 29.50 |
オフロキサシン点眼液0.3%「JG」 | 45.60 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「日新」 | 45.60 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「テバ」 | 45.60 | 49.10 |
オフロキサシン点眼液0.3%「CHOS」 | 45.60 | 49.10 |
オフテクター点眼液0.3% | 45.60 | 60.00 |
オフロキシン点眼液0.3% | 45.60 | 49.10 |
タリフロン点眼液0.3% | 45.60 | 49.10 |
ファルキサシン点眼液0.3% | 45.60 | 29.50 |
マロメール点眼液0.3% | 45.60 | 49.10 |
実際、厚生労働省の『各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報』でも、これらはすべて「空欄」つまり「先発医薬品にも後発医薬品にも分類されない」になっています。
蛇足ですが、
『基礎的から後発品へは「△」変更できるものもある』の章で例にあげた『ニトラゼパム錠5㎎「ツルハラ」』なども、近いうちに後発医薬品から基礎的外れ医薬品に分類が変更されると考えられます。
最後に
当記事は薬剤師個人の現時点での見解を記載しています。
正しくは厚生労働省の発表資料を参考にするか、公的な機関にお尋ね下さい。
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