メトグルコ(メトホルミン)は私の勤務する薬局でも調剤する機会の多い薬剤です。
エクメット配合錠(ビルダグリプチン/メトホルミン)やメタクト配合錠(ピオグリタゾン/メトホルミン)にも配合されたりと、現在の糖尿病治療のベースとなる薬剤の1つです。この記事では、メトグルコ(メトホルミン)の副作用、特に乳酸アシドーシスについてまとめてゆきます。
メトグルコ錠(メトホルミン錠)の基本情報
■効能・効果
2型糖尿病
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
⑴食事療法・運動療法のみ
⑵ 食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用■用法・用量
通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750~1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,250mgまでとする。
通常、10歳以上の小児にはメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日500~1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,000mgまでとする。添付文書より引用
ビグアナイド薬
メトグルコ錠(メトホルミン錠)は、糖尿病治療薬の中でも「ビグアナイド薬」に分類される薬剤です。
一般名 | 商品名 |
---|---|
ブホルミン | ジベトス |
メトホルミン | グリコラン、メトグルコ |
このビグアナイド薬では副作用である「乳酸アシドーシス」について、十分注意を払わないといけません。
〔警告〕
重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあり、死亡に至った例も報告されている。乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には投与しないこと。〔「禁忌」の項参照〕
腎機能障害又は肝機能障害のある患者、高齢者に投与する場合には、定期的に腎機能や肝機能を確認するなど慎重に投与すること。特に75歳以上の高齢者では、本剤投与の適否を慎重に判断すること。〔「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「高齢者への投与」の項参照〕添付文書より引用
禁忌(次の患者には投与しないこと)
⑴ 次に示す状態の患者〔乳酸アシドーシスを起こしやすい。〕
1)乳酸アシドーシスの既往
2)中等度以上の腎機能障害〔腎臓における本剤の排泄が減少する。「重要な基本的注意」の項参
照〕
3)透析患者(腹膜透析を含む)〔高い血中濃度が持続するおそれがある。〕
4)重度の肝機能障害〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。「重要な基本的注意」の項参照〕
5) ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等心血管系、肺機能に高度の障害のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態〔乳酸産生が増加する。〕
6)過度のアルコール摂取者〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。〕
7)脱水症、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者添付文書より引用
乳酸アシドーシスとは
乳酸アシドーシスとは「血中に乳酸が増加した状態」のことを言います。
血中に乳酸が増えると何がいけないの?
血中に乳酸が増えると血液が酸性になります。(血液が酸性になった状態=アシドーシス)
そうなると、中枢神経や消化器が障害されてしまう為、症状が出てしまいます。
乳酸アシドーシス | 症状 |
---|---|
中枢神経の症状 | 初期症状は「眠気、めまい、倦怠感等」ですが、進行すると「意識障害、昏睡(倒れる)、過呼吸」等の症状がおこります。 |
消化器の症状 | 食欲不振、吐き気・嘔吐、腹痛など |
その他 | 筋肉痛など |
特に注意が必要な人は?
添付文書の「禁忌」の項目にも書いてある通り、乳酸アシドーシスの起こりやすい患者や要因等は、高齢者(特に75歳以上)、腎機能低下患者、心血管疾患、肺疾患、肝機能障害、過度の飲酒、脱水(利尿薬併用患者)等です。
こういった患者さんに処方されていないか、十分に注意を払うのが我々薬剤師の重要な役割です。
他のビグアナイド薬との違い
上記で「乳酸アシドーシス」について取り上げましたが、実はメトホルミンは水溶性である為、他の脂溶性のビグアナイド薬と比べて乳酸アシドーシスが起こりにくい薬剤です。
しかし、それでも「乳酸アシドーシス」を起こしやすい患者に使用された場合に副作用は実際に起こっていますので、我々薬剤師がそれを食い止めたい所です。
メトグルコ(メトホルミン)の副作用
メトグルコに多い副作用は「下痢」や「吐き気」などの消化器症状です。しかも、これら消化器症状の副作用は投与初期や増量時の一過性による場合が多いですので、
服薬指導としては「消化器症状が出ても、勝手に服薬を中止せず、薬剤師や医師に相談してください。」と説明するのも良いでしょう。
そして、相談を受けた場合は、消化器症状は「乳酸アシドーシスの初期症状」でもありますので、「筋肉痛」や「眠気」や「倦怠感」等出ていないかを聞き取り、乳酸アシドーシスの可能性を常に考えないといけません。
併用薬がある場合の注意点
他の糖尿病治療薬との併用
併用があった場合は当然、低血糖により注意しないといけません。SU薬や、インスリン注との併用で、低血糖症状がより起こりやすいことが報告されています。
「異常な空腹感、動悸・震えなどの低血糖の症状が出れば、すぐに医師・薬剤師に連絡するように」と指導しておきたいです。
SGLT2阻害薬との併用
SGLT2阻害薬は、体内の糖を尿の中に出して排出するという薬剤であるため、尿量は増えるので脱水に注意が必要です。
「脱水」は乳酸アシドーシスを起こす危険因子でもありますので、メトグルコ(メトホルミン)とSGLT2阻害薬を併用する患者さんには「脱水による乳酸アシドーシス」の予防に十分注意した服薬指導が必要です。
SGLT2阻害薬 一般名 | SGLT2阻害薬 商品名 |
---|---|
イプラグリフロジン | スーグラ |
トホグリフロジン | アプルウェイ、デベルザ |
ダパグリフロジン | フォシーガ |
ルセオグリフロジン | ルセフィ |
カナグリフロジン | カナグル |
エンパグリフロジン | ジャディアンス |
利尿薬との併用
「利尿薬→脱水に注意」という考えは思い浮かびやすいですが、「降圧薬/利尿薬の配合剤」とメトグルコ(メトホルミン)の併用でも「脱水に注意」という事を考え、注意点を伝えるのも薬剤師の重要な役割です。
プレミネント配合錠(降圧薬)とエクメット配合錠(糖尿病治療薬)といった合剤どうしの併用であっても、それぞれに配合されている「利尿薬」と「メトグルコ(メトホルミン)」の組み合わせから、乳酸アシドーシスの危険性を考える というのが薬剤師に求められる重要な役割です。
最後に
当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。当サイトの情報は「参考程度」に留めておいてください。当サイトでは、取り上げた情報により生じた健康被害等の責任は一切負いません。
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