バリキサ錠は腎機能に応じた用量調整が必要な抗ウイルス薬。高齢者の腎機能低下には要注意が必要。

ヒヤリ・ハット事例収集

薬剤師が患者の検査値を把握し、腎機能を推測し処方提案したことで、適切な用量へと変更になったケースです。

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例「2018年No.4事例4」に載っておりますが、こちらでも共有させていただきます。

処方医が患者の腎機能が徐々に低下していることを見落としていた可能性がある中で,薬局薬剤師が,その職能を発揮した事例です.


事例

【事例の内容】
70歳代の患者に、バリキサ錠450mg 4錠分2が処方された。患者の身長、体重、クレアチニン値から算出したクレアチニンクリアランスが36.4mL/minであったため、薬剤性腎障害診療ガイドライン2016に基づき、バリキサ錠450mgの減量を提案した。バリキサ錠450mg 2錠分2へ減量となった。

【背景・要因】
処方医が、患者の腎機能が徐々に低下していることを見落としていたと考える。

【薬局が考えた改善策】
今後も薬局にて検査値の確認を徹底し、腎機能の評価を行う。

 

事例のポイント

●薬剤師が患者の腎機能を把握し、薬剤性腎障害診療ガイドライン2016に基づき処方医に減量を提案した事例である。

●患者の検査値や服薬情報に基づいた処方提案を行うなど、処方医と連携しながら薬物療法の有効性・安全性の向上に貢献することは薬剤師の重要な役割である。

 

薬剤性腎障害診療ガイドライン2016を確認

※外部サイトのpdfファイルへのリンクです

 

バリキサ錠の基本情報を確認

バリキサ錠は、抗サイトメガロウイルス化学療法剤です。
サイトメガロウイルスには通常誰もが、幼少期に感染し、そのまま不顕性感染の状態で潜伏感染しています。
何らかの原因で,免疫力が低下してしまい、再感染や再活性化してしまった際に使われる薬剤です。

※非常に高価な薬剤です。

バリキサ錠の効能効果

※バリキサ錠の添付文書より引用
【効能・効果】
下記におけるサイトメガロウイルス感染症
・後天性免疫不全症候群
・臓器移植(造血幹細胞移植も含む)
・悪性腫瘍
臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガ
ロウイルス感染症の発症抑制

後天性免疫不全症候群=AIDS

バリキサ錠の警告

※バリキサ錠の添付文書より引用
【警告】

1)本剤及び本剤の活性代謝物であるガンシクロビルの投与により、重篤な白血球減少、好中球減少、貧血、血小板減少、汎血球減少、再生不良性貧血及び骨髄抑制があらわれるので、頻回に血液学的検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。

2)本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験において、一時的又は不可逆的な精子形成機能障害を起こすこと及び妊孕性低下が報告されていること、また、ヒトにおいて精子形成機能障害を起こすおそれがあることを患者に説明し慎重に投与すること〔「重要な基本的注意」の項 8 )参照〕。

3)本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験において、催奇形性、遺伝毒性及び発がん性のあることが報告されているので、本剤も同様の作用があると考えられることを患者に説明し慎重に投与すること〔「重要な基本的注意」の項 8 )参照〕。

バリキサ錠の禁忌

バリキサ錠の添付文書より引用
【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
1)好中球数500/mm3未満又は血小板数25,000/mm3未満等、著しい骨髄抑制が認められる患者〔本剤の投与により重篤な好中球減少及び血小板減少が認められている。〕

2)バルガンシクロビル、ガンシクロビル又は本剤の成分、バルガンシクロビル、ガンシクロビルと化学構造が類似する化合物(アシクロビル、バラシクロビル等)に対する過敏症の既往歴のある患者

3)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人〔本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物実験において、催奇形性が認められている。〕

バリキサ錠の用法・用量

バリキサ錠の添付文書より引用
【用法・用量】
サイトメガロウイルス感染症の場合
<初期治療>
通常、成人にはバルガンシクロビルとして 1 回900mgを1 日 2 回、食後に経口投与する。
<維持治療>
通常、成人にはバルガンシクロビルとして 1 回900mgを1 日 1 回、食後に経口投与する。

臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制の場合
通常、成人にはバルガンシクロビルとして 1 回900mgを1 日 1 回、食後に経口投与する。
通常、小児にはバルガンシクロビルとして次式により算出した投与量を 1 日 1 回、食後に経口投与する。ただし、1 日用量として900mgを超えないこと。推定糸球体ろ過
量が150より高値の場合は150を用いること。
投与量(mg)=7×体表面積(㎡)×推定糸球体ろ過量(mL/min/1.73㎡)

バリキサ錠の添付文書より引用
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1)全効能共通
(1)過量投与にならないよう定められた投与量を投与すること(「過量投与」の項参照)。

(2)本剤投与中、好中球減少(500/m㎥未満)、血小板減少
(25,000/m㎥未満)又はヘモグロビン減少( 8 g/dL未満)等、著しい骨髄抑制が認められた場合は、骨髄機能が回復するまで休薬すること。これより軽度の好中球減少
(500~ 1,000/m㎥)及び血小板減少(25,000~50,000/m㎥)の場合は減量すること。

(3)本剤は食後に投与すること。外国において、本剤を食後に投与した場合、ガンシクロビルの平均AUC0-24hが約30%、平均Cmaxが約14%上昇したとの報告がある。

(4)腎障害のある患者、腎機能の低下している患者では、消失半減期が延長されるので、血清クレアチニン及びクレアチニンクリアランスに注意し、本剤の投与量を調整すること。参考までに成人における外国での標準的な本剤の減量の目安を下表に示す。

クレアチニンクリアランス(ml/min)バリキサ錠450㎎の用法・用量
初期治療維持治療,発症抑制
≧601回900㎎を1日2回1回900㎎を1日1回
40~591回450㎎を1日2回1回450㎎を1日1回
25~391回450㎎を1日1回1回450㎎を1日おき(2日に1回)
10~241回450㎎を1日おき(2日に1回)1回450㎎を週2回

※ヒヤリ・ハット事例より引用
患者の身長、体重、クレアチニン値から算出したクレアチニンクリアランスが36.4mL/minであったため、薬剤性腎障害診療ガイドライン2016に基づき、バリキサ錠450mgの減量を提案した。バリキサ錠450mg 2錠分2へ減量となった。

添付文書の【目安】の表では、クレアチニンクリアランスが36.4mL/minなら更に少ない量が投与量の【目安】となっていますね。

腎機能に応じた用量調整が必要な薬剤です。


最後に

当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
掲載する情報は、私が薬剤師として自身を持って「正しい」と言える情報だけに限定しています。しかし、日進月歩の医療の世界において、今正しいとされている情報が、未来もずっと正しいとは限りません。そういった理由から、このサイトでも間違った情報を伝えてしまう可能性があります。
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