ザルティア錠(一般名:タダラフィル)は、前立腺肥大症に伴う排尿障害に使われる薬剤ですが、
硝酸薬等(ニトログリセリン等)との併用による過度な降圧や
心筋梗塞等の重篤な心血管系等の有害事象も報告されており、注意が必要な薬剤です。
添付文書より基本情報を引用
警告は下記の通りです。
【警告】
1. 本剤と硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)との併用により降圧作用が増強し、過度に血圧を下降させることがあるので、本剤投与の前に、硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されていないことを十分確認し、本剤投与中及び投与後においても硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されないよう十分注意すること。
[「禁忌」の項参照]2. 死亡例を含む心筋梗塞等の重篤な心血管系等の有害事象が報告されているので、本剤投与の前に、心血管系障害の有無等を十分確認すること。
[「禁忌」の項及び「副作用」の項参照]
禁忌も少なくはありません。注意が必要です。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2. 硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)を投与中の患者[「相互作用」の項参照]
3. 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤(リオシグアト)を投与中の患者[「相互作用」の項参照]
4. 次に掲げる心血管系障害を有する患者[「その他の注意」の項参照。また、これらの患者に対する使用経験がない。]
(1) 不安定狭心症のある患者
(2) 心不全(NYHA分類Ⅲ度以上)のある患者
(3) コントロール不良の不整脈、低血圧(血圧<90/50mmHg)又はコントロール不良の高血圧(安静時血圧>170/100mmHg)のある患者
(4) 心筋梗塞の既往歴が最近3ヵ月以内にある患者
(5) 脳梗塞・脳出血の既往歴が最近6ヵ月以内にある患者5. 重度の腎障害のある患者[重度の腎障害のある患者では本剤の血漿中濃度が上昇すること及び使用経験が限られているため。(「薬物動態」の項参照)]
6. 重度の肝障害のある患者[重度の肝障害のある患者における使用経験がないため。]
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 からの引用
ザルティア錠に関しての『ヒヤリ・ハット事例』がありましたので、情報を引用させていただきます。
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例,2018年No.6 事例3から引用しています。
事例
【事例の内容】
患者は、10年程前に循環器内科を受診し、ニトロペン舌下錠0.3mgが処方されたが、発作が出なかったため廃棄していた。4年前に患者が当薬局に初めて来局した際、泌尿器科からザルティア錠が処方された。
お薬手帳にはニトロペン舌下錠0.3mgの記載はなく、患者からも「心臓の薬は飲んでいない」と聞き取った。
その後も処方が継続され、ザルティア錠を交付する際には毎回併用薬を確認し、併用薬に関する注意点等が記載された印刷物「ザルティア錠を服用される方へ」も渡していた。今回、ザルティア錠の処方箋と一緒に、循環器内科からニトロペン舌下錠0.3mgの処方箋を受け付けた。
この時に初めて患者から、10年程前にもニトロペン舌下錠0.3mgが処方されたことを聞いた。
泌尿器科の処方医に疑義照会し、患者に泌尿器科を再受診してもらった結果、ザルティア錠が処方削除となった。
【背景・要因】
初めてザルティア錠の処方箋を受け付けた時は、硝酸剤との併用について丁寧に説明を行ったつもりであるが、何年も継続して処方されていたため、その後は交付時に説明書を渡すのみであった。患者が併用禁忌の薬剤についてはよく理解できていると思い込んでいた。
【薬局が考えた改善策】
継続して同じ薬剤を服用している患者に対しても、併用薬を確認し、併用禁忌の薬剤について説明を行うことが大切だとわかった。
事例のポイント
●患者の服用歴をすべて確認するには、お薬手帳だけでは不十分なことがある。また、患者から既往歴や現病歴を正確に聞き出すことも難しいことである。
●患者から病名について情報を収集する際は、具体的な症状を例に挙げて確認するなど、聴き方を工夫することも必要である。
「ニトロペン舌下錠という薬を処方された事はないですか?」 では、思い出せない患者さんでも
「心臓が痛く感じた時に舌の下で溶かす薬を処方された事はないですか?」 と聞くと思い出してくれるかもしれません。
●薬剤の患者説明用ツールを利用する際は、ただ渡すだけではなく、患者と一緒に重要事項を確認したり、成分名を販売名に置き換えて説明したりして、患者にとってわかりやすい説明を心掛けたい。
ザルティア錠の併用禁忌薬
ザルティア錠の併用禁忌薬を確認しておきます。
一般名 | 代表的な 商品名 | 簡易説明 |
---|---|---|
ニトログリセリン | ニトロペン舌下錠 ミオコールスプレー | 狭心症用舌下錠 |
亜硝酸アミル | 亜硝酸アミル「第一三共」 | 狭心症治療薬 |
硝酸イソソルビド | ニトロール錠 | 虚血性心疾患治療剤 |
(一硝酸イソソルビド) | (アイトロール錠) | 狭心症治療剤 |
リオシグアト | アデムパス | 肺高血圧症治療薬 |
最後に
当サイトはあくまでも一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
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