サインバルタカプセルとエフピーOD錠は併用禁忌(一緒に使ってはいけない組み合わせ)の薬剤である

ヒヤリ・ハット事例収集

医師もコンピューターも見落としてしまった併用禁忌(一緒に使ってはいけない)に
薬局薬剤師が気づき、患者さんに健康被害が起こるのを未然に防く事ができたケースです。

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例に載っております。
こちらでも共有させていただきます。

薬局薬剤師が,その職能を発揮した事例です。


薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 からの引用

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例,2018年No.5 事例4からの引用です。

事例

【事例の内容】
整形外科の医師が患者にサインバルタカプセル20mgを処方した。患者はパーキンソン病を患っており、他院で処方されたエフピーOD錠2.5を服薬していた。薬局でレセコンに処方入力した際に併用禁忌のエラーは出なかったが、交付直前に併用禁忌に気付き疑義照会したところ、サインバルタカプセル20mgが削除となった。

【背景・要因】
患者が薬局を1箇所に決めていたため、当薬局では併用薬を把握していた。患者は整形外科の医師にお薬手帳を見せたが、併用禁忌の薬剤が処方された。

医師もコンピューターも併用禁忌(一緒に使ってはいけない組み合わせ)を見落としてしまう事はある。
しかし、薬剤師が職能を発揮し、それを未然に防く事ができたケースです。

【薬局が考えた改善策】
常に最新の患者情報に更新する。新しく薬剤が処方された際は、薬剤を交付する前に添付文書を確認する

 

事例のポイント

●薬剤の相互作用による併用禁忌や併用注意の確認は、同一処方内の薬剤だけではなく、併用薬も含めた確認が必須である。

●処方監査においてシステムを活用することは大変有効であるが、システムだけを過信することなく、添付文書を確認するなど丁寧な監査を行うことが重要である。

「システムを活用することは大変有効であるが」「システムだけを過信することなく」
これ、めちゃくちゃ大事ですね。薬局にも機械化,IT化の動きは多いにあります。
今後、処方監査システムにて安全が保たれることは数多く出てくるでしょうが、しかし人間がシステムを過信してしまったが故の新たな事例が出てしまうことが予測されます。
・「システムを活用することは大変有効であるが」
・「システムだけを過信することなく」
もう一度言いますが、これめちゃくちゃ大事ですね。

以下,上記に出てきた薬剤の情報等を確認しておきます。

サインバルタ カプセルの基本情報

整形外科の医師が患者にサインバルタカプセル20mgを処方した。

サインバルタの効能効果

サインバルタは、
・うつ病,うつ状態
・「糖尿病性神経障害,繊維筋痛症,慢性腰痛症,変形性関節症」に伴う疼痛
に使われる薬剤です。

※サインバルタの添付文書より引用
【効能・効果】
○ うつ病・うつ状態
○ 下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害
線維筋痛症
慢性腰痛症
変形性関節症

 

サインバルタの禁忌

サインバルタは、
・MAO阻害薬であるエフピー(般:セレギリン),アジレクト(般:ラサギリン)との併用
・高度肝機能障害のある方
・高度腎機能障害のある方
・コントロール不良の閉塞隅角緑内障のある方
には使えません。

※サインバルタの添付文書より引用
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤(セレギリン塩酸塩,ラサギリンメシル酸塩)を投与中あるいは投与中止後 2 週間以内の患者[「相互作用」の項参照]
3.高度の肝障害のある患者[肝障害が悪化することがある。また,消失半減期が延長し,本剤の血中濃度が上昇することがある。(「薬物動態」の項参照)]
4.高度の腎障害のある患者[本剤の血中濃度が上昇することがある。(「薬物動態」の項参照)]
5.コントロール不良の閉塞隅角緑内障の患者[症状が悪化することがある。]

 

サインバルタとMAO阻害薬が併用できない理由

併用により発汗,不穏,全身痙攣,異常高熱,昏睡等が起こる可能性があるから。

・MAO阻害薬をやめてサインバルタを服用するのはOK
ただし、MAO阻害薬を中止してから、2週間以上あけてからサインバルタを開始する。

・サインバルタをやめて,MAO阻害薬を服用するのはOK
ただし、サインバルタ中止後、5日間以上あけてからMAO阻害薬を開始する。

※サインバルタの添付文書(併用禁忌)より引用
薬剤名等

モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
・セレギリン塩酸塩(エフピー)
・ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)

臨床症状・措置方法
他の抗うつ剤で併用により発汗,不穏,全身痙攣,異常高熱,昏睡等の症状があらわれたとの報告がある。
MAO 阻害剤の投与を受けた患者に本剤を投与する場合には,少なくとも 2 週間の間隔をおき,また,本剤から MAO 阻害剤に切り替えるときは 5 日間の間隔をおくこと。

機序・危険因子
主に MAO 阻害剤による神経外アミン総量の増加及び抗うつ剤によるモノアミン作動性神経終末におけるアミン再取り込み阻害によると考えられる。

・ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)って何の薬?

アジレクトは,パーキンソン病治療薬です。

※アジレクトの添付文書より引用
【効能・効果】パーキンソン病

 

・セレギリン塩酸塩(エフピー)

エフピーOD錠2.5㎎は,パーキンソン病治療薬です。

※エフピーOD錠2.5㎎の添付文書より引用
〔効能・効果〕
パーキンソン病(レボドパ含有製剤を併用する場合:Yahr 重症度ステージⅠ~Ⅳ、レボドパ含有製剤を併用しない場合:Yahr 重症度ステージⅠ~Ⅲ)

 

ここからは、エフピーOD錠の基本情報をみてゆきましょう。

エフピー OD錠 の基本情報

患者はパーキンソン病を患っており、他院で処方されたエフピーOD錠2.5を服薬していた。

エフピーの警告

・三環系抗うつ剤と併用してはいけない
・1日10㎎(4錠)を超えてはいけない

〔警告〕
1.本剤と三環系抗うつ剤(アミトリプチリン塩酸塩等)との併用はしないこと。また、本剤の投与を中止してから三環系抗うつ剤の投与を開始するには少なくとも14日間の間隔を置くこと。(「相互作用」の項参照)
2.本剤は用量の増加とともにMAO-Bの選択的阻害効果が低下し、非選択的MAO阻害による危険性があり、また更なる効果が認められないため、 1 日10㎎を超える用量を投与しないこと。(「過量投与」の項参照)

 

エフピーの禁忌

エフピーOD錠は禁忌,相互作用の多い薬です。
確認してゆきましょう。

〔禁忌(次の患者には投与しないこと)〕
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.ペチジン塩酸塩、トラマドール塩酸塩又はタペンタドール塩酸塩を投与中の患者[高度の興奮、精神錯乱等の発現が報告されている。]
3.非選択的モノアミン酸化酵素阻害剤(サフラジン塩酸塩)を投与中の患者[高度の起立性低血圧の発現が報告されている。]
4.統合失調症又はその既往歴のある患者[精神症状の悪化が報告されている。]
5.覚せい剤、コカイン等の中枢興奮薬の依存又はその既往歴のある患者
6.三環系抗うつ剤(アミトリプチリン塩酸塩等)を投与中あるいは中止後14日間の患者(「相互作用」の項参照)
7.選択的セロトニン再取り込み阻害剤(フルボキサミンマレイン酸塩等)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(ミルナシプラン塩酸塩等)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(アトモキセチン塩酸塩)又はノルアドレナン・セロトニン作動性抗うつ剤(ミルタザピン)を投与中の患者(「相互作用」の項参照)

エフピーOD錠の併用禁忌薬一覧(2015年12月改訂の添付文書を参照して作成)

一般名(略)(代表的)商品名簡易説明
ペチジンオピスタン鎮痛薬(麻薬)
トラマドールトラマール,(トラゼンタ)慢性疼痛治療薬
タペンタドールタペンタ癌疼痛治療薬
サフラジン塩酸塩
アミトリプチリントリプタノール抗うつ薬
フルボキサミンマレイン酸塩ルボックス,デプロメール抗うつ薬
パロキセチンパキシル抗うつ薬
セルトラリンジェイゾロフト抗うつ薬
エスシタロプラムシュウ酸塩レクサプロ抗うつ薬
ミルナシプラントレドミン抗うつ薬
デュロキセチンサインバルタ抗うつ薬,疼痛治療薬
ベンラファキシンイフェクサー抗うつ薬
アトモキセチンストラテラ注意欠陥/多動性障害治療薬
ミルタザピンレメロン,リフレックス抗うつ薬

エフピーOD錠は禁忌,相互作用の多い薬です。
新しい処方薬が出た際に相互作用を確認するのは、もちろんの事、定期的に「併用薬に注意すべき薬剤である事」を伝え、他で併用薬をもらっていないか確認するようにしないといけません。


関連記事

 最後に

当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
掲載する情報は、私が薬剤師として自身を持って「正しい」と言える情報だけに限定しています。しかし、日進月歩の医療の世界において、今正しいとされている情報が、未来もずっと正しいとは限りません。そういった理由から、このサイトでも間違った情報を伝えてしまう可能性があります。
当サイトの情報は「参考程度」に留めておいてください。当サイトの情報よりも、医師または薬剤師から直接指導を受けた内容を優先してください。
当サイトでは、取り上げた情報により生じた健康被害等の責任は一切負いません。

他にも色々と書いています

コメント