オランザピン錠は著しい血糖値の上昇を引き起こす可能性があり注意が必要な薬剤

ヒヤリ・ハット事例収集

薬局の薬剤師が、患者から「併用薬が変更になった」と聞き取ったことで、
患者に起こっているであろう「副作用」を防いだ
と考えられる事例が、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例に載っております。
こちらでも共有させていただきます。

薬局薬剤師が,その職能を発揮した事例です。

※薬剤師筆者自身の知識の整理として書いています。オランザピン錠(ジプレキサ錠)を服用中の患者さまが読まれる場合、当サイトの情報よりも、医師または薬剤師から直接指導を受けた内容を優先してください。


薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 からの引用

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業,共有すべき事例,2018年No.5 事例2からの引用です。

事例

【事例の内容】
患者が継続服用しているオランザピン錠2.5mg「ファイザー」が処方された。
患者から併用薬が変更になったと聞き薬剤を確認したところ、内科からトラゼンタ錠5mgが処方されていた。
最近、血糖値が上がったためであった。
処方医の心療内科医師に疑義照会したところ、オランザピン錠2.5mg「ファイザー」からリスペリドン錠1「MEEK」へ薬剤が変更になった。
オランザピン錠2.5mg「ファイザー」の服薬中止による血糖値への影響が考えられたため、患者には低血糖の症状に注意するよう説明した。

『最近血糖値が上がったため、内科からトラゼンタ錠5mgが処方された』と患者から聞き取った事から、オランザピン錠による副作用を予測することができました。
やはり、薬剤師は「こちらから話(説明)をする」だけではなく「患者さんから話を聞く」のが大事ですね。

【背景・要因】
患者がお薬手帳を提示しなかったため、内科医はオランザピン錠を服用していることを知らなかった。

【薬局が考えた改善策】
内科医へお薬手帳を提示し、心療内科の処方内容を確認してもらうよう患者に指導した。

 

事例のポイント

●オランザピン錠の服用による血糖値の上昇が疑われる事例である。

オランザピン錠は著しい血糖値の上昇を引き起こす可能性のある薬剤であることから、処方された際には、あらかじめ患者および家族に血糖値が上昇する副作用が発現する場合があることを説明し、副作用の具体的な初期症状や実際に症状があらわれた場合の対応について十分に説明することが重要である。

●他の診療科を受診する際は、適切な治療が行われるためにも患者自身が医師に服用中の薬剤を伝えることが大切である。

●情報を共有するために有効なツールとなるお薬手帳を、薬剤師だけではなく医師や患者自身も積極的に活用することが望ましく、薬剤師にはそのための対策が期待される。

 

以下,上記に出てきた薬剤の情報を確認しておきます。

オランザピン錠の情報

ジプレキサ錠(一般名:ジプレキサ錠)の添付文書より情報を引用します。

※ジプレキサ錠の添付文書より引用
【警告】

1. 著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。

2. 投与にあたっては、あらかじめ上記副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明し、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう、指導すること。[「重要な基本的注意」の項参照

「重要な基本的注意」の項参照 とあるので、確認します。

※ジプレキサ錠の添付文書より引用
2. 重要な基本的注意
(1) 本剤の投与により、著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の致命的な経過をたどることがあるので、本剤投与中は、血糖値の測定や口渇、多飲、多尿、頻尿等の観察を十分に行うこと。特に、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者では、血糖値が上昇し、代謝状態を急激に悪化させるおそれがある

(2) 低血糖があらわれることがあるので、本剤投与中は、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意するとともに、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。

(3) 本剤の投与に際し、あらかじめ上記(1)及び(2)の副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう、指導すること。

服薬指導の際は『この薬を飲むと高血糖を起こすことがあります。注意してくださいね。』よりも
『口渇、多飲、多尿、頻尿などが起こったら、この薬の副作用である高血糖の可能性があります。覚えておいてください』等の方が良いでしょう。

そして、必要に応じて
口渇⇒のどが渇く
多飲⇒水分をたくさんとってしまう
多尿⇒おしっこがよく出る
頻尿⇒おしっこに行く回数が多い
等、より平易な表現に変えて話が出来たらなお良いですね。

省略しますが、『低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)』もそうですね。

ジプレキサ錠(オランザピン錠)の禁忌も確認しておきましょう。

※ジプレキサ錠の添付文書より引用
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】※
1. 昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある。]
2. バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強される。]
3. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
4. アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)[「相互作用」の項参照]
5. 糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

ジプレキサ錠(オランザピン錠)は、『糖尿病の患者』、『糖尿病の既往歴のある患者』には禁忌(使ってはいけない)となっています。

 

オランザピン(ジプレキサ)って何の薬?

ジプレキサ錠は、「統合失調症」や「うつ病」「躁うつ病」,「抗ガン剤用の吐き気止め」として使われる薬剤です。

※ジプレキサ錠の添付文書より引用
【効能・効果】
統合失調症
双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)

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抗精神病薬一覧を確認

※事例より引用
処方医の心療内科医師に疑義照会したところ、オランザピン錠2.5mg「ファイザー」からリスペリドン錠1「MEEK」へ薬剤が変更になった。

オランザピン錠や、リスペリドン錠は「抗精神病薬」として使用される事が多い薬剤です。

抗精神病薬の一覧を確認しておきます。

※表は,治療薬マニュアル(医学書院)等を参照して作成

非定型抗精神病薬

分類一般名(略)商品名(代表的な)特徴
セロトニン・ドパミン拮抗薬リスペリドンリスパダール・統合失調症の第一選択薬として使用されることが多い
・クロザリルは治療抵抗性,つまり他の統合失調症治療薬で効果が得られない時のみ使用。
パリペリドンインヴェガ
ペロスピロンルーラン
ブロナンセリンロナセン
クロザピンと類似化合物クロザピンクロザリル
オランザピンジプレキサ
クエチアピンセロクエル
ドパミン受容体アゴニストアリピプラゾールエビリファイ

定型抗精神病薬

分類一般名(略)商品名(代表的な)特徴
高力価群
ブチロフェノン誘導体
ハロペリドールセレネース・急性期の治療によく使われる
・鎮静,循環器系の副作用は少ない
・副作用としてパーキンソン病様症状が起こることがある
スピペロンスピロピタン
チミペロントロペロン
高力価群
フェノチアジン誘導体
フルフェナジンフルメジン
ペルフェナジントリラホン
ピーゼットシー
プロクロルペラジンノバミン
高力価群
ベンザミド誘導体
ネモナプリドエミレース
低力価群
フェノチアジン誘導体
クロルプロマジンウインタミン
コントミン
・強い鎮静作用,強い催眠作用がある
・パーキンソン病様症状の副作用は少なめ
・催眠作用を期待して処方されることもある
レボメプロマジンヒルナミン
レボトミン
低力価群
ブチロフェノン誘導体
ピパンペロンプロピタン
中間・異型群プロぺリシアジンニューレプチル・「高力価群」と「低力価群」の中間的な特徴がある
・高齢者や、回復期の維持療法によく使われる印象
※スルピリド,ゾテピンは、非定型抗精神病薬に分類されることもアリ
ゾテピンロドピン
クロカプラミンクロフェクトン
モサプラミンクレミン
ブロムペリドールインプロメン
ピモジドオーラップ
オキシペルチンホーリット
スルピリドドグマチール
スルトプリドバルネチール



 最後に

当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
掲載する情報は、私が薬剤師として自身を持って「正しい」と言える情報だけに限定しています。しかし、日進月歩の医療の世界において、今正しいとされている情報が、未来もずっと正しいとは限りません。そういった理由から、このサイトでも間違った情報を伝えてしまう可能性があります。
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