高齢者において注意すべき糖尿病薬一覧

薬・治療・病態 各論

DPP-4阻害薬以外のすべての糖尿病治療内服薬に、高齢者において注意すべき点があります。
分類ごとに、その注意点を確認してゆきます。

SU薬

【主な副作用・理由】低血糖とそれが遷延するリスク

【推奨される使用法】可能であれば使用を控える。代替薬としてDPP-4阻害薬を考慮

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:中
推奨度:強

一般名 先発・代表薬
アセトヘキサミド ジメリン
クロルプロパミド クロルプロパミド
グリベンクラミド オイグルコン,ダオニール
グリクラジド グリミクロン
グリメピリド アマリール

特に アセトヘキサミド,クロルプロパミド,グリベンクラミドの高齢者への投与は避けるべきで、
その他SU薬であっても、使用する際は(グリメピリド錠0.5㎎/日 から開始するなど)少量から開始することが望ましい。

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ビグアナイド薬

【主な副作用・理由】低血糖、乳酸アシドーシス、下痢

【推奨される使用法】可能であれば使用を控える。高齢者に対して、メトホルミン以外は禁忌

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:低
推奨度:弱

一般名 先発・代表薬
メトホルミン塩酸塩 メトグルコ
メトホルミン塩酸塩 グリコラン
ブホルミン塩酸塩 ジベトス,ジベトンS

メトホルミンは、高齢者には慎重投与となっている。これは加齢とともに腎機能が低下することに伴い、乳酸アシドーシスの危険性が伴ってくる等の理由からである。

チアゾリジン薬

【主な副作用・理由】骨粗鬆症・骨折(女性),心不全

【推奨される使用法】心不全患者,心不全既往者には使用しない。高齢者では、少量から開始し、慎重に投与する。

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:高
推奨度:強

一般名 先発・代表薬
ピオグリタゾン アクトス

ピオグリタゾンは、体液貯留や 骨密度低下の副作用があるので、
心不全患者には禁忌
高齢者に投与する際は少量から慎重に。

α-グルコシダーゼ阻害薬

【主な副作用・理由】下痢,便秘,放屁,腹満感

【推奨される使用法】腸閉塞などの重篤な副作用に注意する

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:低
推奨度:強

一般名 先発・代表薬
ボグリボース ベイスン
ミグリトール セイブル

SGLT2阻害薬

【主な副作用・理由】重症低血糖,脱水,尿路・性器感染症のリスク

【推奨される使用法】可能な限り使用せず、使用する場合は慎重に投与する

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:低
推奨度:強

一般名 先発・代表薬
イプラグリフロジン スーグラ
ダパグリフロジン フォシーガ
ルセオグリフロジン ルセフィ
トホグリフロジン デベルザ,アプルウェイ
カナグリフロジン カナグル
エンパグリフロジン ジャディアンス

スライディングスケールによるインスリン投与

【主な副作用・理由】低血糖のリスクが高い

【推奨される使用法】高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える

【エビデンスの質と推奨度】
エビデンスの質:中
推奨度:強



高齢者にとって好ましくない処方が見つかった場合は

高齢者にとって安全性の高い薬剤を提案することや、必要性と優先順位を吟味する、やみくもに対症療法を続けていないか、エビデンスは妥当かなどを再考することは、薬剤師の役割です。

 

参考・情報を引用した資料
「日本老年医学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
高齢者のポリファーマシー多剤併用を整理する知恵とコツ」

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最後に

当ページは筆者自身の知識の整理のために作成しました。
実際の治療はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。
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