驚きの数字が。「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査 報告書」

厚生労働省発表資料
かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査 報告書(平成31年3月-厚生労働省)を改めて読んで、気になったデータ等を拾い上げてゆきます。 ※元データは厚生労働省のこちらのPDFファイルです。

在宅業務を実施している薬局は全体の55%

在宅業務について 2025年までに全ての薬局が備えておくべき機能として位置づけられるなど、全ての薬剤師・薬局における本来業務として早急に体制を整え実施すべきものと言えるが、調査の結果、実施している薬局は全体の55.0%であり、昨年度との実施薬局数の比較では1.0ポイント増に留まり他のKPIと比較しても増加が少なかった。

どのような きっかけ で在宅業務を始めているのか

医師以外からの依頼があって始めるケースが半数以上。
また、薬局が在宅業務を行ったきっかけとして、介護支援専門員や看護師など、医師以外の職種からの要望を受けたとの回答が57.4%と相応に多かった。
具体的にどの職種から要望を受けたかについて本調査の設計上分からなかったが、訪問看護職や介護職が現場で困って薬局に相談するケースが多いと考えられる。
これら複数職種からの連絡窓口を地域薬剤師会が担い、患者の要望を踏まえ地域包括支援センターと連携した上で近隣の薬局を紹介する活動も実績が増えつつあり有用である。

かかりつけ薬局に行く のは52.2%

52.2%が、かかりつけ薬局に行く
34.1%が、処方元のすぐ近くの薬局へ行く。 かかりつけ薬剤師について「よく知っている」患者は、33.1%だけ。
かかりつけ薬剤師・薬局の患者への浸透度合について
・ 処方箋を持って訪れる薬局の選定方針として、「どこの病院・診療所を受診しても、特定の1つの薬局に処方箋を持っていく」患者が52.2%と半数を超えたことは望ましいことである。
一方で「病院・診療所ごとに特定の薬局(病院・診療所に近い薬局)に処方箋を持っていく」患者は34.1%とそれなりの割合を占めており、これはかかりつけ薬剤師・薬局の意味がまだ患者に十分に浸透していないものと受け止められる。

この他、かかりつけ薬剤師・薬局の認知度について「よく知っている」患者は33.1%に留まり、この結果からもかかりつけ薬剤師・薬局が患者に浸透していないことがうかがえる。
なお、かかりつけ薬剤師・薬局を「よく知っている」患者は、年齢階級によって違いがみられた。「30~39歳」、「40~49歳」では回答割合が最も低かったが、その前後の年齢階級である29歳以下や、50歳以上では「よく知っている」患者が多くなる傾向が見られた。

入退院時の患者情報の授受(薬薬連携)はあまり行われていない

入院時、退院時のいずれについても、薬局(薬剤師)と病院(薬剤師)との間で、情報交換・情報共有はあまり行われていない。
薬剤師が担当している患者が入退院した際の患者情報の授受について
・ 今年度調査から、患者が入退院した際の患者情報の授受に関する設問を新たに追加したが、今年度の調査結果からは入院時、退院時のいずれについても患者情報の授受はあまり行われていない状況であり、今後の薬局における積極的な対応が期待される。
・ なお入退院時の患者情報の授受を促進するための薬局における方策としては、積極的に病院薬剤師と情報交換をすることが考えられる。
普段から薬局薬剤師と病院薬剤師との間で、顔の見える関係および、情報を共有・交換する体制ができていないと、なかなか難しいという事なんでしょうか。 薬局薬剤師の立場からすると、
・入院した理由
・入院中の治療内容(処方内容)
・処方変更があった場合,その理由
・病院が指示した今後の治療方針 などの情報をもらえると、大変ありがたいですかね。
「入院した理由」や「処方変更があった場合,その理由」は、退院後に来局された患者さん本人に聞くことで、わかる事がほとんどですが、
・入院中の治療内容(処方内容)
・病院が指示した今後の治療方針
については、患者さんもよく理解していなかったり、あやふやな事が多いので、病院(薬剤師)から直接情報をもらえると大変助かりますよね。 (情報発信をよくしている所に情報がよく集まるというのは現代の常識になっていますので)こういった情報を欲しいのなら、薬局(薬剤師)側から病院(薬剤師)へ情報発信するべきですよね。
病院薬剤師さんは入院時に薬局からどのような情報がもらえると助かるのでしょうか
・使用薬一覧や副作用歴は、当然の事として他には
・服薬状況(服薬コンプライアンス)や
・生活習慣や
・病識,薬識 とかですかね。

患者自身が感じている かかりつけ薬剤師を持つメリット

薬局で気軽に相談できるようになった。45.8%
かかりつけ薬剤師のメリットとして今後、追求していくべき事項について
 
患者自身に対応する決まった薬剤師がいて良かったこととして、
「以前から服用している薬との相互作用について確認してもらえた(63.1%)
「薬について分かりやすく相談に乗ってくれた」(54.1%)
「ジェネリック医薬品について説明してくれるなど、薬代を安くする方法について相談に乗ってもらえた」(47.6%)
「薬局に気軽に入り、薬以外のこと(健康、食品、生活など)について相談ができるようになった」(45.8%)
が他と比べて高い回答割合であった。

この他、
「薬を受け取った後も電話等で症状や服薬状況等について確認してくれた」(24.2%)
「検査値に関する相談に乗ってくれた」(22.7%)
「服用方法を変えてもらうなどし、薬が飲みやすくなった」(21.4%)
などの選択肢もそれなりの回答割合であった。
処方箋を持っていなくても、薬局へは気軽に健康のことを何でも相談してくれて良いのですが、
処方箋無しでは入りにくい
と感じておられる患者さんがまだまだ多いというのがわかります。
(そう感じさせてしまっている薬局がまだまだ多い)

薬局調査の回収率が 46.3% から 40.1% に減少した

薬局調査の回収率は40.1%と昨年度の回収率(46.3%)から減少した。
今年度の医薬品医療機器制度部会において医薬分業の意義が改めて問われている状況の中、この回収率の減少はかかりつけ薬剤師・薬局施策に対する関心の低下とも感じられ誠に残念と言える。
この回収率減少の要因としては本調査の重要性が薬局に十分に理解されていないことが考えられる。
具体的には、かかりつけ薬剤師・薬局の推進のために行う本調査が国や医療の未来にとって意義があるという事や、調査結果がどのように国等で利用され薬局に関する施策に反映されるのかという全体像が、薬局経営者や勤務者に伝わっていないことが考えられる。
かかりつけ薬剤師が患者や医療全体にとって有意義な事であると認識している薬局経営者や薬局勤務者が本当に少ないのなら、誠に残念どころか、非常にやばいですね。

薬剤師は他職種へ適切なコミュニケーションができない

薬剤師による患者や他職種への適切なコミュニケーションについて
・ 薬剤師は薬という物を取り扱っている職種であることから、他職種と比べて対物業務を重視してしまう傾向にあり、薬剤師同士は上手くコミュニケーションができるが、患者や医師と接する場合には適切な説明や情報提供ができない傾向があるのではないかとの意見があった。
多職種連携を行う上では、相手に応じて分かりやすく説明できるようにする必要がある。
『薬剤師は普段から「物(薬)」を扱っている職種であるから、普段から対人業務をしている看護師や介護職と比べて、コミュニケーションができない。』
って、そうなのか??
全く共感できませんがw 私は個人的には、薬剤師が看護師や介護職と情報共有することで、どのように患者さんが良くなるのか「具体的な成功例を目にする機会が少ない」から、
・コミュニケーションをする必要があると分かっていない。
・情報共有する必要があるとわかっていない。
・どの情報を共有すれば喜ばれるかが分かっていない。
このあたりだと思います。

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