薬剤師は外用薬を実技指導で患者さんに塗っても良いのか

厚生労働省発表資料
結論から言うと、薬剤師による外用剤の実技指導はできます。
薬剤師が患者さんに、塗ったり貼ったりしてOKです。

薬剤師による外用剤の実技指導はできます

薬剤師による、外用剤の実技指導は医療行為には該当しません。
在宅等の場面において、患者さん本人やご家族さん等へ「このように使います」と塗って見せる、貼ってみせる という事をやるのは法的にも問題ありません。 以下、その根拠となる厚生労働省通知等を紹介してゆきます。

薬剤の使用方法に関する実技指導の取扱いについて〔医師法〕

2014年3月19日に厚生労働省からそのような通知が出ています。
○薬剤の使用方法に関する実技指導の取扱いについて〔医師法〕より引用


(平成26年3月19日)
(/医政医発0319第2号/薬食総発0319第2号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長・厚生労働省医薬食品局総務課長通知)

(公印省略)

医師以外の医療スタッフが実施することができる業務の内容については、「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0430第1号平成22年4月30日医政局長通知)において整理されており、同通知では、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務として、薬物療法を受けている患者(在宅の患者を含む。)に対し、薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)を行うこと等をその具体例として示しているところです。 今般、在宅等での薬剤師の業務の現状等を踏まえ、服薬指導の一環として行う薬剤の使用方法に関する実技指導のうち、関係法令に照らし、薬剤師が実施できるものを下記のとおり整理しましたので、貴職におかれては、その内容について御了知の上、貴管下関係者への周知をよろしくお願いいたします。 なお、下記の実技指導に際し、薬剤師が患部に異常等を発見したときは、医師又は歯科医師へ速やかに連絡するよう、あわせて貴管下関係者への周知をお願いいたします。

薬剤師が、調剤された外用剤の貼付、塗布又は噴射に関し、医学的な判断や技術を伴わない範囲内での実技指導を行うこと。
薬剤師が褥瘡治療において、薬剤の使い方の指導を行うことが評価されてこの通知が出されました。 具体的には
・皮膚の特性を確認するためのフィジカルアセスメント
・創の洗浄や薬剤の充填
・被覆
・創の固定,保護
を薬剤師が行う事は法的に問題ないとされています。

[参考書籍:褥瘡治療薬つかいこなしガイド-古田勝経著-じほう]  

関連して、通知をもう1つ引用しておきます。

医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について

2010年4月30日の厚生労働省からの通知です。
医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進についてより引用・抜粋

医政発0430第1号
平成22年4月30日
各都道府県知事 殿
厚生労働省医政局長

医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について

2.各医療スタッフが実施することができる業務の具体例
(1)薬剤師
近年、医療技術の進展とともに薬物療法が高度化しているため、医療の質の向上及び医療安全の確保の観点から、チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益である。
また、後発医薬品の種類が増加するなど、薬剤に関する幅広い知識が必要とされているにもかかわらず、病棟や在宅医療の場面において薬剤師が十分に活用されておらず、注射剤の調製(ミキシング)や副作用のチェック等の薬剤の管理業務について、医師や看護師が行っている場面も少なくない。 1)薬剤師を積極的に活用することが可能な業務
以下に掲げる業務については、現行制度の下において薬剤師が実施することができることから、薬剤師を積極的に活用することが望まれる。 ① 薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること。 ② 薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極的に処方を提案すること。 ③ 薬物療法を受けている患者(在宅の患者を含む。)に対し、薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)を行うこと。 ④ 薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況や有効性確認を行うとともに、医師に対し、必要に応じて薬剤の変更等を提案すること。 ⑤ 薬物療法の経過等を確認した上で、医師に対し、前回の処方内容と同一の内容の処方を提案すること。 ⑥ 外来化学療法を受けている患者に対し、医師等と協働してインフォームドコンセントを実施するとともに、薬学的管理を行うこと。 ⑦ 入院患者の持参薬の内容を確認した上で、医師に対し、服薬計画を提案するなど、当該患者に対する薬学的管理を行うこと。 ⑧ 定期的に患者の副作用の発現状況の確認等を行うため、処方内容を分割して調剤すること。 ⑨ 抗がん剤等の適切な無菌調製を行うこと。
 

この通知を受けて、日本病院薬剤師会が以下の解釈を出しています。

「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の日本病院薬剤師会の解釈と具体例より引用・抜粋 業務例-②
薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極的に処方を提案すること。 【解釈】
患者状況(疾患名、腎および肝機能、臨床検査値、バイタルサイン、自他覚症状、薬物血中濃度、アドヒアランス等)や他施設で処方された薬剤(持参薬)などを薬剤師がアセスメントして、薬物療法全体(薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間など)について判断し、最適な処方提案を積極的に行う。 【解釈の具体例】
15. 褥瘡治療では、褥瘡の状態をチェックして、外用薬剤種類の選択、塗布量の変更、創面の移動も考慮に入れた投与方法(特に大きな褥瘡には、創面の固定を行った上で外用剤の塗布を行うこと)、治癒状態から投与期間を変更するなどの処方を提案する。
このような提案を行うことも薬剤師の役割として求められています。

まとめ

○薬剤の使用方法に関する実技指導の取扱いについて〔医師法〕 や
医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について 
これを受けての日本病院薬剤師会の解釈と具体例 から 薬剤師は外用薬を実技指導で患者さんに塗ったり貼ったりして良いです。 より褥瘡治療(外用薬-薬物治療)について詳しく学びたい方へはこちらの本はおすすめです。



[褥瘡治療薬つかいこなしガイド-古田勝経著-じほう]  

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