地域の患者さんを支援する薬局に勤務する薬剤師は『新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)』くらいは知っておかないといけません。なぜなら、『地域包括ケア』とは『認知症高齢者を地域の関係職種みんなでケアすること』と言い換えても良いくらいだからです。
実際私は介護の知識は『居宅療養管理指導の算定要件等を覚えている』『認知症サポーターである』『新オレンジプランについて知っている』程度のものですが、それでも『そうではない他の薬剤師』と比べて地域のケアマネジャーさんと連携できています。ですから、自分の知識の整理をするという意味合いも込めてこの記事では『新オレンジプラン』について書いてゆきます。
薬剤師も新オレンジプランくらいは知っておこう
『認知症施策推進総合戦略』の愛称が『新オレンジプラン』です。
新オレンジプランとは・・を一言で表すと『国を挙げて認知症高齢者等にやさしい地域をつくるぞ、というその取組みの事』となります。
※厚生労働省-認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)-のページより引用
認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)では、認知症の人が住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることに的確に応えていくことを旨としつつ、以下の7つの柱に沿って、施策を総合的に推進していくこととしています。
※上記で引用した「厚生労働省の新オレンジプランのページ」も是非訪れて欲しいと思います。
7つの柱とは
1.認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
社会全体で認知症の人を支える基盤として、認知症の人の視点に立って認知症への社会の理解を深めるキャンペーンや認知症サポーターの養成、学校教育における認知症の人を含む高齢者への理解の推進など、認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進を図ります。
※薬局薬剤師や、薬局スタッフは全員「認知症サポーター」を取得するとよいです。
2.認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
本人主体の医療・介護等を基本に据えて医療・介護等が有機的に連携し、認知症の容態の変化に応じて適時・適切に切れ目なく提供されることで、認知症の人が住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができるようにします。このため、早期診断・早期対応を軸とし、行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)や身体合併症等が見られた場合にも、医療機関・介護施設等での対応が固定化されないように、退院・退所後もそのときの容態にもっともふさわしい場所で適切なサービスが提供される循環型の仕組みを構築します。
※国を挙げて、
・「認知症サポート医」の養成を進めている
・「認知症初期集中支援チーム」の設置を進めている
という事くらいは知っておきましょう。
また、かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第2版)が作成されています。医師向けのガイドラインですが、薬に関する内容なので薬剤師も読んでおくべきです。
厚生労働省の関連ページ
3.若年性認知症施策の強化
若年性認知症の人については、就労や生活費、子どもの教育費等の経済的な問題が大きい、主介護者が配偶者となる場合が多く、時に本人や配偶者の親等の介護と重なって複数介護になる等の特徴があることから、居場所づくり、就労・社会参加支援等の様々な分野にわたる支援を総合的に講じていきます。
若年性認知症への理解を深めるのは当然ですが、若年性認知症にお困りの患者さん・ご家族さんが来局された場合、若年性認知症コールセンターがあり、このページを読むだけでも何か役に立つかもしれない、という事くらいはお伝えしたいものです。
4.認知症の人の介護者への支援
高齢化の進展に伴って認知症の人が増えていくことが見込まれる中、認知症の人の介護者への支援を行うことが認知症の人の生活の質の改善にも繋がるとの観点に立って、介護者の精神的身体的負担を軽減する観点からの支援や介護者の生活と介護の両立を支援する取組を推進します。
「認知症カフェ」という取り組みが行われている事。そして、薬局主体で「認知症カフェ」を開催している所も実際にある。という事を知っておかないといけません。(※「認知症カフェ 薬局」と検索してみてください。実際の事例が見つかります。)
5.認知症を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
65歳以上高齢者の約4人に1 人が認知症の人又はその予備群と言われる中、高齢者全体にとって暮らしやすい環境を整備することが、認知症の人が暮らしやすい地域づくりに繋がると考えられ、生活支援(ソフト面)、生活しやすい環境の整備(ハード面)、就労・社会参加支援及び安全確保の観点から、認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進に取り組んでいます。
6.認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
認知症をきたす疾患それぞれの病態解明や行動・心理症状(BPSD)を起こすメカニズムの解明を通じて、認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発の推進を図ります。また、研究開発により効果が確認されたものについては、速やかに普及に向けた取組を行います。なお、認知症に係る研究開発及びその成果の普及の推進に当たっては、「健康・医療戦略」(平成26年7月22日閣議決定)及び「医療分野研究開発推進計画」(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)に基づき取り組みます。
7.認知症の人やその家族の視点の重視
これまでの認知症施策は、ともすれば、認知症の人を支える側の視点に偏りがちであったとの観点から、認知症の人の視点に立って認知症への社会の理解を深めるキャンペーン(再掲)のほか、初期段階の認知症の人のニーズ把握や生きがい支援、認知症施策の企画・立案や評価への認知症の人やその家族の参画など、認知症の人やその家族の視点を重視した取組を進めていきます。
『地域包括ケア』と『認知症高齢者ケア』は切り離すことができない
私が実際、居宅療養管理指導などで患者宅を訪問しケアマネジャーさんを始めとする関係職種の方として『地域包括ケア』を行っていて思うのは、『地域包括ケアが必要な方のほとんどは、認知症高齢者である』という事です。
薬剤師は介護の知識が『多少ある』だけでも地域包括ケアの現場では重宝される
介護の知識が『多少ある』程度の私が、実際に他の薬剤師よりも重宝されているので、これは間違いありません。
『介護の知識が多少ある』くらいになりましょう。
そのために『新オレンジプラン』『居宅療養管理指導の算定要件』くらいは他人に説明できる程度に知っておきましょう。
だから、薬局薬剤師も新オレンジプランくらいは知っておこう
これをきっかけに『新オレンジプラン』を知っていただいた薬剤師は次は認知症サポーター養成講座を受けて『認知症サポーター』になっていただくのも良いと思います。
オレンジリングというものがもらえるので、これを腕につけて『地域連携の集まり』に行くだけでも『認知症サポーター取られたんですね』等、他職種の方に好印象を持っていただけるきっかけになっています。
もうすこし勉強したい。という方には、介護支援専門員試験を受けるのも良いと思います。(私も介護支援専門員の試験を受け合格しました。)ケアマネ試験を合格した薬剤師と知っていただけると、より身近に感じてもらえます。
(しかし、資格コレクターになるだけでは意味がありません。認知症サポーターになったら後は、ケアマネさん達とどんどん直接連絡を取ってゆくのが最も良いと思います。)
そして、新オレンジプランをよく知ると、薬局薬剤師は新オレンジプランを推進していく側にいないといけないのではないか? と思えるようになります。
そう思ったら、良かったら、私のように他の誰かに「新オレンジプラン」の事を伝えて下さい。
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最後に
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