認知症患者さんの中で最も多いタイプが、このアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症とは
脳が徐々に委縮する(小さくなる)ことで、ゆっくりと症状が進行する病気です。
なぜ脳が委縮してしまうのか、その詳細な仕組みはわかっていません。
アミロイドβ(通称:老人斑)という老廃物が何年もかけて蓄積し、神経細胞に悪影響を与え、神経細胞を壊しているのではないかと考えられています。
アルツハイマー型認知症の症状
アルツハイマー型認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状」の2つに分けて考えられることが多いです。
中核症状
「記憶障害」・・初期は「直近の出来事を忘れる」ことから始まる。徐々に数日前の記憶や昔の記憶も忘れるようになる。
「失認」・・目や耳に機能的な異常はないにも関わらず「物の区別ができない」「場所の風景を認識できない」などの症状が表れる。
「失行」・・日常動作ができなくなること。「着替えがうまく出来ない」など。
「失語」・・「物や人の名前を忘れる」「言葉の意味を理解できなくなる」など。
「遂行機能障害」・・物事を計画的に行うことが出来なくなる。洗濯機を回している間に他の家事を行うなども順序立ててうまくできなくなる。
周辺症状
「暴言・暴力」・・「暴言をあびせる」「暴力をふるう」。介護者を威嚇したり、突然大きな声を出すなど。
「介護拒否」・・「服薬を拒否する」「ヘルパーさんのケアを拒む」「入浴介助を断るようになる」など。
「妄想」・・「お金を盗られた」「物を盗られた」等の妄想をするようになる。
「幻覚」・・「いない人が見える」「無いはずの物が見える」など。幻覚が原因で騒いだり、恐れたりする。
「うつ症状」・・「楽しそうにする」「嬉しそうにする」などがなくなり気持ちが落ち込んだり、人と会うのが嫌になったりする。
「徘徊」・・「目的なく歩き回る」介護者が目を離した隙に出て行った場合などは、介護者の大きな負担となる。
「食行動異常」・・「食べ物ではない物を食べようとする(お花を食べようとする等)」「人の物を盗って食べたりする」「食べ過ぎたりする」
「睡眠障害」・・昼夜逆転したり、ずっと寝ていたり、ずっと起きていたりする。睡眠と覚醒のリズムがうまくとれなくなる。
「不安・焦燥」・・「1人になるのを異常にこわがる」「焦って落ち着いている時間がない」など。
「単なる物忘れ」の例は、朝ご飯に何を食べたか思い出せないというもの。
それに対して「認知症の物忘れ」の例は、朝ご飯を食べたこと自体を忘れるというもの。記憶自体が完全に抜け落ちているので「トーストにバターを塗って食べたでしょ?」とヒントとなる言葉が出ても思い出せない。— ikpdi薬局 (@ikpdi_com) 2018年4月20日
アルツハイマー病の進行段階
段階 | 症状 |
---|---|
ステージ1 | 認知機能の低下がなく正常範囲。5~10年前と比べても変化が見られない |
ステージ2 | 非常に軽度の認知機能低下。年齢相応。もの忘れもわずかで周囲もほとんど気付かない |
ステージ3 | 軽度の認知機能低下。仕事や複雑な家事では失敗することもあるが日常生活ではほとんど失敗がない |
ステージ4 | 中等度の認知機能低下。軽度のアルツハイマー型認知症。来客の接待や、家計の管理、買い物などで失敗する。手続的ADL(道具的ADL)のみ障害 |
ステージ5 | やや高度の認知機能低下。中等度のアルツハイマー型認知症。入浴や服選びなど基本的ADLに障害が生じる。気分や情動における変化も伴う |
ステージ6 | 高度の認知機能低下。やや高度のアルツハイマー型認知症。独立して着衣や入浴ができない。この段階の後半では尿失禁や便失禁が起こる |
ステージ7 | 非常に高度の認知機能低下。高度のアルツハイマー型認知症。質問されても節や単語でしか答えられない。徐々に歩けなくなり座っていられなくなる |
Credentials No.116 May 2018
認知症とのつきあいかた
認知症になる最大の原因は加齢です。
認知症の有病率は(アルツハイマー型に限らず全認知症で)
65歳では 3%
70歳では 4%
75歳では14%
80歳では22%
85歳では41%
90歳では61%
95歳では80%と言われています。
(平成23-24年度厚生労働省科研認知症対策総合事業より)
これぐらい「誰もがなる病気」なんです。ですから
・なにもかも分からなくなるから認知症だけはイヤ
・認知症になってしまったら何もかも終わり
と拒否するのではなく「うまく付き合う」と考えてゆくべきです。
軽度の認知症は「少し物忘れをする」程度のもので、普通におしゃべりもできますし、一般の方と何も変わりありません。認知症とうまく付き合って、最期まで自分らしい生活が出来ている方も数多くおられます。
認知症は「うまく付き合ってゆくもの」と考えて下さい。
そして、認知症とうまく付き合い、認知症の方が自分らしく暮らすためには、本人だけでなく周りの家族も認知症についての理解および強力が必要です。
認知症患者のご家族さんにたった1つお伝えしたい事
認知症サポーターでもある筆者が、認知症患者さんのご家族さんにたった1つだけ何か伝えられるのであれば、
「認知症は自信を失う病気です。なるべく本人が自信をもってやってみようと思える環境づくりをしてあげて下さい。」
これをお伝えしたいです。
例えば、
「暗算」が得意だった方がお釣りの計算がわからなくなってしまう事があります。
「料理」が得意だった方がメインの味付け調味料を入れ忘れてしまう事があります。
こういった場合には「暗算」や「料理」を本人から取り上げてしまうような事はしないで、
「会計610円でお財布には小銭がいっぱいあるのに1000円札だけ出していたら、小銭が見えたからあと110円出しておくね」
「料理で煮付けなのに醤油もみりんも入れ忘れていたら、みりんと醤油は私が入れておくね」
と、すっと手を差し伸べてあげて下さい。そのほうが本人が失敗経験をせずに済み、自信を失わずに済み、「できなかった」「やり忘れた」という事実にだけ気づいてくれるので病気と正面から向き合おう治療に励もうという気持ちになってくれます。リハビリに励んでくれるようになります。
決して
「何で小銭を出さないの!」
「何で醤油を入れ忘れるの!」などと追い込まない事を心がけたいです。
主な認知症治療薬一覧
一般名 | (代表的な) 商品名 | 特徴 | |
---|---|---|---|
コリンエステラーゼ阻害薬 | ドネペジル | アリセプト | 軽度~高度まで |
ガランタミン | レミニール | 軽度~中等度 | |
リバスチグミン | イクセロンパッチ リバスタッチパッチ | 軽度~中等度 | |
グルタミン酸NMDA受容体拮抗薬 | メマンチン | メマリー | 中等度及び高度 |
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最後に
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