薬剤師国家試験で、「新人薬剤師は患者の容態に合わせた処方提案が出来るんだなぁ」とわかる興味深い問題を目にしましたのでその問題を引用して紹介させていただきます。
第103回薬剤師国家試験 問318からの引用です
問 318−319 72歳男性。通院困難なため在宅医療を受けている。医師の訪問時に男性の家族より、夜になると咳が止まらなくなり本人が眠れていないことが伝えられた。
診察の結果、次の薬剤が処方され、薬剤師が在宅にて対応することとなった。
(処方1)
アジスロマイシン錠 250mg 1回 2錠( 1日 2錠)
1日 1回 朝食後 3日分
(処方2)
テオフィリン徐放錠 200mg(12~24時間持続) 1回 1錠(1日 2錠)
1日 1回 朝食後・就寝前 14日分
問 318(実務)
3日後、薬剤師が訪問したところ、家族から症状も改善されず痰もつまっていると報告を受けた。薬剤師が医師に対して行う提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アジスロマイシン錠を 2日間処方延長する。
2 アジスロマイシン錠をクラリスロマイシン錠に変更する。
3 L-カルボシステイン錠を追加する。
4 レバミピド錠を追加する。
5 ツロブテロール経皮吸収型テープを追加する。
答えは?
問318の正答は3,5です。
×1 アジスロマイシン錠を 2日間処方延長する。
⇒アジスロマイシン錠は3日服用すれば、7日間効果が持続する薬剤なのでここで 2日間処方延長するというのは適切ではありませんね。
×2 アジスロマイシン錠をクラリスロマイシン錠に変更する。
⇒クラリスロマイシンはCYP3A4を阻害するので、テオフィリンの代謝を阻害してしまうので、これはむしろ変更しないほうが良いですね。
○3 L-カルボシステイン錠を追加する。
⇒”痰もつまっている”との事ですから、去痰薬(L-カルボシステイン錠)の追加は提案としては適切です。
×4 レバミピド錠を追加する。
⇒胃についての不調は何も訴えていないようなので、胃薬(レバミピド錠)の追加は適切ではありません。
○5 ツロブテロール経皮吸収型テープを追加する。
⇒”(夜になると咳が止まらなくなる)症状も改善されず”という事ですので、気管支拡張薬の追加は提案としては適切です。
はい。
現役の薬剤師なら、まず間違うことはない問題かと思います。
「ほっ。とけて良かった。」と喜ぶのではなく
「ほっ。とけて良かった。」
と喜ぶのはここまでにして、
『薬剤師が医師に対して行う提案』としてこの問題が出題されている事に意味をすごく感じます。
新人薬剤師は、このような国家試験を解いて合格して現場に来ている訳ですから「何かあれば薬剤師は医師に処方提案する」というのを普通の事と思っています。
国(厚生労働省)はこれから薬剤師には職能を発揮して、医師へどんどん処方提案して欲しいと考えているという事がよく分かります。
新人薬剤師がそうなんですから、私たち現役(ベテラン?)薬剤師がどうあるべきか考えないといけません。
新人薬剤師が「処方提案」しようとするのを止める「老害薬剤師」にだけはならないように気を付けよう。との気持ちを再確認できました。
(もちろん、提案の内容が間違っていないかのチェックは先輩薬剤師が一緒にするべきですし、内容自体が間違っていたら止めるべきです。)
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