レキサルティは新しい作用機序の統合失調治療薬。何が新しいのか従来薬と比較して薬剤師が解説

薬・治療・病態 各論

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)は2018年4月発売のいわゆる『抗精神病薬』です。

適応症は統合失調症です。

この薬剤の特徴や新しい作用機序、今までの統合失調症治療薬との違いなどを確認してゆきます。




 

特徴・作用機序

※まずは大雑把に特徴を確認しておきます。

レキサルティ(般:ブレクスピプラゾール)は、
ドパミンD2受容体およびセロトニン5HT1A受容体に結合してアゴニスト(作動薬)として働き、
セロトニン5HT2A受容体にはアンタゴニスト(阻害薬)として働きます。

セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーターと呼ばれる新しい非定型抗精神病薬です。
Serotonin-Dopamine Activity Modulator (SDAM)】

この作用機序により、統合失調症の治療継続に影響を及ぼす代謝性障害や錐体外路系症状を軽減し、陽性症状・陰性症状・認知機能障害を改善することが期待されています。

 

他の統合失調症治療薬との違い

エビリファイとの比較

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)の、類似薬はエビリファイ(アリピプラゾール)です。

エビリファイ(アリピプラゾール)はDPA(ドパミン受容体部分作動薬

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)はSDAM(セロトニン・ドパミン・アクティビティモジュレーター

 

作用機序、および薬理学的な特性から考えて

D2受容体部分アゴニスト(作動)作用はエビリファイのほうが強いです。

5HT1A受容体部分アゴニスト(作動)作用および,5HT2A受容体アンタゴニスト(阻害)作用はレキサルティの方が強い。

つまり
陽性症状(幻覚症状、妄想、思考の混乱など)に対しては、エビリファイがより有効
陰性症状(感情が乏しくなることや意欲の減退など)に対しては、レキサルティがより有効

※エビリファイ、アリピプラゾールともに陽性症状・陰性症状の両方を改善させる効果が報告されています。

 

『ドパミン受容体部分作動』について

エビリファイは、
ドパミン神経伝達が亢進したD2受容体へは拮抗作用をあらわし、
ドパミン神経伝達が低下したD2受容体へは適度に活性化する作用があるとされています。

ドパミン受容体部分作動薬という名前がつけられておりますが、『ドパミンD2受容体に「作動薬」としてしか働かない?』と勘違いしないように注意しましょう。D2受容体への拮抗作用がメインですが、部分によっては作動薬としても働きますよという薬剤です。

エビリファイが陽性症状(幻覚症状、妄想、思考の混乱など)に対して、効果を発揮するのは、D2受容体への拮抗作用によるものと言われています。

その名前から「拮抗作用はないよね?」と勘違いする方もおられるかもしれませんので、書いておきました。



統合失調症とは

※次に、レキサルティの適応症である「統合失調症」について確認しておきます。

統合失調症は、「考え」や「気持ち」がうまくまとめられなくなる状態が続く精神疾患の1つです。

統合失調症の症状

幻覚、妄想、思考障害、感情の平板化、意欲の欠如等の症状が現れます。
その結果として社会生活や就業が困難となってしまう多いです。

そして「もう大丈夫」と自己判断で服薬を中止することや、副作用で『アカシジア、鎮静、体重増加』等が起こることにより服薬の継続が困難となり再発してしまう事も多いです。

思春期から40歳くらいまでに発病し、治療が長期にわたることも少なくありません。

 

レキサルティの基本情報

レキサルティの基本情報を、添付文書等から拾ってゆきます。

副作用

(※添付文書より引用)
主な副作用は、アカシジア(5.7%)、高プロラクチン血症(4.0%)でした。

この主な副作用である
「アカシジア」
「プロラクチン血症状」
とはどんな副作用なのでしょうか? 確認しておきます。

アカシジアとは

※厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」より引用・抜粋

アカシジアは静座不能症と訳されていて、座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るという特徴があります。

アカシジアの原因薬では抗精神病薬によるものが多いのですが、抗うつ薬や一部の医師から処方された胃腸薬などによっても引き起こされることがあります。

多くの場合には、服用を始めて数日後に出現しますが、数カ月間以上同じ薬を飲み続けた後に出現する場合もあります。前述の症状がみられ、落ち着かず、廊下を行ったり来たりなど、ずっと歩き回ったりします。

このように落ち着きがなくなったり、興奮して歩き回ったりするアカシジアの症状を、抗精神病薬などの服用を必要とした元来の精神疾患による精神症状であると勘違いしてはいけません。

病気が悪化したと勘違いして、自分で勝手に服用中のお薬をたくさん飲んでしまうと、一般的にはさらにアカシジアが悪化します。あまりに苦しくて衝動的に自分を傷つけたり、自殺したいとさえ感じ危険な行為に及ぶ場合さえもあります。

はい。
この薬をお渡しする際に「アカシジア」という副作用について説明する。そして「アカシジア」の症状が出たときに病気が悪化したと思わないように患者さんに「アカシジア」について理解してもらう。
これは、私たち薬局薬剤師の仕事ですね。

 

高プロラクチン血症

プロラクチンは、下垂体から分泌されるホルモンです。
このホルモンが過剰に分泌されている状態を高プロラクチン血症といいます。

プロラクチンは、簡単にいうと出産後の乳汁分泌に関係するホルモンです。

ですから、高プロラクチン血症の症状としては、「出産と無関係に母乳の分泌があらわれる」「乳房が腫大する」「月経不順が起こる」などの症状がみられます。

このように書くと、女性だけに起こる副作用のように勘違いしてしまいますが、男性も無関係ではありません。男性の場合も、高プロラクチン血症により勃起障害・性欲低下といった症状が起こることがあります。

 

用法・用量

(※添付文書より引用)
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与します。

用法・用量に関連する使用上の注意

(1)本剤の1日量4mgを超える用量での安全性は確立していない(使用経験が少ない)。

(2)本剤とCYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)及び/又は強いCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合及びCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(PoorMetabolizer)では、本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがあるため、以下の表を参考に用法・用量の調節を行うこと。

(3)高度腎機能障害(クレアチニンクリアランスが30mL/min未満)、又は中等度から重度の肝機能障害(ChildPugh分類B又はC)のある患者では、本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがあることから、減量又は投与間隔の延長等を考慮し、投与に際しては患者の状態を慎重に観察すること。

 

患者さんへの指導例

※製薬会社作成の「患者向医薬品ガイド」を参照して作成しました。

・脳内のドパミンとセロトニンという神経伝達のバランスを整えることにより、不安定な精神状態を安定させ、心身の活動がうまくいっていない状態を改善する作用があります。

・高血糖症状があらわれることがあります。具体的には、強いのどの渇き、水やジュースをたくさん飲む、尿の量が多くなる、尿の回数が多くなる、などです。このような症状があらわれた場合には服用を中止して受診してください。

・興奮しやすい、敵意をもつ、自己を過大評価する妄想などの精神症状の悪化が見られることがあります。そういった症状があらわれたら、相談してください。

・ギャンブルを繰り返す、病的な性欲亢進、過剰で無計画な買い物を繰り返す、病的に食欲が亢進するなど、衝動が抑えられない症状があらわれることがあります。これらの症状があらわれた場合は、相談してください。

・眠気、注意力・集中力・反射能力などの低下が起こることがあります。自動車の運転などの危険を伴う操作は行わないようにしてください。

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最後に

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