ゾフルーザ錠は、たった1回飲むだけのインフルエンザ治療薬

薬・治療・病態 各論

「たった1回飲むだけ」で治療終わり。
の抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠」が2018年3月14日新発売されました。

私個人は、2017-18のインフルエンザシーズンでは、この処方を目にすることも調剤する事もありませんでした。
しかし
2018-19のシーズンではこの抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠」の処方箋を多く調剤・服薬指導することが想像されますので、情報を整理しておきます。

なんと言っても「1回飲むだけ」という簡便さは魅力です。


ゾフルーザ錠の基本情報

一般名は、バロキサビル マルボキシルです。

単回経口投与、つまり1回飲んだらそれで(治療)終わり の薬剤です。

※添付文書より引用
【用法・用量】
1. 通常,成人及び 12 歳以上の小児には,20mg 錠 2 錠(バロキサビル マルボキシルとして 40mg)を単回経口投与する。ただし,体重 80kg 以上の患者には 20mg 錠 4 錠(バロキサビル マルボキシルとして 80mg)を単回経口投与する

2. 通常,12 歳未満の小児には,以下の用量を単回経口投与する
40kg以上 20mg錠 2錠(バロキサビル マルボキシルとして 40mg)

20kg以上40kg未満 20mg錠 1錠(バロキサビル マルボキシルとして 20mg)

10kg以上20kg未満 10mg錠 1錠(バロキサビル マルボキシルとして 10mg)

用量は年齢・体重別になっております。
表にしてみました。

年齢 体重 用量
12歳以上 80kg~ 80mg(20mg錠×4錠)
12歳以上 40~80kg 40mg(20mg錠×2錠)
12歳未満 40kg~ 40mg(20mg錠×2錠)
12歳未満 20~40kg 20mg(20mg錠×1錠)
12歳未満 10~20kg 10mg(10mg錠×1錠)

あまり、適当な事を言うのはよくないですが、アバウトに覚えるなら
10㎏以上は 10㎎
20㎏以上は 20㎎
40㎏以上は 40㎎
80㎏以上は 80㎎
といった感じで、用量も覚えやすいですね。

 

特徴は「単回経口投与する」という点

単回経口投与・・つまり、「1回飲むだけ」

これがどれだけ素晴らしく画期的なのか、他の主なインフルエンザウイルス薬と比較してみます。

タミフルは5日間飲まないといけません
リレンザは5日間吸入しないといけません
イナビルは単回ですが、吸入しないといけません
ラピアクタは単回ですが、注射(点滴)しないといけません
ゾフルーザは単回で、しかも飲むだけです。

薬品名(商品名)剤形用法(通常・成人)特徴
タミフルカプセル
小児用ドライシロップ(粉)
5日間服用
1日2回服用
1回に1CP
・カプセルを内服なので簡便
・5日間服用が必要
リレンザ吸入5日間吸入
1日2回吸入
1回に2br吸入
・5日間吸入が必要
・吸入操作を覚える必要がある
イナビル吸入(単回)
2キットを吸入
・1回吸入するだけなので簡便
・吸入操作を覚える必要がある
ラピアクタ点滴(注射)(単回)
15分以上かけて点滴
・15分間病院で点滴してもらうだけで終了
ゾフルーザ錠剤(単回)
20mg×2錠を飲む
・錠剤を1回内服で終了なので非常に簡便

「内服・吸入・点滴」で比較すると、通常は内服が簡便で好まれます。
内服タイプ・・タミフル、ゾフルーザ
吸入タイプ・・リレンザ、イナビル
点滴タイプ・・ラピアクタ

※インフルエンザで身体がしんどい時に、吸入するのは大変です。注射も痛いから好んでやりたくはありません。内服で簡便に済ませられるのであれば内服が良いですよね。

5日間服用と単回投与との比較では、単回投与が簡便で好まれます。
5日間・・タミフル、リレンザ
単回・・・イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザ

つまり「最も簡便な」インフルエンザ治療薬がゾフルーザなのです。

※効果の面でも、他の主要な抗インフルエンザウイルス薬と比べて明らかな劣性はないと臨床試験で証明されています。

 

薬価が高い ゾフルーザの欠点

体重40~80kgの大人の場合、インフルエンザ治療にかかる薬価は下記の通りです。

ゾフルーザ錠  :4,789円(20㎎×2錠)
タミフルカプセル:2,720円(75㎎×10CP)
オセルタミビルCP:1,360円(75㎎×10CP)

このように、ゾフルーザの薬価は高いというのが欠点です。

 

ゾフルーザで注意するべき点

他の抗インフルエンザ薬と同様に「異常行動」への注意が必要な薬剤です。
※特に10代の患者さんがインフルエンザに感染した際に異常行動は数多く報告されており、注意が必要です。

※「異常行動」についての個人的見解

※根拠のない個人的な見解です
抗インフルエンザ治療薬の「副作用」として「異常行動」が認知されています。製薬会社作成の添付文書の副作用や注意事項の欄にも「異常行動」は記載されています。が、私は「異常行動」は薬の副作用ではなくインフルエンザに付随する症状である可能性が高いと考えています。
「インフルエンザ治療薬」の使用の有無に関わらず「インフルエンザウイルス」に感染している時点で「異常行動」は注意するべきです。
※根拠のない個人的な見解です


 インフルエンザの予防方法

インフルエンザの感染経路

予防方法の前に感染経路を確認しておきましょう。

インフルエンザウイルスは「飛沫感染」で広がります。
飛沫」とは、くしゃみや咳等で口から飛び出た「唾の粒」の事だと考えてください。

飛沫 ≒ 唾の粒

この「唾の粒」が小さい場合空気中を長時間漂います。ですから、インフルエンザ感染者のいる空間には高確率でインフルエンザウイルスのいる「飛沫」が漂っています。
・この「飛沫」を鼻や口から吸い込む。
・この「飛沫」がついてしまった手で「食べ物」や「鼻」や「顔」を触る。
主にこういった経路で感染します。

そして、「飛沫」がついた手で触った「モノ」を介して、直接感染者とは関わっていない人の手にも付着します。

このようにして、感染は広がってゆきます。

 

インフルエンザの予防方法

ですから、予防方法は「飛沫(唾の粒)吸い込まない」「飛沫が付いた手で顔や鼻を触らない」ことです。

 

「飛沫を吸い込まないために」・・感染者にマスクをしてもらいましょう。頻繁にうがいをしましょう。

感染予防のためにマスクをする方も多いですが、どんな高密着タイプのマスクであっても、マスクのスキマから飛沫が入り込む可能性はあり、完璧ではありません。

※映画に出て来るような「防毒マスク」でもしない限り「飛沫を吸い込む」のを完璧に防ぐ方法はありません。

例えば家族がインフルエンザに感染してしまった場合は、感染していない家族がマスクをするよりも、感染した家族がマスクをする方が家族内感染を防ぐためには効果的です。咳やくしゃみで出る「飛沫」が広がるのをマスクが防いでくれるからです。

インフルエンザ感染の本人がマスクをしていてもそれでも「飛沫」は多少は空間に漂ったり、近辺に付着したりはしてしまいますので、家族が「飛沫」を吸い込んでしまうのは避けられません。

しかし、吸い込んでしまったとしても、吸い込んだ飛沫(インフルエンザウイルス)を口から外に出せばよいのです。そのために「うがい」を頻繁にしましょう。

インフルエンザウイルスがのどに付着した=感染 ではありません。

のどに付着したインフルエンザウイルスが(気管支・肺まで)増えて広がったら感染です。なので、喉に付着してすぐの時点でうがいで洗い流してしまいましょう。

うがいはとても効果的な予防方法です。

 

「飛沫が付いた手で顔や鼻を触らない」・・手を頻繁に洗いましょう。マスクをしましょう。

飛沫が付いた手のまま手を洗わずに食事をするとインフルエンザウイルスを口にいれてしまうことになります。当たり前の事ですが、食事前には必ず手を洗いましょう。また、人間は無意識に鼻や顔をよく触っています。インフルエンザの付着した手で鼻や顔を触ることが感染につながります。

 

顔や鼻を触らなければ良い?

だったら、鼻や顔を触らないようにすれば良いだけなのですが、無意識にやっているものをやめるというのは非常に難しいです。マスクをしていれば、インフルエンザが手に付着した状態で無意識に鼻を触ってしまったとしても、マスクを触っただけで直接鼻を触った訳ではないので感染予防になります。

 

手洗いはとても効果的な予防方法

手で顔や鼻を触ってしまうのが避けられないのなら、手のウイルスを洗い流しておけば良いのです。外から帰った際、食事前はもちろんのこと、可能な限りいつでも手を洗うようにしましょう。

※薬局で薬剤師をしていると冬のインフルエンザシーズンにはインフルエンザの患者さんに数多く接しますが、手洗いとうがいを頻繁にしているため、私は今シーズンもインフルエンザにかかることはありませんでした。


 最後に

当サイトはあくまで一般的な注意点や説明を記載しています。実際はその方の年齢や性別、その他合併症、併用薬の有無など、個人によって治療方法が異なります。当サイトの情報は「参考程度」に留めておいてください。当サイトでは、取り上げた情報により生じた健康被害等の責任は一切負いません。

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