薬剤師が解説~パーキンソン病のわかりやすい説明~

薬・治療・病態 各論

薬剤師筆者が、パーキンソン病について、なるべく平易な表現を使い、パーキンソン病の患者さんやそのご家族さんが読んでもおわかりいただけるように書きまとめました。

※薬剤師筆者が平易な表現で説明する練習のために書いています。
※患者様やそのご家族さんが読まれた場合、当ページの情報よりも、実際に診断や治療にあたっている医師や薬剤師の助言のほうを優先して下さい。



パーキンソン病とは

名前の由来

ジェームズ・パーキンソンというイギリス人の医師が発見したことから、このように名付けられました。

発病年齢

40歳以降の発病が多いです。
特に50歳・60歳代に発病される方が多く、年齢とともに有病率が増える病気です。

症状について

脳神経の障害により症状が起こります。
初期の症状は「手が震える」「手足の力が入りにくい」といったものです。
症状が進行すると、身体の動きが少しずつ不自由になってゆく事が多いです。

 

パーキンソン病の原因は

原因は明らかになっていません。
その原因はわからないのですが「脳の黒質と呼ばれる神経に損傷が起きることで、そこで作られているドパミンの量が減るため症状が起こる」という事はわかっています。

・「脳の黒質という神経」が「線条体という神経」に「ドパミン」を与える。
・「線条体という神経」は「ドパミン」を使って体中の筋肉の動きをうまく調整している。

ですから

「黒質が損傷」し「ドパミン」が不足すると、筋肉の動きの調整が出来なくなるので
・筋肉が動かしずらくなる(力が入らない)
・筋肉が不都合な動きをする(手が震える)
等の症状が現れてしまいます。

他に、原因は遺伝が関係するともいわています。

 

ドパミンが減少するのはパーキンソン病患者さんだけではない

パーキンソン病患者でなくても、齢を重ねるにつれて脳の働きは衰えます。
脳の働きが衰えると
・「脳の黒質という神経」が「線条体という神経」に「ドパミン」を与える。
この機能も当然ながら衰えます。つまり、ドパミンの量が減少してしまいます。

一般的に脳の老化現象が始まると「黒質は10歳年をとるごとに10%死滅する」と言われていますので、仮に120歳まで生きれば誰にでもパーキンソン病と同じ症状が表れます。



4大症状「無動,振戦,筋固縮,姿勢障害」

パーキンソン病には四大症状と呼ばれる患者さんによくあらわれる症状があります。
・無動(動作がゆっくりになる)
・振戦(手足が震える)
・筋固縮(筋肉が固くなって動きが悪くなる)
・姿勢障害(体のバランスをとるのが難しくなる)

無動(動作がゆっくりになる)

「無動」という言葉からして、動きが無くなると思われがちですが、動きが全く無くなるという意味はありません。動きが非常にゆっくりになるという意味で使われています。

例えば、何かの動作を1つ始めようと思ってもその動きを始めるまでに時間がかかってしまいます。

この無動で特に問題となるのが「嚥下(飲み込むこと)」です
食べ物を口に含んで「飲み込もう」と思っても身体が「飲み込む動作を始めるまでに時間がかかる」ため、食べ物が気管支の方へ誤って入って、むせてしまったり、ひどい場合は肺炎を起こしてしまいます。

 

振戦(手足が震える)

振戦の症状は、初期症状として表れることが多い「手足の小刻みな動き」です。
パーキンソン病患者さんの約7割に現れると言われています。
初期の振戦には「何もしていない時に左右の手足いずれかが無意識に震え、寝ている時にはなぜか止まる」という特徴があります。

初期の手の動きは、消しゴムのカスをくるくると指先で丸めるような動きをします。
進行するにつれ、指が反り返るようになり、震えも止まらなくなってゆきます。

 

筋固縮(筋肉が固くなって動きが悪くなる)

初期症状で見つけにくいのが、この筋固縮(筋肉が固くなって動きが悪くなる)です。

症状としては、筋肉が固く張って、全身がスムーズに動かせなくなり、体が重いと感じるのですが、「それは年のせい」と見過ごされてしまう事が多いのです。
40歳以降の発病が多く、特に50歳・60歳代に発病される方が多いので、このように見過ごしてしまう気持ちはよくわかります。

しかし、歯車現象といって「年のせい」とは明らかに違う症状もあります。
このような症状から早期発見ができると良いです。

歯車現象

他人に、自分の肘や手首の関節を曲げてもらおうとすると、歯車を回したときのようにガクガクとした感じを受けます。これが歯車現象です。

 

姿勢障害(体のバランスをとるのが難しくなる)

進行してからの症状になるのですが、だんだんと体のバランスをとるのが難しくなってゆきます。
例えば、背中を軽く押されただけで、足を、おっとっ・とっ・とっ・とっ・とっ と踏み出して止まれなくなり、何かに突進してしまい、骨折してしまう事も多いです。
逆に、前から胸を押されると、軽く押されただけで、後ろに転倒して怪我をしてしまいます。

体のバランスをとるのが難しくなるので、歩き方は
前かがみになり
すり足で
小股で 歩くようになります。

矛盾性運動

矛盾性運動という特徴的な現象もあります。
すり足で小股で歩いていても、何か床に目印となるようなものが置いてあるとそれを避ける時は普通に歩けるという不思議な現象です。

 

「4大症状」以外の症状

自律神経の異常が非常によく起こります。
・便秘(便秘は特に多くの患者さんに起こります)
・排尿障害(失禁してしまう。おしっこの回数が増える。)
・立ちくらみ
・発汗障害(汗が異常に出るなど)

精神の症状も起こります。
・においを感じにくくなる(初期に多い)
・うつ症状(うつ病)
・物忘れをするようになる
・睡眠障害(何度も目が覚める,睡眠中に暴れる)
・幻覚や妄想(いないはずの人が見える)

 

症状が起こる順番(進行の仕方)

近年の研究では、下記のような順序で起こるのではないかと言われています。

「便秘」や「においを感じにくくなる」から始まる

4大症状のいずれかが起こり始める

4大症状のほとんどの症状が見られる

うつ症状や、物忘れが起こり始める

 

当記事はパーキンソン病患者のご家族さんに読んで欲しい

このページは
「パーキンソン病と診断されたばかりの患者さんのご家族さんに読んでもらえたらな」
「読んだことで、家族のパーキンソン病の早期発見につながってくれたらな」
という思いで書きました。

パーキンソン病の治療は長期にわたりますので、ご家族さんの協力は欠かせません。
家族の方もこの病気の事をよく知る必要があります。
できれば、医師への診察には必ず付き添い、
「どのような治療法を行うのか」
「どのような症状に注意するのか」
をよく聞いて欲しいです。

残念ながら、現在パーキンソン病を完治させる治療法はありません。
しかし、病気の進行を遅らせたり、症状を軽くする薬はあります。
薬をきちんと飲んで、適切な運動を続けることで、健康な人と何ら変わりない日常生活を送ることができている方も多くおられます。
あきらめないで、落ち込まないで、明るく患者さんを励ましてあげて欲しいです。

 

参考書籍「服薬指導のツボ「虎の巻」」

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